「経営戦略とは何か?」
「具体的になにをすればいいのか?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
経営戦略とは、経営を進める中で必ず必要になる、資源配分や行動計画を策定することです。経営戦略が定まらないまま経営を進めると、意思決定の優先順位が曖昧になってしまい、企業が成長していくことができません。
そこで本記事では、「経営戦略とはなにか?」について解説します。この記事を読むと「経営戦略」が企業の存続・成長のために、どのようにして役立つのかがわかるようになります。さらに、経営戦略の分類や、経営戦略策定に役立つフレームワーク、実際の企業を元にした事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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1. 経営戦略とは?
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経営戦略とは、企業が長期的に目指す方向性や目標を設定し、そのために必要な資源配分や行動計画を策定することです。外部環境の変化に対応したり内部状況を改善したりするために、企業がどのように競争優位性を確立し、成長するかを考えることを目的としています。経営戦略を立てる際には、競合他社や市場ニーズ、自社の強みや弱みなどを分析することが必要です。
経営戦略に似た言葉に次のような3つがあります。
- ・経営戦術
- ・経営計画
- ・戦略経営
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それぞれと経営戦略の違いを説明します。
1-1. 経営戦略と経営戦術の違い
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経営戦術は、経営戦略を実現するための具体的な行動計画です。経営戦略は、将来の目標や方向性を定めるのに対して、経営戦術は、その目標や方向性を達成するための手段を具体的に考えることです。
1-2. 経営戦略と経営計画の違い
経営計画は、経営全体の具体的な計画のことを指します。1つの事業に対して使う場合には事業計画とも呼ばれています。
経営戦略は中長期的な目標や計画を示すのに対して、経営計画は、その目標や方向性を達成するための比較的短期間で実行される具体的な計画です。
1-3. 経営戦略と戦略経営の違い
戦略経営とは、企業の経営活動全体において戦略的な視点を持ち、長期的な目標を設定して経営を行うことです。別名、戦略的経営とも呼ばれます。一方、経営戦略は企業の成長のために策定する戦略のことを指します。
2. 経営戦略の目的と必要性
経営戦略の主な目的は、人・物・金という限られた資産を、組織改革や事業の方向性を決める際に、どのように分配していくのかを決める時に役に立ちます。
企業の成長のためには、やるべきこと・やらなければならないことに優先順位をつけて実行していくことが必要です。その意思決定の指針として、企業特有の強み・弱み・特性の理解から得られた経営戦略を固めることが目的です。
また、今日はグローバル化やAIの筆頭により、経営環境の変化のスピードがますます増しています。10年・20年と企業を存続させるために、このような状況の変化に迅速に適応する必要がある今日だからこそ、経営戦略の必要性が高まってきていると言えます。
3.経営戦略の3つの種類
経営戦略は次の3つの種類に分類でき、以下のような3階層のピラミッドで表されることがあります。
・企業戦略(全社戦略) : 長期的な戦略
・事業戦略 : 事業単位での戦略
・機能戦略 : 部署・機能ごとの戦略
企業全体の方針や、事業の参入・撤退、新規調達などを決める「企業戦略」、事業単位の企画・製造・販売などの方向性を指す「事業戦略」、企画・製造・販売などの特定機能に関する個別戦略である「機能戦略」と、それぞれ必要になるタイミングが違います。
