この記事ではマーケティングの環境分析について解説してきます。最後まで読むことで、環境分析において重要なフレームワークとなる、3C分析や、PEST分析、SWOT分析について学べます。環境分析でお困りの方は適切なフレームワークを用いて分析ができるようになるため、必読です!
このブログのライティング者
安藤 弘樹(Koki Ando)
株式会社H&K 代表取締役
株式会社H&K 代表取締役CEO
20代前半から事業を展開し、バイアウト。その後、30年続くイベント会社で最年少でセールス・マーケの責任者。広告代理店で取締役CMOを経験。H&Kを創業。
@KOK1ANDO Youtube
1.マーケティング環境分析とは?
マーケティングにおける環境分析とは、自社を取り巻く社会要因や経済動向などの外部的環境と、自社内の資源や戦略、ブランド力などの内外両面を分析することです。そして、自社にとってのユニークな市場機会を発見、つくり上げていくことが目標となります。
環境分析は、マーケティング戦略を立案するための最初の段階に当たります。
マーケティング環境分析では、自社を取り巻く外部分析を踏まえて、市場の機会と脅威をまとめ、自社の戦略やブランドなどの内部分析をした後、自社の強みと弱みを整理します。
多面的な分析アプローチの結果、KSF (Key Successful Factor)を発見できた場合は、自社にとっての市場機会の発見につながります。
KSFとは「重要成功要因」と訳され、事業を成功させるために必要な要因・事項のことを指します。
ここでは、市場の動向や競合の参入・撤退などの要因や自社の絶対的な強みなどの事業や戦略に生かせそうな事実や切り口のことです。
市場に対して魅力的な切り口を捉えることが出来たら、顧客に対してインパクトある市場戦略を行うためのマーケティング戦略課題を設定します。
ポイントなのが、製品や営業などの自社の課題だけに注力しないことです。
もっと営業で数をこなしていけば、もっと良い製品を作り出すことができれば、と市場を無視したビジネス活動では顧客のニーズにアプローチしていくことができません。
内部分析と同時に、外部の環境に対して対応していかなければ時代の潮流に乗り遅れてしまいます。
1-1 3C分析とは
そんな内部分析と外部分析をする方法が3C分析です。
・Customer: 顧客
・Competitor: 競合他社
・Company: 自社
以上三つの頭文字をとって3C分析と呼ばれます。
それぞれで取り扱う要素は、以下のようなものが挙げられます。
顧客: Customer
・規模
・セグメント
・ニーズ
・構造変化
競合: Competitor
・寡占度
・参入難易度
・強み・弱み
・製品の特徴
・マーケティング戦略
自社: Company
・シェア
・ブランドイメージ
・技術力
・品質
・販売力
・収益力
・資源
顧客分析で顧客のニーズや想定する顧客総数を分析したのちに、競合他社の特徴などについて調べます。
その後、競合他社との比較の中で見つかる自社の強みや弱みを整理し、そこで見つかるKSFをもとにマーケティング戦略を打ち出していきます。
2.外部分析の手法
外部分析は主に「企業の制御範囲外にある外部の環境」について分析することで、以下の三つの要素によって構成されています。
・マクロ環境分析
・顧客分析
・競合分析
では、それぞれの中身について見ていきましょう。
2-1 マクロ環境分析
マクロ環境は企業にとってコントロール不可能でありながら、組織にとって機会や脅威をもたらす外部環境のことです。
マクロ環境の具体的な要素としては
・人口動態 (年代や性別、世帯構成)
・経済 (経済成長率、個人消費など)
・個別業界動向 (売上高や業界構造)
・生態学的環境 (自然環境、郊外)
・技術 (新技術など)
などが挙げられます。
そして、マクロ環境分析の代表例としてPEST分析というフレームワークがあります。
2-1-1 PEST分析
・P: Politics 政治・法律
・E: Economics 経済
・S: Society 社会
・T: Technology 技術
それぞれの頭文字をとってPEST分析といわれ、包括的にマクロ環境を網羅しているのでおすすめのフレームワークです。
これらの4つの視点から外部環境を分析し、自社にとってどのような影響を与えるのかを整理して、評価します。
このようにそれぞれの要因が複雑に絡み合って相互的に影響を及ぼしているので、マクロ環境を読み解くのは非常に難しくなっています。
それでも変化を予測して外部環境に対応しようとする企業は顧客のニーズに応えられる機会は、保守的で過去の仕組みに安住しようとする企業より必然的に多くなります。
時代の潮流に乗れるかどうかが顧客に対して魅力的な提案ができる鍵となってきます。
2-2 顧客分析(3C分析)
マーケティングの基本は「顧客のニーズ、満足を満たす」ことだと説明してきました。顧客分析ではマーケティングの出発点である顧客について以下の要素に分けて分析します。
・購買人口: 想定される潜在顧客数や顧客の分布地域
・顧客ニーズ: 顧客のニーズやウォンツ、不満や欠如感情
・購買意思決定プロセス: 購買決定要因や情報源、必要期間や比較、購買場所
・購買意思決定者: 購買の意思決定者は誰か? 誰の意見を聞くか?
