この記事では、商談を効果的に進めるために5つにフェーズ分けした中の「フェーズ2「課題の認識」」について説明します。このフェーズでは、購買検討フェーズを表現するときに使われる「4つの不」の1つである、「不要」を突破する段階です。つまり、課題を認識して、この製品やサービスが必要だと認識してもらうフェーズです。また、このフェーズを理解し取り組むことで、営業の課題を明らかにし、結果を出すために求められていることが理解できるようになります。
このブログのライティング者

安藤 弘樹(Koki Ando)
株式会社H&K 代表取締役
株式会社H&K 代表取締役CEO
20代前半から事業を展開し、バイアウト。その後、30年続くイベント会社で最年少でセールス・マーケの責任者。広告代理店で取締役CMOを経験。H&Kを創業。
@KOK1ANDO Youtube
1.営業を進めるために
1-1.営業活動で重要なプロセス
商談を見極める情報で受注確度の基準を定める指標に、予算(Budget)、決裁者(Authority)、必要性(Needs)、導入時期(Timeframe)の頭文字を取った「BANT情報」というものがあります。
しかし、BANT情報はコモディティ型の商材のように、すでに必要性が明確なもの、定期的にリプレースするような製品では用いても、市場にこれからひろげていくもの、ソリューション型の商材では機能しないことが多いです。
機能しない理由として、そもそも予算化されていること自体が少ないし、プロジェクト化する過程で初めて決裁者が明確になるケースも少なくありません。これらに伴って、導入時期も不明確にならざるを得ません。
課題を持っている事は明らかになっても、それを顧客が解決したいと思わなければ、先には進めません。
営業活動のプロセスの中で、どのフェーズが最も重要かと問われれば、この「フェーズ2「課題の認識」」が最も重要と即答出来ます。
1-2.営業の課題
「課題の認識」のフェーズに十分な時間を割かずに、顧客からのデモや製品の説明の依頼、REP(提案依頼書)などに地王して先に進もうとする営業は少なくありません。
この段階を突き詰めなかった場合、顧客に提案をして最終的に経営陣に稟議をあげてもらったところで、「いまはこれは重要課題ではない」「他に優先する事項がある」となり、話が止まってしまうでしょう。最後のクロージングが弱いと言われる営業は、営業プロセス後半の交渉や詰めが甘いと思われがちですが、実際はこの初期段階の進め方に課題があることが多いです。
顧客と会話が盛り上がり、どんどん話が進んでいったのに、突然商談が止まってしまうというのは、相手の話に付き合わされているだけで会社としての課題と提案がマッチしていないという問題があります。
脆い土台の上にものを積み上げていっても最終的には崩れてしまいますよね。営業にも同じことが言えるので、最初のこの段階を疎かにしてはいけません。
2.営業に大事な4項目
営業において、最初の段階を疎かにしないための解決策として、4つの項目を頭に入れておく事が重要です。
・顧客のビジネス課題(ビジネスイシュー)
・問題点(プロブレム)
・解決策(ソリューション)
・効果(ベネフィット)
以上の4点です。
2-1.ビジネスイシュー
例えば、ある企業が3年後の売上高を倍にしたいと考えているとします。
「その目標を達成するためのハードルとなること」が「ビジネスイシュー」です。
営業のキャパシティが足りないと考えている野であれば、営業人員の採用と代理店の拡大。
競合路の激しいシェア争いが有れば、競合に対する勝率アップがビジネス課題になるでしょう。
2-2.プロブレム
次に「プロブレム」は、特に現場の担当者が日々の業務で問題に感じていることです。
・競合に対する自社の強みを整理できる資料がない
・競合がアプローチしている起業を察知する仕組みがない
・代理店との商談共有の仕組みがない
などの問題が「プロブレム」です。
2-3.ソリューション
これを解決する手段が「ソリューション」です。自社の製品・サービスが提供する機能が該当します。
・顧客と代理店の情報を一元管理するデータベース
・顧客がウェブサービスを訪れたときに検知して、営業に通知する仕組み
などが該当します。
2-4.ベネフィット