次に、それぞれの戦略の特徴を解説していきます。
3-1. 企業戦略
企業戦略は、会社全体の長期的なビジョンと目標を定義する戦略です。主に下記3つを定義しています。
・MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
・経営理念
・人・物・金の配分方針
また、企業戦略を策定するためには、次の3つの視点での分析が必要になります。
・競合他社との違い
・企業独自の強み・弱み
・市場や顧客のニーズ
このような分析を行うことで、特定事業への追加投資、採算の取れない事業の撤退など、効率的な経営が可能になります。
3-2. 事業戦略
事業戦略とは、事業を展開する上での具体的な戦略です。具体的には、次のようなものがあります。
・事業がどのような商品やサービスを提供するのか
・どのような顧客にターゲットを絞るのか
・どのように市場シェアを拡大するのか
・何年後に売上を〇〇円達成
事業戦略は企業戦略に基づいて定義されており、全社的な方針から事業ごとの戦略に落とし込むことで、より具体的な指針となります。
3-3. 機能戦略
機能戦略は、会社内の特定の機能、例えば、マーケティング、財務、人事、研究開発など、個々の部門が達成すべき目標や、事業戦略に対する貢献を定義する戦略です。事業戦略や経営戦略を進めるために、個々の果たすべき役割や、目標を具体的にします。
機能戦略を用いることで、「売上1,000万円を達成するためには、100万円の売上を作れる営業を10人採用する」など、現場レベルでの計画が立てられることとなります。
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4. 経営戦略策定に役立つフレームワーク
経営戦略を策定する際には、経営環境や競合他社など様々な要因を検討することが必要になります。ここでは、経営戦略策定に役立つフレームワークを下記5つご紹介します。
・SWOT分析
・3C分析
・PEST分析
・ファイブフォース分析
・STP分析
4-1. SWOT分析とは
SWOT分析は、外部分析と内部分析を包括的に網羅した手法です。
- ・S: Strength(強み)
- ・W: Weakness(弱み)
- ・O: Opportunity(機会)
- ・T : Threat(脅威)
4つの頭文字をとってSWOT分析と呼ばれています。
外部環境や内部環境を強み 、弱み 、機会 、脅威 の4つのカテゴリーで要因分析し、事業環境の変化に対応した経営資源の最適化を図る経営戦略のフレームワークです。
4-2. 3C分析とは
内部分析と外部分析を行う方法が3C分析です。
- ・Customer(顧客)
- ・Competitor(競合他社)
- ・Company(自社)
3つの頭文字をとって3C分析と呼ばれています。
顧客分析を行い、ニーズなどを分析したのちに、競合他社と比較した際の自社の強み弱みを整理し、自社のポジションを確立させることができます。
4-3. PEST分析とは
PEST分析は、社会・経済情勢や政策、技術の進歩によって影響を受ける自社や市場環境を分析するために用いられるフレームワークです。
- ・P: Politics(政治・法律)
- ・E: Economics(経済)
- ・S: Society(社会)
- ・T: Technology(技術)
4つの頭文字をとってPEST分析と呼ばれています。
PEST分析によって得られた情報は、市場予測や戦略策定、製品開発などに役立ちます。これらの4つの視点から外部環境を分析し、自社にとってどのような影響を与えるのかを整理して評価します。
下記記事では、今回紹介した3つのフレームワークの詳しい説明や、マーケティングなどにも利用できる便利なフレームワークをご紹介していますので、合わせてご覧ください。
マーケティング環境分析の手法とは?分析に必要な3C分析やPEST分析、SWOT分析について解説!