・購買行動に影響を与える要因: 価格、普及度、シェア率、ブランド
2-3 競合分析(3C分析)
これまでのマクロ環境と顧客の分析は、主に市場の需要の観点から分析していくものでありましたが、競合分析では供給の観点、ライバル企業がどのように市場で顧客にアプローチしているのか比較検討するものです。
分析する内容は、
・競合他社の戦略(差別化戦略など)
・パフォーマンス(売上高、シェア、利益、顧客数など)
・経営資源(営業担当者数、生産能力など)
以上の三つに大別され、自社との比較の中で競合他社の分析を行います。
マーケティング戦略を一から考えて構築していくのは非常に大変です。H&Kでは、マーケティング戦略コンサルティングを行っております。もちろん、外部分析も行います。事例を資料にまとめているので、興味がある方は、下のボタンから資料ダウンロードをお願いします。
3.内部分析の手法
内部分析では3C分析のCompanyである自社分析が該当します。
また、自社分析で良く用いられるフレームワークが、SWOT分析です。
3-1 自社分析(3C分析)
一般的に制御不可能な外部環境とは異なり、内部分析では自社でコントロール可能な経営変数についての分析を行います。
具体的には、以下の項目において分析を行います。
・経営戦略
・企業文化
・製品特性
・市場シェア
・マーケティング戦略の長所・短所
・人的資源
・トップのリーダーシップ
・資金力
絶対的な指標はなく、あくまでも内的に考えられるであろう自社の長所と短所を分析します。
競合他社と比較したうえでの自社の強みや弱みを考えることで、市場機会の発見につながります。
3-2 SWOT分析
SWOT分析は、外部分析と内部分析を包括的に網羅した手法です。
・S: Strength 強み
・W: Weakness: 弱み
・O: Opportunity: 機会
・T: Threat: 脅威
のマトリックスに分けて図示することで位置関係を明瞭に把握することが可能になります。
外部環境や内部環境を強み 、弱み 、機会 、脅威 の4つのカテゴリーで要因分析し、事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法の一つです。
4.マーケティング環境分析2つの注意点
マーケティングの環境分析を行う際の注意点について説明します。
注意点は以下の2つです。
・本質的な事象や変化について深く洞察する必要がある
・環境分析を絶え間なく続けることで変化に対応できる
注意点1 深く洞察する
そもそも環境分析を行う際のポイントとしては、ありのままの事実を列挙するだけではなく、本質的な事象や変化について深く洞察する必要があります。
例えば、バブル経済の崩壊後、価格破壊が起こり、しばらくの間は低価格品や正規品の値引きが消費者の支持を集めました。
しかし、大量に資産を保有しておりバブル崩壊の煽りを大きく受けた資産家と異なり、一般の消費者の購買力は依然と変わってはいませんでした。
長い景気低迷期ではありますが、その経済環境に慣れるにつれて「安かろう悪かろう」の製品から離れ、「良質なものを手ごろな価格で」求める消費者マインドに推移していきました。
こうした消費者心理の変化を見極めずに、低価格戦略で前例を踏襲し続けた小売業は顧客のニーズや時代の潮流に合わせることができずに、過当競争と採算離れにより廃業を余儀なくされました。
注意点2 環境分析を絶え間なく続ける
成功を収めた後にこそ、成功に胡坐をかくのではなく、環境分析を絶え間なく続けることで変化に対応できるように常日頃から準備を怠らないようにするのが重要です。
例えば、旅行業界のリーダーであるJTBは、パック旅行を主力商品として成長してきました。
JTBにとっての大きな環境変化は、1990年代におけるインターネットの普及と、グローバルな規制緩和の流れでした。
これにより顧客が自分たちで格安航空券を購入し、宿泊施設を予約するようになりました。
また旅行も単なる観光目的だけでなく、旅行目的の多様化に伴い、パック旅行では多様な顧客のニーズに対応ができないと判明し、従来のビジネスモデルが成り立たなくなってしまったのである。
