今回は組織における営業からの長期的・マクロ的な育成戦略についてお話しします。昔の育成戦略は「営業として入社したら営業部長」と言うように同一部署内で単純に昇進していくような形でした。しかし、営業における育成戦略は、現代の営業スタイルへの変化に合わせてその役割がどんどん変わっていきます。
1. 営業における育成ルートとは
結論からご説明しますと、営業は今後、組織における大学のような教育機関の役割を担っていくことになると考えられます。現在、営業は不人気、マーケティングが人気というような風潮がありますが、営業は本来とても面白い職種です。
しかしながら、営業はなかなか即戦力といえる人材を獲得することはできません。そのため、必然と営業未経験者を採用し、長期的に育成するようになります。そのため、営業内でどのように経験を積んでいくかを考えることは、社員・会社双方にとって長期的に重要になってきます。
さて、現代の営業は、マーケティング・インサイドセールス・営業の3段階に分かれていて、それぞれ、リードの獲得・リードの育成・提案というように、分業化されています。
それぞれが別々で人材を育成していくよりも、この3段階をインサイドセールス→営業→マーケティングと連続して育成していくことが効果的であるといえます。
この育成の流れに沿って、どのようなメリットがあるのかをご説明します。
2. 第一段階:インサイドセールス
まずは第一段階であるインサイドセールスの仕事について考えてみましょう。
インサイドセールスといえばテレアポで、とにかく一日中電話をかけているイメージを持っている人も多いのではないかと思います。とくに電話アレルギーの方はとくにマイナスに感じられるでしょう。
ですが、本来のインサイドセールスの仕事はテレアポをすることではありません。
先ほど少しお話ししたように、現代の営業は、マーケティング・インサイドセールス・営業の3段階に分かれていて、そのなかでもリード(見込み顧客)を獲得してくることがマーケティングの仕事です。テレアポは見込み顧客とのアポイントを獲得してくる行為ですから、リストにコールしているテレアポはどちらかというとマーケティングの仕事というようになります。
インサイドセールスの仕事はマーケティングが獲得してきた見込み顧客に対して、提案に行く前のヒアリングや、前提条件の確認をすることなどが主なものです。ですが電話を使っているので、インサイドセールス=テレアポのように認識されることが多くなってしまいます。
3.インサイドセールスで得られる能力
さて、インサイドセールスで身につく能力は以下のようなものがあります。
・製品の知識
・ヒアリング能力
・PM能力やオブジェクションハンドリング
それぞれについてご説明していきます。
3-1. 製品の知識が身につく
1つ目の製品の知識が身につくということについてご説明します。
さきほど確認したように、インサイドセールスの段階で提案しようとしている製品についてクライアントと内容を詰めていく業務があります。これを要件の整理といいます。その際、自身の製品についての知識が豊富でないとクライアントと内容を詰めていくことはできません。
要件の整理では、本提案に行く前に、
「この製品について今このようなことが決まっているのですが、要件はこれで間違い無いですか?」
ということについて確認したり、納品の際の前提条件を確認する必要があります。このような業務を通して、製品についての知識を身につけていきます。
3-2. ヒアリング能力が身につく
次に2つ目のヒアリング能力が身につくということについてご説明します。
インサイドセールスの業務の中で、クライアントと話をすり合わせ、内容を詰めていく中で、クライアントの要望を把握するために詳細なヒアリングを行う必要があります。
インサイドセールスの主な業務を遂行するうえで必須の能力ですから、業務を行う中で必然的にに身につきます。
3-3. PM能力やオブジェクションハンドリング
最後に3つ目のPM能力やオブジェクションハンドリングが身につくということについてご説明します。そのために、まずはPM能力・オブジェクションハンドリングとは何かについて説明します。
① PM能力とは
PM能力というのは、プロジェクトマネージャー能力の略称となります。つまり、プロジェクトの管理能力・スケージューリング力・チームマネジメント能力です。
② オブジェクションハンドリングとは
オブジェクションハンドリングとは、「自分の意見と反対の意見を持っている相手の真意や質問の意図を確認し、同意した上で話を切り返すこと」です。営業でこのスキルを用いるとすると、共感を示したり、オウム返しを使うというようなことが考えられます。
③ オブジェクションハンドリングの具体例
オブジェクションハンドリングがどのようなものが、具体例を交えてご説明します。
例えばある意見として、「新人は上司の言われることに従っていればいい」という意見があったとします。この意見に対して直接的に反対意見を出すのではなく、オブジェクションハンドリングを使って、反対の意見を提示してみましょう。
受:「スキルを使ってまずは上司の言った通りにやればいいと思うんですよね」
オ:「そうですね、私もそうだと思います。最初はスキルもないので言われたことを100%打ち返していくことが重要となってくると思います。ちなみにそれによって何か弊害が生じることとかってあると思いますか?」
受:「特にないと考えています。」
オ:「なるほど、なら例えばなんですが。高学歴の子とかにありがちなことですが、敷かれたレールに従って言われた通りに勉強してきて社会に出た時に、成功したという実感を持っていないこともよくあると思います。それは、自分で何かを考えてやる力が足りなかった、というようなことが考えられると思うんですね。
全部言われた通りにしていると、自分で何かを考えてやる力や能力がなくなってしまうということもあると思うのですが、そのことについてはどうお考えですか?」
受:「その部分は考えていませんでした。確かにその面もありますね。」
このような形で話をすることがオブジェクションハンドリングの技術です。
具体歴な流れとしては
共感⇨具体的事例を用いて理解を得る⇨自身の考えに導く
というようになります。
この時、学術的なことや経験則を用いるとより有効に働くことがあります。
このスキルはとても重要です。
さっきの会話の時に、
「そんなんじゃマシンの人間しか育たないじゃないですか。だめですよ」
と言っただけでは自分の意見に導くことはできません。
4. 第二段階:営業
そして、ここまでご説明してきた
・製品の知識
・ヒアリング能力
・PM能力やオブジェクションハンドリング
これらの能力が身についた段階で、営業に異動します。
なぜマーケティングではなく、営業に異動するのかといいますと、
マーケティングはそもそも売る仕組みを作ることがメインの業務で、営業はできている仕組みを実践していくことがメインの業務になります。そのため、インサイドセールスで能力を身につけたのち、現在の仕組みがどのように機能しているかを営業の業務の中で知ったうえで、その仕組みを作る段階へ進むことが有効だからです。
5. 第三段階:マーケティング
そして最終的にマーケティングに異動します。
インサイドセールス⇨営業⇨マーケティングという順に進んでいくと説明しましたが、営業をやった後にマーケティングに行く理由は、営業をすることで顧客の生の声を聞くことができるからです。
マーケティングに必要な力はペルソナを理解することや、顧客はどういう心情の動きをいつ・なぜするかを調査したり、どのような流れで購入に至るかを把握するというようなことが挙げられます。そのなかで、そもそもプロダクトの課題はなんなのか、市場の課題はなんなのかということを知る必要があります。これらは営業をやっている現場にいると、必然と顧客のニーズを聞くことが多くなり課題を知ることができます。
まとめ
ここまで、現代の営業スタイルの中で、どのように育成していくかについてお話してきました。インサイドセールス⇨営業⇨マーケティングと現代の営業の中で育成されていくことが、各段階で必要な能力や経験を得たうえで次の段階に進んでいくことにつながり、効率的で、より良い育成を行うことが可能です。