4-4. ファイブフォース分析とは
ファイブフォース分析とは、経営環境を分析し事業戦略を策定するためのフレームワークです。企業の経営環境を、下記5つの競争要因に分類して分析します。
- ・競合他社の脅威
- ・新規参入者の脅威
- ・代替品の脅威
- ・売り手(供給業者の交渉力)の脅威
- ・買い手(の交渉力)の脅威
「フォース」とは脅威という意味であり、経営環境を取り巻く外部環境を5つの目線で分析することで、競争優位性を見つけることが目的です。
4-5. STP分析とは
STP分析とは、企業の立ち位置を明確化するために用いられるフレームワークです。
- ・S: Segmentation(セグメンテーション)
- ・T: Targeting(ターゲティング)
- ・P: Positioning(ポジショニング)
3つの頭文字をとってSTP分析と呼ばれています。
STP分析は次の手順で行います。
- ・市場や顧客の全体像を把握し細分化します
- ・狙うべき市場を決定します
- ・競合他社との違いを明確化します
また、常に顧客目線の意識を持って行動原理を客観視することで、有意義な事業展開が可能です。
5. 経営戦略を行う4つの方法
5-1. 多角化を行う
多角化は、企業が既存事業とは異なる事業分野に進出することで、リスク分散や競争力強化を図る戦略です。新しい市場や業界への進出によって、収益源を拡大し、事業ポートフォリオの多様化を図ることができます。ただし、新規事業への投資や運営には高いリスクが伴うため、慎重な計画が必要です。
5-2. 差別化を行う
差別化は、競合他社との優位性を明確にすることで、独自性のある商品やサービスによって、高いシェア率を獲得する戦略です。
製品やサービスにおいて、品質、価格、ブランド、デザイン、技術力など、顧客が重視する要素を強化することで、競争優位性を獲得し、市場シェアを拡大することができます。
5-3. グローバル化を行う
グローバル化は、新規事業や競争優位性の獲得を目指す際に、世界規模で新しい市場を開拓する戦略です。
海外市場の成長機会を見出し、現地の顧客ニーズに合わせた商品やサービスを提供することで、グローバル市場において競争力を高めることができます。
ただし、国際的なビジネス環境や文化の違いなど様々なリスクがあるため、十分なリサーチが必要です。
5-4. コストリーダーシップを行う
コストリーダーシップは、企業が生産効率やコスト削減に注力することで、業界最安値の価格で商品やサービスを提供する戦略です。
顧客は低価格に魅力を感じることが多いため、コスト競争力を高めることで、市場シェアを拡大することができます。
ただし、安さを追求するあまり、品質やサービス面での低下が起こらないよう、バランスのとれた経営が必要です。
H&Kでは、マーケティング戦略コンサルティングを行っています。H&Kも2025年にグロース市場上場・2029年にプライム市場上場という目的を達成するための経営戦略を策定し、着実に準備を進めています。
興味がある方は、事例を資料化しておりますので、是非ダウンロードしてみてください。
6. 経営戦略を効率的に行う5つのポイント
6-1. ビジネスモデルを明確にする
ビジョンや目的を明確にし、ビジネスモデルを明確にすることで、企業の方向性を統一し、効率的な意思決定を行うことができます。そのためには、内外部の環境分析や顧客ニーズの把握が重要です。
6-2. 計画の振り返りを行う
定期的に計画の振り返りを行うことで、目標の達成度合いを把握し、課題の洗い出し・修正や改善を行うことができます。また、組織内における目的の共有やモチベーションの向上につながります。
単なる達成度合いの確認だけでなく、市場や競合の状況に応じてPDCAを回すことも効果的です。
6-3. 人材戦略を推進する
優秀な人材を確保し適切な配置や育成を行うことで、組織全体の能力を向上させ、ビジネス戦略を実現するための人材環境を整えることができます。
人材戦略は、ビジネスモデルや戦略に合わせて、必要な人材像を定義し、採用や配置、育成の計画を策定することで実現されます。人材戦略の実施には、目的意識を持った人材の確保や、社員の意欲向上、組織全体のコミュニケーションの向上などが必要です。
6-4. 戦略的なIT投資を行う
ITを活用し、効率化や生産性の向上を図ることも重要です。目的としては、ITシステムによる効率化だけでなく、顧客のデータや市場をリアルタイムで把握することで営業力・販売力・顧客満足度の向上が見込めます。
6-5. イノベーションとマーケティングの理解を深める
イノベーションとマーケティングの理解を深めることも重要です。市場のトレンドやニーズに対応する新しい商品やサービスを開発することができます。また、競合他社との差別化を図るために、自社の特徴や強みを活かしたマーケティング戦略を展開することもできます。イノベーションとマーケティングの理解を深めることは、組織全体の成長や競争力の強化につながる重要なポイントです。