そこでJTBは2006年に15の地域会社に分社市、地域ニーズに合わせた事業運営へと転換していきました。
5.環境分析の具体例
環境分析の具体例をマクロ環境分析と、競合分析、自社分析に分けて紹介します。
5-1 マクロ環境分析の具体例
保育ビジネス
・人口動態: 低年齢児人口、出生率動向、世帯構成、共働き世帯率など
・経済: 女性の就業率、家計動向、保育所数など
・政治: 保育所の許認可、雇用関連法規、国や自治体からの補助金など
・文化: 女性の社会進出の程度、育児休暇に対する認識、シングルマザーの容認など
・業界: 全国の保育サービスの実態(参入数、収支、地域的ばらつきなど)、業界が構造的に抱えている問題など
5-2 顧客分析の具体例
保育ビジネス
保育ビジネスでは、サービス受益者と勾配意思決定者が異なります。
保育ビジネスサービスを受けるメインターゲットは子供自身ではありますが、あくまでも保育ビジネスに対価を支払う顧客はその親であるので、子供に対するマーケティングより親世代に対するマーケティングが中心となってくると考えられます。
その親でも、父親や母親、祖父母やシングルマザーなど意思決定者は多様にわたり、それぞれの顧客のニーズに合わせたマーケティングが肝心となってきます。
5-3 競合分析の具体例
ビール市場
キリンビールは他の大手三社、輸入ビールや地ビール会社との競合関係にあるが、RTD (Ready to Drink)や RTS (Ready to Serve)市場では、チューハイメーカーやワインメーカーとも競合しています。
国内市場は大手の寡占状態かつ、成熟市場になりつつあるので、国内メーカーは海外市場での展開に移行しつつあります。
競合他社の一例として、アサヒビールは、海外事業買収を加速させ、オーストラリア事業の買収により世界的なネットワークの形成に成功しました。
ブランド面では、日本初の辛口生ビール「アサヒスーパードライ」などの根強い人気があるブランドを確立しています。
その一方で、主に事業用ビール出荷率が売上の大半を占め、現状のコロナ禍で酒類の提供ができなくなってしまったので大打撃を受けています。
アサヒビールにとっての外部分析では新型コロナウイルスの流行が脅威だと考えられます。
業務用ビールをレストランや居酒屋に売ることが出来なくなってしまい、売上が急減。
そこでアサヒビールは業務用ビールではなく、家庭用生ビールサービスを提供する新事業を創出しました。
宅飲み需要に答える形で、居酒屋で飲める泡ビールを家庭で楽しめるようにという施策です。
この新事業は脅威から機会への発想の転換であり、宅飲み市場での競合となりえます。
5-4 自社分析の具体例
ビール市場
アサヒビールと比較してキリンホールディングスを分析すると、キリンビールはビールを主軸にしながらも、チューハイやカクテル分野を取り入れることで他事業での総合的な売上強化を図っています。
ブランド面でも「キリン 一番搾り」や「本麒麟」などの主力ブランドの展開に成功し、医薬事業やノンアルコール事業も展開しており、多角化を図ることで安定的な収益・経営を目指しています。
また必ずしも自社の弱みを克服しないといけないわけではなく、外部委託によるアウトソーシングで弱みを補うことも考えられます。
このような場合は、内部分析の際に委託先である「準構成者」のネットワークも自社の経営資源に含めて考えるほうが、総合としてより正しく企業の実態をとらえることができます。
まとめ
マーケティングの環境分析は、自社を取り巻く外部環境と、自社の内部環境に分けて分析を行います。外部環境分析では、PEST分析と3Cの顧客と、競合を分析します。そして、内部分析では、3Cの自社をSWOT分析を用いながら分析します。
環境分析は、マーケティング戦略における最初の段階ですが、絶え間なく変化する外部環境に対応するためには常に、環境分析を行うことが重要です。環境分析をする際に是非参考にしてみてください!
マーケティング戦略立案のSTEP2
H&Kでは、マーケティング戦略コンサルティングを行っています。
難しい環境分析も行ってコンサルティングを行います。
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