この記事では、企業におけるマーケティングの役割について説明します。企業戦略において、マーケティング戦略はどのような立ち位置なのでしょうか。最後まで読むことで、企業戦略や、他部門との関係、組織戦略とマーケティングの関係について学ぶことができます。マーケティング部門の配置に悩んでいる方は、適切に配置し、効果を最大化できるようになるので、必読です!
1.企業戦略におけるマーケティングの機能とは?
企業において、マーケティング部門はどのような立ち位置なのでしょうか。
まずは企業活動を大局的に捉えるために、企業戦略に着目してみましょう。企業戦略は「全社戦略」「事業戦略」「機能戦略」の三つの要素から構成されます。
機能戦略は各事業部門の機能別の戦略を表しており、マーケティング戦略はその機能戦略の一部となっています。
市場環境の中で、IT化やグローバリゼーションなどをはじめとする市場の構造的変化に対応しながら、多様化する顧客のニーズに答え、企業の方向性を明確にするのがマーケティングです。自社の商品・サービスを市場や顧客に届けるために企業内外の環境を分析することが必須であり、「3C分析」「PEST分析」「SWOT分析」などに代表される「環境分析」が第一ステップとして非常に重要です。こちらについては詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
2.企業におけるマーケティング戦略の位置付け
次に、企業全体の戦略におけるマーケティング戦略の位置付けについて見てみましょう。マーケティングは全社戦略や事業戦略、機能戦略、ブランド戦略とマッチした形で策定・実行する必要があります。これは、企業としての安定した経営戦略や整合性ある企業像を作ることで、マーケティング戦略がより効果的になると考えられます。
例えば、食品メーカーが新商品の研究過程で、酵母由来の魅力的なサプリメントを偶然開発できたとします。
これを本格的にサプリメント、新商品として市場に展開するべきでしょうか?
もしこの食品メーカーが、事業ドメインとしてパンやうどんなどの主力商品のみ注力すべきだと考えるのであれば、この新商品の自社での販売は諦めて、他社に酵母と新発見、それにまつわる権利を販売するべきでしょう。
またほかの要因としては、この食品メーカーがサプリメント業界での販売チャネルを形成していなかったり、顧客目線からのブランドイメージの分裂を嫌うことも考えられます。
またその一方で、この新発見を良い機会だと捉えることができれば、食×新しい酵母の発想で「酵母を生かした食と健康」と題して、ヘルスケア×食の新しい融合的な枠組みの中で、新事業を育てる判断も考えられます。
いずれにせよ、マーケティング戦略だけでは考えることができない要素については、全社戦略やブランド戦略などを鑑みて、その整合性や可能性を評価しつつ、施策に移る必要があります。
ビジョン、ミッション、バリューに代表される会社の経営理念は、全社戦略や事業戦略を方向づける上位概念として位置づけられ、経営戦略の下にマーケティング戦略が存在しています。
経営戦略とマーケティング戦略をシナジーさせるには?