最後に「ベネフィット」です。これは、投資対効果(ROI)で、定量・定性の両方を含みます。
投資対効果都は、投資に対してどれだけ利益をあげたのかを示す指標のことです。投資と利益の還元をみることができます。
3.なぜ「課題の認識」に力を入れるべきなのか
3-1.課題の提案のミスマッチ
ここからは、なぜ「課題の認識」のフェーズに力を入れるべきなのかについて詳しく説明します。
商談相手の会社の中期営業計画、ホームページにある社長のメッセージなどを読み込んで提案することは多くの営業が実践しています。しかし、商談のプレゼンテーション冒頭にその企業の経営課題に触れながら、そのあとに続く解決策が課題とマッチしていないということが起こりえます。
例えば、「新たな市場の開拓」「顧客内のシェア拡大」という経営上の重点目標があるとします。
最初のスライドでは、「貴社における課題」や「プロジェクトの目的」というタイトルで綺麗にまとまっているものの、肝心の提案の部分では、「KPIを可視化する」「情報共有をリアルタイムに行う」「システムを統合して二重入力などの負荷を軽減する」と言った話に突然なってしまうのです。
このような事になってしまう原因は、「ビジネスイシュー・プロブレム・ソリューション・ベネフィット」の4項目が整理出来ていないことです。
3-2.営業で結果を出すために
解決策と課題のミスマッチを防ぐためにも、顧客に対してヒアリングをするときに、
・ビジネスイシュー
・プロブレム
・ソリューション
・ベネフィット
の4項目を確認し、自分の発するワードがどの箱の中に入るかを常に意識しながら会話すると、段々と理解していくことが出来るでしょう。また、それをメモしておくと良いでしょう。メモの内容をもとに提案を組み立てると、理論的で訴求力のある提案になります。
結果を出せていなかった営業はビジネスイシューの枠が埋まっておらず、プロブレムやソリューションばかりになっていると気づくと思います。
3-3.営業スキル以外の問題点
営業のスキルだけではなく商談相手が現場の担当者に止まっている事が原因になっていることもあります。
現場の担当者は自身がこまっていることに意識が行きがちで、多くの場合経営レベルで考えられている課題とは一致しません。
商談の後半に行われる最終提案や交渉のフェーズには注力している営業が多いですが、実際には前半の方がはるかに重要度が高いので、そこを誤解してはいけません。商談において、前半の方が重要度が高い理由としては、意思決定者である経営層は検討段階では登場しないことが多いからです。
ビジネス課題を認識して目標を決定し、検討チームを作る段階までは経営層の8割が参画していると考えられますが、具体的な検討フェーズには3割程度しか参画せず、最終決定になって再度関与してくるというパターンが多いです。
担当者が「ビジネスイシュー」ではなく、「プロブレム」にばかり意識がいっていると、それに合わせた機能説明をして安心し、最終フェーズの決定段階で経営層から却下されてしまいます。
3-4.営業で大事なこと
商談の最終フェーズの決定段階で経営創から却下されるようなことが起こらないために、最終交渉ではなく、もっと早い段階で経営層に会うことが重要です。
実際に営業が行っているアプローチと、本来のアプローチの注力の注ぎ方には大きな違いがあり、全くの反対になってしまいます。
オンラインで情報収集する比率どんどん高まっている現代では、いかに初期段階にいる潜在顧客を見つけるかが重要なので、このあぷろーりと4つの枠組みを習得しておきましょう。
4.フェーズの移行判断基準
最後に、フェーズの移行判断基準について説明します。
・要件詳細確認やデモ、プロトタイプによる検証開始
・他社製品との比較検討開始
この2つが基準になってきます。
しっかりとこのフェーズで重要なことを理解し、行っていくことで今後の商談の成功率も変わってくるので、しっかりと頭に入れておきましょう。
まとめ
後半に力を入れがちな商談ですが、ビジネスイシュー、プロブレム、ソリューション、ベネフィットの4項目を重視しながら、後半よりもはるかに重要な前半部分に力を入れて進めることが大切です。
課題の提案のミスマッチや、現場で課題が滞ることのないようにするためにも、営業部門全体で前半から力を入れて取り組みましょう。