この記事では、商談を効果的に進めるために商談を5つのフェーズに分けた中の「最終交渉と意思決定」について説明します。
稟議を上げてもらうために何が必要かは、それぞれの企業で異なると思います。社長や部門長がOKを出せば良いのか、正式に取締役会で承認を得る必要があるのか、というように様々です。
法務やファイナンス、購買部門など関連部門との調節や商談の期間を短縮するうえで、優秀な営業と成果を残せない営業の差が出るのがこのフェーズになります。つまり、このフェーズをこなすことで成果の出せる営業になることが出来ます。
フェーズ分けに関する詳しい内容はこちらの記事をご参照ください!
(営業でリードを商談にまで進め、フェーズ移行する為に必要なこととは?)
このブログのライティング者

安藤 弘樹(Koki Ando)
株式会社H&K 代表取締役
株式会社H&K 代表取締役CEO
20代前半から事業を展開し、バイアウト。その後、30年続くイベント会社で最年少でセールス・マーケの責任者。広告代理店で取締役CMOを経験。H&Kを創業。
@KOK1ANDO Youtube
1.優秀な営業と成果を出せない営業
1-1.良くない営業の例
優秀な営業と成果を出せない営業の差が出るフェーズと、説明しましたが、成果を出せない営業はこの段階でざっくりな報告しかしません。
例えば、
「5月第2週:稟議作成準備
第3週:決裁、承認プロセス
第4週:発注
このようなスケジュールで顧客と合意しています。」
というような報告です。
まず、この報告において合意というときの「合意」が何を意味しているのか。
「その時間軸で進めましょう」という積極的な合意と
「その時間軸で進めるのが現実的ですかね」という消極的な合意では、その後の進み方が全く異なります。
そして、この報告からは合意した相手にどこまでの関係者が含まれているのかが分かりません。どこまでの関係者が含まれているのかは大変重要な情報です。
このようなレベルでの情報を進めていくと、必ず後から予期しなかった承認プロセスが現れたり、遅延が生じてきます。
1-2.成果を出せない営業
成果を出すことが出来ない営業のやり方を顧客の立場に立って見てみると、顧客は自分の仕事で忙しいし、購買部門出ない限り、決裁に必要なプロセスを全て把握しているということはまずないと考えます。
むしろ、提案する営業のほうから「今後このようなプロセスがありますので、確認お願いいたします。それぞれの役割分担をして進めていきましょう。このスケジュールで進めば、〇月にはプロジェクトが稼働します」というように示すことが必要になります。
これは、Mutual Close Planと言われ受注までのプロセスを洗い出し、顧客と営業で共同で進めていこうというものです。
1-3.営業のタスク管理
Mutual Close Planを行う上で、営業の方から示していくということを「いつまでに発注してください」と相手に迫るものであると勘違いしている人が多いです。
「いつまでに契約してくれ」とせかしてくる営業ほど鬱陶しい存在はありません。
「Mutual Close Plan」とは自社と顧客の双方で、契約までに必要なタスクをリスト化した一覧表です。
早い段階で顧客にとって何をし終えなければならないのか、確認しなければならないのか確認するペースメーカーにもなるし、プロセスのどこにリスクがあるのかも見えやすくなります。
この一覧表を作るときにポイントとなってくるのは、タスクを時系列に並べて、それぞれに目標となる日付を入れて進捗確認をすることです。
タスクは「意思決定」というような中傷的なものではなく、「本部長の承認」「購買部門における発注」などというように明確な内容にすることが重要です。
また、各タスクにおいて、どちらが主体となって進めるのか役割分担を明確にしておく必要もあります。
2.「しつこい営業」にならないために
2‐1.営業が作り出す無駄な時間
ここからは、商談を進めていくにあたって商談期間を短くするポイントについて説明します。
まず、商談期間を短くできないダメな例を1つ挙げます。
提案の最終段階、価格の最終提示を求められるタイミングで「ぜひ会ってお伝えしたい」」とミーティング日時を調節し、時間を無駄にする営業が多いです。
会ってその場で合意出来ればいいですが、大抵の場合はそこから再度交渉が入り、持ち帰りとなってしまいます。これだけでも1~2週間が経ってしまいます。
多くの場合、自分が切るカードは最初から決まっているはずです。事前にメールや電話で連絡をすれば、その反応によって対策を打つ時間が取れます。
2‐2.好感を持たれる営業になるには
商談の期間を短くするというのは、お互いにとって何も生み出さない非生産的な時間を最小限にしていくことであり、「早く決めてください」というような押し売りではありません。
そして、このような時間というのは顧客ではなく、営業担当者自らがコントロール出来ます。
日用品の購入とは異なり、それなりの額を投資するとなると、検討材料が全て提示されていても、気持ちを整理する時間や他にいいオプションがあるのではないかと考える時間も必要になります。
ですから、「契約後には、このような手続きが必要です。そのサインい必要なものはこれこれなので、いつまでにそろえておいた方がいいですよ。このオプションがあるのですが、先に予算と合わせて検討しておかれてはどうですか」というように、想定されるタスクを先回りして顧客に伝えてくれる、また、受注のゴールから逆算して、いつまでに何を完了すれば良いかを分かりやすく整理してくれる営業が顧客にとって頼りになる営業です。
あまりにも細かいところまで説明してしまうと、「しつこい営業だ」と思われるのではないかと心配になるかもしれませんが、むしろ「しっかりした営業だ」と評価してくれる顧客が多いです。
本気で商談を進めたいと思っている顧客であれば意思を決めた後の細かい購買プロセスは何も生み出さない時間なので早く進めたいに違いありません。
ですから、このような営業は好感をもってもらえます。
2-3.フェーズ移行判断基準
このフェーズでの移行判断基準は、
・「Mutual Close Plan」を顧客と相互に合意する
・顧客担当者が稟議決裁準備を開始する
の2つです。
これらをもとにフェーズの移行判断基準を定め、共有するのが良いでしょう。
他者の真似ではなく、各社にあった、移行判断基準を設けることが重要です。
まとめ
「Mutual Close Plan」とは、一方的でなく相互に合意すべきものです。
相手にいつまでに受注を迫るのではなく、お互いにテーブルの同じ側に座り、手続きの抜け漏れがない様に協力して、今後のタスクを洗い出すという気持ちで取り組むことが受注に繋がります。
顧客に受注までのプロセスを明確にし、互いに合意して相互で協力しながら進めていくことが重要になります。