成長に「完成」というものはありません。高みを目指し続ける企業は、急成長したあとも成功し続けます。
本稿では成長の好循環を実現させるために、そこに現れる成長の壁とその防止策について解説していきます。どのような場合に成長の壁が現れるのかを本稿から学び、成長し続けられる企業を実現しましょう。
このブログのライティング者

安藤 弘樹(Koki Ando)
株式会社H&K 代表取締役
株式会社H&K 代表取締役CEO
20代前半から事業を展開し、バイアウト。その後、30年続くイベント会社で最年少でセールス・マーケの責任者。広告代理店で取締役CMOを経験。H&Kを創業。
@KOK1ANDO Youtube
1. 企業の成長の妨げ「成長の壁」の原因とは
成長の壁はなんの前触れもなく予期せず現れることが多く、大企業でもスタートアップ企業でも発生する可能性があります。
これ以降、成長の壁の原因を2つ紹介します。
1-1. 原因① 市場の変化に対応し損ねる
長期的成長の大きな妨げとなるのは、市場の変化に対応し損ねることです。
これには、
・プロダクトやチャネルの劣化に気が付かない
・新たな競合企業を見過ごす
・プロダクトやマーケティング戦略の更新を怠る
・新技術の導入に出遅れる
などの様々な原因が考えられます。
事例1:Skype
Skypeは以前は間違いなく成功企業でしたが、今ではメッセンジャーやその他チャットアプリに急速にシェアを奪われ、ビジネス用途ではSlackの独占状態となっています。
Skypeはモバイルメッセージングの実力を見誤り、スマートフォンやタブレットがビジネスコミュニケーションを席巻しつつある状況(市場の変化)に気が付けなかったのです。
事例2:リーバイス
リーバイスは1995年に70億ドルという史上最高の収益を記録しました。しかし翌年から販売が急減し、2000年には35%減となる46億ドルにまで落ち込みました。
業績がこれほど反落するのは、市場に大きなイノベーションがあったり、市場自体が低迷していたりするからだろうと考えるかもしれません。
しかし、破壊的なイノベーションや新たな競合からの攻勢がなくても、顧客満足度の変化から不満の兆候をいち早く察知する習慣づけをしなかったせいで、壁にぶつかる事例も多いのです。市場(顧客)の変化に対応し損ねた訳です。
1-2. 原因② 自信過剰になる
また、成長の壁は、市場で支配的な地位を確立しているという自信過剰から生じることも多いと言います。競合他社の動きに気づいてはいても、それを脅威ともとらえないのです。
危機感の欠如からイノベーションへの積極性に欠け、成長の新たなチャンスを追求せずに、既存のプロダクトの細かい改良ばかりやるようになります。
そうなってしまったチームはどんなに競合を警戒していたとしても、急成長企業からの不意打ちを受けることは避けられないでしょう。逆に新製品への投入や新規事業への参入に力を入れすぎて、中核となるプロダクトやサービスが手薄になっても成長の壁は生じるかもしれません。
2. マーケティング領域における成長の壁
先ほどまでの話は製品開発に限らず、マーケティングの領域でも同様に成長にブレーキがかかるかもしれません。
ありがちなのは、特定のチャネルに偏りすぎて効果が薄れていくことです。新規顧客がどんどん集まっているチャネルも、いずれは新たな競合の登場や顧客行動の変化、チャネルのルール変更などがあれば、顧客の流入が急速に減りかねません。
これは、製品ライフサイクルやイノベーター理論を考えれば理解できると思います。
チャネルのルール変更については例えば、フェイスブックのアルゴリズムを利用して大量のトラフィック(サイトへのアクセス数)を獲得しているとします。その状態でアルゴリズムが少し変わると、それだけで訪問者数が激減することもあり得るのです
フェイスブック側がコンテンツ表示のルールを変更するたびに息が詰まる思いをすることになるでしょう。
事例:動画アプリの「ヴィディー」
息が詰まるどころか、息の根が止まってしまった事例があります。ヴィディーは一時期3億7000万ドルもの時価総額を誇っていました。
しかし、サービスの宣伝・提供をフェイスブックに依存しきっていたために、アルゴリズムが不利に変更されて表示回数が減ると、5000万人だった月間ユーザー数は50万人を割り込むまでに急落してしまいました。ヴィディーは結局壁を越えることができず、最後にはサービスを終了せざるを得ませんでした。
このようなチャネルの激変をもたらすのはフェイスブックだけではありません。
例えばグーグルも検索順位のアルゴリズムを常に更新していて、Web検索を主な顧客獲得チャネルとする企業をしばしば窮地に立たせています。多くのチャネルは定期的にルールを変更して、市場へリーチする手段として依存している企業の成長に深刻な影響を与えています。
3. 成長の壁の発生を防ぐ
これまで紹介したような顧客離脱や市場シェアの低下は、概ね自助努力で防ぐことができます。具体的には、市場の変化に敏感であること、自信過剰を辞めることです。
ただし、競合のイノベーションや市場環境の変化による劇的な破壊は予測できないのも事実です。
加えて、イノベーションのペースが上がり、ビッグデータのクラウドストレージや機械学習アルゴリズムといった最新のツールを新参プレイヤーでも使えるようになった現在では、既存の大手企業も機動性を高めるように努める必要があります。
4. 最後に
成長の好循環を妨げる要因や事例を中心に解説してきました。
能力が足りない(他社に劣る)から成長の壁を迎えるのはまだしも、自信過剰や市場の変化に気づかないことが理由で成長の壁を迎えるのは勿体ないことです。成長のチャンスを既に所有しているからです。
皆さんは本稿で紹介した事例のようにはなっていないでしょうか。是非見直してみてください。