7. 経営戦略の企業事例
最後に、実際に経営戦略を策定し、業績を伸ばしている企業を5社ご紹介します。
7-1. 事例① サイバーエージェント
サイバーエージェントは、多角化の観点で経営戦略を策定しています。
創業からインターネット産業を中心に事業を展開してきました。今後の計画では、既存事業のインターネット広告事業とゲーム事業による利益を、メディア事業に投資することで、新たな売上の柱とすることを計画しています。
(引用:https://www.cyberagent.co.jp/ir/strategy/mediumterm/)
具体的には、サイバーエージェントのインターネットテレビ事業「ABEMA」にて、2022年の11月から行われた「FIFA ワールドカップ カタール 2022」をテレビ朝日と連携して全試合生中継を行いました。
放映権を購入するためには多額の費用が必要でしたが、スマートフォンアプリ「ウマ娘 プリティーダービー」を中心に発生した利益を投資しています。
既存事業の利益を新規事業に投資するという経営戦略に沿った判断が行われていることがわかります。
出典:https://www.cyberagent.co.jp/ir/strategy/mediumterm/
7-2. 事例② 電通グループ
電通グループは経営戦略のPDCAがとても早い企業です。
2021年2月に、2021年度から2024年度を対象とする経営戦略を発表していましたが、1年後の2022年2月に経営戦略をアップデートしています。
1年で経営戦略をアップデートした背景には、下記2つのポイントがあります。
- ・構造改革から「事業変革と持続的成長」へとフェーズの移行
- ・1年間の成果やコロナ禍を含む事業環境を再見直しの実施
さらに、企業戦略だけでなく、事業戦略の見直しも行っており、事業の成長率「4〜5%」という目標を「18%」と大きく上方修正しています。固まった企業戦略があるからこそ、事業戦略が立てられることがわかります。
出典:https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000651.html
7-3. 事例③ 三菱電機
三菱電機が2022年に策定した経営戦略では、下記3つについて言及しており、今後の計画が明確になっています。
- ・サステナビリティ経営
- ・2025年度に向けた中期経営計画の進捗状況
- ・信頼回復に向けた3つの改革
2025年の財務目標の売上5兆円を達成するために、どの事業に重点をおいて投資をするのか、事業ポートフォリオ戦略の強化などの戦略から、従業員の働く環境の充実化についても策定をしています。
三菱電機のような大企業のように、経営陣だけでなく一般社員にも戦略を浸透させることにより、企業全体の統一感を醸し出すことが可能です。
出典:https://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/gaiyo/keiei/pdf/2022/all.pdf
7-4. 事例④ スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーは、差別化戦略を成功させている例です。
コーヒーショップは、元々ビジネスマンの休息や打ち合わせに利用されることがほとんどでした。その中でスターバックスは「一杯のコーヒーから生まれるつながりの力」というテーマを掲げ、高級感のある内装や、期間限定商品などで、女性向けの商品展開を行うことで、ファンを獲得し続けています。
出典:https://www.starbucks.co.jp/socialimpact/
7-5. 事例⑤ ニトリホールディングス
ニトリホールディングスは、中長期計画である「2022年1,000店舗、2032年3,000店舗」の達成に向けた経営戦略を策定しています。
「グローバル化と事業領域の拡大」という目標を掲げ、戦略として「海外高速出店と成長軌道の確立」「グローバルチェーン確立に向けた経営基盤再構築」の2つを実行しています。
さらに、目標達成のための3つの課題を掲げています。
- ・グループ成長軌道の確立と新たな挑戦
- ・お客様の暮らしを豊かにする商品・店・サービスの提供
- ・グローバルチェーンを支える組織と仕組み改革
この3つの課題に対して企業全体で取り組むことで、経営基盤を確立するとともに、より一層の企業価値の向上を狙いとしています。
出典:https://www.nitorihd.co.jp/division/strategy.html
8. まとめ
この記事では、経営戦略の定義や3つの種類、代表的なフレームワークを紹介してきました。経営戦略は、企業の存続・成長のために必ず必要となる考え方です。
経営環境への理解や競合他社との差別化を行うためのフレームワークもご紹介しましたので、ぜひ参考にしてください。