DX化が推進され、上手いこと事が進むとDXチームはグロースチームへと変化し、そのチームは継続的な企業の成長のエンジンとなります。
そんなグロースチームに所属する方に向けて、グロースチームの役割に加え、待ち構えている落とし穴を上手くよけ、はまったとしてもすぐに抜け出せる方法について解説していきます。
このブログのライティング者

安藤 弘樹(Koki Ando)
株式会社H&K 代表取締役
株式会社H&K 代表取締役CEO
20代前半から事業を展開し、バイアウト。その後、30年続くイベント会社で最年少でセールス・マーケの責任者。広告代理店で取締役CMOを経験。H&Kを創業。
@KOK1ANDO Youtube
1. グロースチームの役割とは
グロースチームは継続的にイノベーションを起こし、顧客データとアンケートを分析して高速で実験して結果を出さなくてはなりません。
今は目覚ましい業績を上げているチームでも優先事項がぶつかり合って、経営資源が不足して組織が守りに入るとすぐに足を取られてしまいます。急成長したスタートアップ企業では特に要注意のリスクです。急増する顧客に少ない人出でサービスを提供していると、事業を円滑に回すだけで手いっぱいになってしまいます。
グロースチームの事例:グロースハッカーズ・ドットコム
グロースハッカーズ・ドットコムの事例を紹介します。
グロースハック関連の最新情報を発信して、世界中から人々が集まるコミュニティを立ち上げてから1年たった2014年末のことです。それまでの10ヶ月間に大きく伸びていたサイト訪問者が突然、頭打ちになったのです。3ヶ月経ってもトラフィックは横ばいのままで、原因がわかりませんでした。
皆が頭を抱える中、壁につきあたってからの実験数を数えてみようと思いつきました。その結果はショックを受ける数でした。3ヶ月の間に10件も実験していなかったのです。成長できて当たり前だという過信によって、ルーティンの管理業務や多忙の中で有益な実験が後回しにされていました。
それを受けてチームは実験を週に最低でも3件行い、グロース施策をいつもの管理業務より優先しました。時間と経営資源は、重要な取り組みに最優先で割り当てることにしたのです。
アイディア出しを奨励すると、実験案のストックはみるみる増えていき、1週間のサイクルを回すうちに一回りずつ成長していきました。
その成果は素晴らしく成長の壁を乗り越えて急速な右肩上がりになりました
(出典:Hacking Growth グロースハック完全読本 / 日経BP)
この時の成長への努力は3ヶ月で1年分を上回るほどでした。その四半期はトラフィック(サイトへのアクセス数)が76%増加して、ほぼ倍増となりましたが、有料トラフィックや有料広告の費用は横ばいでした。
これは、サイクルを高速で回して、成功例を見つけて集中投資した結果です。
2. 成長機会を徹底的に活用する
成長のレバーを使い倒したと思っても、新たな成長要因を探す前に、すでに効果を上げているチャネルや戦術の新たな活用方法を探すべきでしょう。
成功に再投資しなければ手つかずの成長余地を残すことになるのです。
成功しているレバーを最大限活用する戦略を「海戦ゲーム」になぞらうことができます。お互いの戦艦の位置がわからないこのゲームは、魚雷が命中したマス目の周辺を続けざまに攻撃するのが定石です。グロースチームもこれにならって命中した方策を徹底的に活用すると良いでしょう。
事例:グロースハッカーズ・ドットコム
例えばグロースハッカーズ・ドットコムでは、その週の人気記事をまとめた「ニューズレター」を開始したことが初期の読者数を大きく伸ばすきっかけとなりました。
分析すると効果は明らかで、週に1度、大勢のユーザーが記事を読みにサイトを訪問するようになったのです。そこでニューズレターを成長エンジンとしてさらに強化させる方法を集中的に実験しました。登録フォームをランディングページの最下部から最上部に移動させることで登録者数を700%も伸ばしたのです。読者が大幅に増え、週を追うごとに利益も伸びていきました。
さらにメールマーケティングの機会を最大まで活かすために、もっとできることがないかと新たな活用方法を考えました。
①ユーザーアカウントの作成過程でニューズレターの配信希望を選べるようにしたところ、購買者は22%増加しました。
②ニューズレターの人気ぶりを示すことで登録者が増えるのではないかという仮説の元、「ツイッター、フェイスブック、グーグル、ウーバーなどで働く6万人以上のグロースハッカーも私たちの人気記事を毎週読んでいます。」という一文を登録フォームに添えたところ、新規登録はさらに44%増加しました。
効果的な方策が見つかったら、そこに集中投資して最大限活用するとよいでしょう。すぐに全く異なる別の選択肢に移ってはいけません。そこに再投資して成長を積み上げていくのです。
3. 最後に
この記事で私が特に伝えたいのは、何もこだわらずに目に見える成長を追うのでは無く、成功している成長機会を十分に活かしたうえで成長の幅を広げるのが良いということです。
グロースチームはこの観点を持ったうえで、分析や実験のサイクルを回していきましょう。