タイトルを読んだマーケティング担当者の皆さんのなかにはドキッとされた方もいらっしゃると思います。惰性でリスティング広告を出したり、twitterを運営している会社さんも多いと思います。しかしそのようなチャネルの分散は、かならずしもサービスの拡大にはつながりません。
本記事ではチャネルとは何か?なぜチャネルを分散してはいけないのか?より戦略的に最適なチャネルを見つけ、チャネルを絞り込む方法を解説していきます。
1.チャネルとは?
1.1 チャネルとは
まずこの章ではチャネルとは何かお話していきます。チャネルとはマーケティングにおいて、チャネルとは「流通戦略」のことです。マーケティングの基本の考え方とされる「4P (Price, Place , Product, Promotion)」の内、「Place」にあたります。チャネルには大きくわけて以下の3種類があります。
・販売チャネル
購買者への製品の販売を行なうチャネルです。小売の他、ECサイトなどが含まれます。
・流通チャネル
購買者に製品の実物やサービスを見せたり届けたりするチャネルです。問屋や運輸機関のほか、取引チャネルとしての流通業者、卸売業者、小売業者が含まれます。
・コミュニケーションチャネル
ターゲット顧客にメッセージを送ったり、購買者からメッセージを受け取るためのチャネルです。新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、手紙、電話、屋外広告、チラシ、インターネットなどがこれに相当します。
1.2 チャネルの機能
- チャネル戦略においてチャネルには、主に次の機能があるとされています
- ・調査
製品に対する意識や意見などの情報収集をする。 - ・プロモーション
チャネルを巻き込んだ、販売促進活動 - ・接触
予想される顧客を掘り起こし、これと接触していく - ・交渉
価格やその他の取引条件における最終合意をとること - ・適合
より細かな顧客のニーズに対応する - ・物流
製品の輸送とその保管 - ・金融
流通に必要とされる資金の確保とその配分
特に適合の要素などは顧客満足度に直結します。例えば、分割払いなどに対応するかどうかは、会社の大きな戦略の一つです。したがって自分のビジネスモデルに合わせて、顧客の受取価値を最大化するように最適なチャネルを設計する必要があります。
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1.3 チャネル戦略を建てるメリット
チャネル戦略を建てる最大のメリットは売上を伸ばすことです。チャネルはそのまま商品が顧客に到達する方法になります。これが良好に設計されていなければ、顧客はそもそも商品やサービスを手に入れることができません
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1.4 チャネル・プロダクト・フィットを目指す
これまでの説明からお分かりいただけたように、チャネルとは商品を顧客に到達させる経路のことでした。商品やビジネスモデルに合わせて、適切なチャネル設計をしなければそもそも顧客は商品を見つけることが叶いません。プロダクト(商品)にマッチしたチャネルが形成されていることをチャネル・プロダクトフィットといいます。つまり特定の流通網が安定的/効率的にターゲットユーザーを連れてこられる状態のことで、ユーザーがどこでどのようにプロダクトを見つけ、使い始めるのかという導線がしっかり機能していることを意味します。流通として理想的な状態であり、目指すべきであるといえます。
安定的な商品需要を確保するためにはチャネル・プロダクト・フィットが不可欠です。そしてチャネルに適合しない商品は淘汰されますが、その逆はありえません。
2. チャネル戦略の立案方法
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2.1 チャネルは分散してはいけない?
- 「ほぼ例外なく、チャネルは一つにするのが理想的だ。しかし現実にはほとんどの企業が流通チャネルを一つも機能させられていない。プロダクトよりも流通の貧弱こそが最大の失敗の要因だ。流通チャネルを一つでも機能させられれば素晴らしいビジネスはあなたの手の中だ。チャネルをいくつも試して結局絞り込めなければゲームオーバーだ。」
- そうはいっても多いに越したことはないだろう。そう思われるかもしれません。しかし実際にはほとんどの商品の顧客の80%ほどは一つのチャネルからもたらされます。そのため、ごく少数のチャネルに集中することが最適な戦略と言われています
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2.2 チャネルの絞り込み
チャネルを絞りこむ必要があることを述べました。しかしチャネルと一口にいっても、非常に多くの種類があります。では、どのようにチャネルを絞り込むのでしょうか。実際にチャネルを絞り込むためには、そのチャネルを試してみるしかありません。いろいろなチャネルを試し、最終的に費用対効果の高いチャネルを採用します。しかしチャネルには多くの選択肢があるため、優先度の高いものから試していく必要があります。絞り込みの方法は、後ほど解説していきます。
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2.3 チャネルの最適化
チャネルの絞り込みが終わったら、次にチャネルの最適化を行う必要があります。この段階ではより費用対効果を高めることに注力していきます。例えば、SNSでのキャンペーンの張りかたや、リスティング広告をどこにどのワードで出すかなどです。ここについてはそれぞれの手法があるため、今回の記事では触れません。この最適化にお困りの場合は、ぜひH&Kまでお問い合わせください。
3.チャネルを絞りこむ基準
前章ではチャネルの絞り込みの重要性について書きました。この章では、チャネルをどのようにして絞り込むかを解説します。
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3.1 チャネルを絞り込むための分類
チャネルを絞りこむために、明らかにプロダクトにあわないものを排除する必要があります。特にデジタル分野でのチャネル構築にはテンプレートとなる分類があります。「バイラル/口コミ」「自然流入」「有料広告」という分類です。