製造段階での視点では、自社の取り扱う商品について「誰が何をいくらで販売し、それを消費者にどのように認知させ、どのように供給するか」を全体的な視点で考えていきます。
取り扱う商品数が多くなるにつれ、個々の商品では最適なマーケティング手法であっても、大局的(たいきょくてき)なマーケティング戦略では、連携が取れていなかったり、組織間での無駄が多かったりなどして非効率的なものに陥ってしまう可能性があります。
これはM&Aなどで多角化した企業に当てはまりやすい現象であり、一見シナジーがありそうな商品同士の展開であっても、展開する業界に重複が大きすぎて思った以上の効果が発揮できなかった場合や、顧客目線から会社のブランドが不透明になってしまったなどから、ブランドイメージの低下が発生したりします。
そこで、上位概念での事業戦略や全社戦略においてマーケティングの方向性を位置付けることで、定まった軸の下で商品間、部門間でシナジーを働かせながら、マーケティング活動を行うことができます。
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3.マーケティング機能と他部門との関係
企業が商品やサービスを顧客に提供するためには、マーケティングだけでは不可能です。
商品開発や営業、財務、人事や役員陣とのシナジーを発揮して初めて効果的なマーケティング活動は可能になります。
また顧客目線で会社の組織構造を考えると、「顧客のニーズに焦点を当てる」経営が本質的なビジネスであるはずなので、顧客こそが企業にとって一番重要な要素であるとも言えます。
そうした顧客のニーズや期待を明確化し、その問題解決のために各組織運営を統合していくのがマーケティング機能です。
例えばR&D部門、つまり研究開発部門では製品開発に携わりますが、彼らの知識は技術やモノづくりに関するものが大半であり、顧客のニーズの分析や想定する顧客像については何も知らされていません。
もし彼らが顧客のニーズについて知らないまま、会社目線で自分の作りたいものを作った場合は、顧客目線では何も価値を提供してくれていないので魅力的に映らなくなってしまい、対価としてお金を払ってくれません。
市場の動きを無視した研究開発や製造では、いくら良いものが作れたとしても、そこに価値を見出している顧客がいないので、売れる見込みがなく在庫の山を築き上げ、赤字となってしまいます。
「顧客に求められる製品を作り、買ってもらう」には、顧客ニーズを把握しているマーケティング部門との連携が重要です。
効率的な組織運営と目標達成のためには、マーケティング部門は独立した機能として働くのではなく、個々の業務に密接に関わり合いながら、常に顧客目線でのマーケティング戦略を共有し、部門への更なる貢献を図っていく必要があります。
例えば、営業・販売部門とマーケティング関わり合いでは、マーケティング結果から算出された顧客のニーズや問題を営業や販売部門と共有することで、営業担当はより顧客目線で問題解決の提案を行ったり、効果的なプレゼンテーションを行うことができます。
またカスタマーサポートとのシナジーでは、顧客からカスタマーサポートに届いたご要望や苦情をマーケティング部門に伝えることで、情報のブラッシュアップを行うことができ、より洗練されたマーケティング戦略に改良することができます。
4.組織の人事戦略とマーケティング戦略の関係について
マーケティングは、組織構造や人事制度は直接的にマーケティング分野との関わり合いは少ないが、実行に際して大きく影響する要素です。
先ほど述べた、ビジョンやミッション、バリューに対して、より効果的にコミットできる環境や人員を配置するのが人事部の仕事であり、労働環境やタスクに合致した人間を採用・配置できるかどうかが企業全体の効率性を左右します。
特にマーケティング戦略と人事戦略が合致していないと、現場で混乱が起こる恐れがあります。
例えば、人事部目線では個人や部門での営業成績や売上高を昇進などの人事評価にしている一方で、マーケティング戦略では営業利益を達成目標にしていた場合、目標や評価項目の不一致が起こり、効率的かつ公平な人事評価を行うことができません。
正当な評価に基づかないフィードバックを現場の人間が受けた際、自分の苦労や成果が認められていないと考え、モチベーションの低下や組織内での混乱が発生する場合があります。
マーケティング戦略が効果的に実行されるためには、全体的な視点で組織構造や職務設計、人事システム、人員配置などのシステム面とマーケティング戦略の軸の整合性を確認する必要があります。
マーケティング戦略の軸を変えるのが良い場合もある一方で、社内のルールや仕組みに対して変更を働きかける場合があるので、時代の潮流とマーケティング戦略の重要性などを鑑みて判断する必要があります。
まとめ
この記事では、マーケティング機能について説明しました。マーケティング戦略によって企業における立ち位置を把握し、各部門と連携を取ることで、個々の業務に密接に関わり合う。そして、常に顧客目線でのマーケティング戦略を全体に共有し、部門への更なる貢献を図っていく必要があります。また、一つの企業内の全体的な戦略においてマーケティング戦略と人事戦略が関係し合っていることも重要なポイントなので、各戦略が分断されずに統合されているかも意識していきましょう。