「バイラル/口コミ」はSNSなど、人の口コミによって拡散するチャネルです。SEO対策が必要なく、その商品に興味がなかった人の目にも触れます。一方で、トレンドを追う必要があり、また裏返せばエンゲージメントが流入につながる確率が高くはありません。
「自然流入」はサイトの検索などを指します。特徴としては比較的長期の視点での取り組みになることが挙げられます。代表的な手法である検索表示ではSEO対策が必要な一方で、検索アルゴリズムに大きな変更が加わらない限り変動しにくい特徴があります。また、検索するのは潜在的なニーズがある人で、しかもそのニーズに自覚がない人である可能性が高いです。つまり潜在的な需要を掘り起こせるという特徴があります。
「有料広告」はペイドとも呼ばれ、代表的なものとしてリスティング広告などがあげられます。費用が高いのがネックですが、即効性があり、また見た人が購入する可能性が高いというメリットがあげられます。
次の表はこの分類に従ってチャネルをまとめたものです
3.2. チャネルを絞り込むための方法① ビジネスモデルとのフィット
- いよいよ実際にチャネルを絞り込みます。チャネルを絞りこむ第一の方法としてビジネスモデルに特に必要なモノに着目します。例えば、プロダクトを企業向けに販売しているBtoB企業なら、実働部隊となる営業チームと営業サポート体制、見込み客に出会える見本市への出展、会社の専門性を発信するコンテンツマーケティング戦略などが必要となるでしょう。
- 他方でネットショップのビジネスモデルは見込み客を大量に呼び込むことが重要なので、検索広告とSEOが必須のチャネルとなるでしょう。マーケットプレイスビジネスであれば、商品の提供者と利用者を呼び込むチャネルを別々にもうける必要があります。
- コスト面からチャネルとビジネスモデルとのフィットを考える際に重要になるのが客単価です。客単価が高いプロダクトなら、広告などを用いても利益がでる可能性が高いでしょう。逆に、広告収入で成り立つような 客単価 が低いソーシャルメディアやアプリなどは、Email やネットワーク効果、口コミなどのコストの低いチャネルを攻略しない限り、なかなかビジネスとして成り立ちません。
3.3 チャネルを絞り込むための方法② ユーザーの特徴と行動
選択肢を絞り込む二つ目のカギはユーザーの特徴と行動です。検索の種類、買い物をする場所、利用するSNSなどユーザーの行動から逆算していくのです。多くの人が困っている問題を解決するプロダクトやサービスであるのなら、解決法を探すのによく使われているチャネル,例えば検索エンジン等に着目するのが良いでしょう。逆にプロダクトそのものを探している人が多くないのならば別のチャネルで認知を高める必要があります。ドロップボックスはまさに後者でした。発表当初、オンラインでファイルを簡単に共有・保管できるサービスは前例がなく、そのようなサービスをグーグルで検索している人はいませんでした。したがってペイド検索広告は効果が上がらず、既存ユーザーの紹介プログラムが打開策となったのでした。
ターゲット顧客が自社プロダクトの補完的な製品をよく利用している場合には、ブランド提携やクロスプロモーションも有効な選択肢の一つとなります。リンクトインのグロース担当であるアーティフ・アワンが作成した次の表はユーザー行動の種類に応じてチャネルを選択する目安となります。
4.チャネル最適化に成功した例
- この章では、近年勢いのあるサービスを例にとり、初期にどのようなチャネルをもっていたのかを書きます。
AirbnbのCraigslist
民泊のプラットフォームを運営するAirbnb(エアビーアンドビー)は地域掲示板Craigslist(クレイグスリスト)をチャネルとして活用しました。Airbnbは”民泊サービス”という性格上、ユーザーだけでなくホストの開拓も同時に必要でした。Craigslistは地域の情報交換などを目的としたサイトですが、各地域ごとの不動産賃貸情報や短期レンタルなどの情報に関連する掲示板もあることから民泊を求めるユーザーも多数Craigslistを利用していると考えられました。
Airbnbは、宿泊情報を掲載中のホストが利用する管理画面に「Post to Craigslist(クレイグスリストに投稿する)」というボタンを設置、ホスト側の止まってほしいというインセンティブを利用し、無料で自サイトに人を誘導することに成功しました。
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Paypal のeBay
Paypalはクレカ情報を登録しなくともネットショッピングができるというサービスで、現在2017年の決済総額(Paypalサービスを通じて支払われた金額の総額)は4,570億ドル(約50兆円以上)に上ります。Paypalは当時、アメリカのネットショッピングで中心となっていたeBayに、簡単な決済手段を提供することは顧客にとっても事業者にとっても有効だろうと考え、クロスマーケティングを展開しました。
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SpotifyのFacebook
- Spotifyは音楽を聞けるサービスで途中で広告の入る無料会員とサブスライブによる有料会員のいる、代表的なサブスクリプション・ビジネスの一つです。Spotifyは2011年に、Facebookと提携、サード・パーティ・アプリの1つ、公式の音楽アプリとなったのです。これによりFacebook上から簡単にSpotifyのアプリをインストール可能になったことに加え、ユーザーのFacebookのタイムライン上にSpotifyでどんな曲を聞いているかが配信されるようになり、ユーザーのタイムラインを通じて友人・知人へSpotifyのサービスが一気に告知されるようになったのです。
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まとめ
この記事ではチャネルとはなにか、チャネル戦略の建て方、プロダクトにあったチャネルを探す方法、その実例などについて書いてきました。プロダクトにチャネルを最適化する方法や、それがいかに威力をはっきするのか、ご理解いただけたと思います。重要なことは、流通(チャネル)を製品の一環ととらえ、顧客の手や耳に商品が届くようにチャネルを設計することです。マーケティング効果を上げる為にチャネルを有効活用したい、自社だけでは最適なチャネルが見つけられるか不安という場合は外部に相談するのも一つの手です。お困りの際はH&Kへお気軽にお問い合わせください。