はじめに
ペルソナ分析とは、ターゲットの様々な情報を収集・分析し、商品やサービスを利用する具体的なユーザー像を抽出するマーケティング手法です。現代の消費者嗜好の多様化において、万人向けよりも特定の顧客層に焦点を当てることが重要視されています。ペルソナ分析によって具体的で明確的な顧客を想定することで、マーケティング戦略の効果がより高くなるからです。
近年の「パーソナライズ」の文脈においても、ペルソナ分析は一層重要であり、企業への信頼や商品への満足度向上に貢献します。本記事ではペルソナ分析のメリット、分析手順、注意すべきポイントについて解説していきます。
株式会社H&Kは、ペルソナ分析を含むマーケティングのコンサルティングをはじめ、国内で1社しかないHubSpotのDiamondパートナーとして、MAツールの導入支援/ 採用強化 / バックオフィスの自動化 / Webサイト制作 / システム開発などを行っています。お気軽にお問い合わせください。
1.ペルソナ分析手法の基礎知識
本章では、ペルソナの意味と歴史、混合しやすいペルソナとターゲットの違い、ペルソナ分析とマーケティング戦略について述べていきます。
1-1.「ペルソナ」とは?ペルソナ分析の簡単な歴史
ペルソナとは、1900年代前半にスイスの精神科医で精神分析医のカール・ユングが提唱した概念です。個人が世間に見せる「仮面」「役割」のことであり、具体的には、性別、世代、 社会的地位、職業、家柄、出身地、学歴などを指します。
マーケティングの文脈において、どのタイミングでペルソナ分析が始まったのかを簡単に紹介します。イギリスの産業革命とともに「どうやったら効率的に利益を最大化できるか」いう意味でマーケティングという概念が生まれ、米国の経営学者であるフィリップ・コトラー氏は現代までのマーケティングの歴史を4段階に分けています。
製品を安く売り、利益を最大化するマーケティング1.0の時代(1900~1960年代)、類似商品が出回り市場の価格競争が激化し、買い手中心のマーケティングに変化したマーケティング2.0の時代(1970~1980年代)、利益の追求だけでなくいわゆるCSR(社会的責任)も求められるマーケティング3.0の時代(1990~2000年代)、SNSなどで消費者自身が自ら情報を発信していき、自己実現といった精神的価値をも満たすことが求められるマーケティング4.0の時代(2010年〜)の4つです。
この変遷の中でペルソナ分析は、買い手中心のマーケットに変化したマーケティング2.0の時代に、心理学の分野から「ペルソナ」という概念が導入されて徐々に広まっていきました。
1-2.ペルソナとターゲットの違いは?
マーケティングにおいて「ペルソナ」と「ターゲット」は混合されやすい概念です。ターゲットは「30代・女性・主婦」「40代・男性・会社員」のように幅広く顧客層を区分したものを指すのに対して、ペルソナは職業からライフスタイル、趣味嗜好や価値観まで、特定の人物像を詳細に深掘りして設定していくという特徴があります。ターゲットは「層」、ペルソナは具体的「人」を指すと理解しておけば問題ないでしょう。
1-3.ペルソナ分析とマーケティング戦略
先ほど述べたように、市場競争が激しくなり、顧客視点で消費やサービスを生産する必要が出てきたマーケティング2.0の時代よりペルソナ分析はマーケティングにおいて重要な役割を果たしてきました。顧客のニーズや購買層をしっかりと把握し、根拠のある情報に基づいて商品やサービスを開発・プロモーションすることで、より効果的なマーケティング戦略を展開できます。
またペルソナ分析を行うことは顧客側だけではなく、チームでの開発において方向性や認識を統一して仕事を進められること、プロジェクトの進行がスムーズになる点でも効果を発揮し、ひいては会社としての取るべき戦略も明確化されることになります。
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2.ペルソナ分析のメリット
続いてペルソナ分析のメリットについて大きく3つに分けて詳しく見ていきます。
2-1.メッセージの伝達度が高まる
まず一つ目は、顧客視点・ユーザーファーストで考えることによって商品やサービスによるメッセージの伝達度が高まるという点です。ペルソナ分析によって、リアルな顧客の視線や嗜好と提供側の意図やメッセージとの相互関係を密接に構築することができ、本当に必要とされている商品やサービスを提供することにつながります。
たった一人の特定の人物像とはいえ、しっかりと時代を加味し、その時代を生きる人間を想定出来たなら、その一人の欲求を十二分に満たすことができ、それが結果的には他の多くの顧客のニーズを満足させることにつながります。
多様性の時代とはいえ、狙いやメッセージを研ぎ澄ませることで、それがデザインやキャッチコピーの洗練に繋がり、よりインパクトのあるマーケティング効果につながります。
2-2.共通認識と明確な戦略を持ってプロジェクトを進められる
二つ目は、企業側の視点に立った時のメリットとして、共通認識と明確な戦略を持ってプロジェクトを進められるという点です。商品やサービスの開発からプロモーションまでにおいて、様々な部署にわたって多くの人が関わる場合、プロジェクトメンバー内で商品やサービスの向かうべき方向性が定まっていることは非常に重要です。
ペルソナへの認識を統一することによって、共通の判断軸を持った上で多数のメンバーの意見を取り入れながらプロジェクトを進めることができ、一貫性のあるマーケティングが実現し、結果として自社商品のブランディングも強化されます。
社内の認識のズレは結果的に商品のメッセージ性のブレやプロジェクト進行における抵抗力に繋がるため、しっかりとペルソナを設定するようにしましょう。
2-3.顧客愛着度(ロイヤリティ)に繋がる
三つ目のメリットは、顧客愛着度(ロイヤリティ)の向上で、一つ目の顧客ニーズの満足と二つ目のブランディングの強化による効果を半ば一種合成した形のメリットです。自社の商品やサービスに対して顧客の欲求、もしくは潜在的なニーズを満足させることで、そのサービスを背景で提供している企業に対して顧客はよい印象・愛着を覚えることができます。
ペルソナを正確に捉えることはまだ顕在していないニッチなマーケットを開拓する可能性もあり、一人一人の顧客と企業間の信頼関係が強固に構築されることで、マーケティングを拡大していくための力強い地盤を得ることにも繋がるでしょう。
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3.ペルソナ分析に潜むリスク
本章では、ペルソナ分析に潜むリスクや起こりうるネガティブな可能性について見ていきます。
3-1.初期コスト(データ収集・調査)に手間がかかる
一つ目のリスクとしては、初期コストに手間がかかることです。詳細なペルソナを設定するためのアンケートやSNSといった情報収集や調査に時間がかかります。推測や理想によるペルソナは実際のユーザ像と乖離してしまうので、客観的なデータを用いて分析を行うことで明確なペルソナを設計することが必要です。そのためにも膨大な量の情報を収集しなければならない点で時間や労力がかかってしまうのです。
3-2.間違ったペルソナ像を設定してしまう可能性がある
二つ目のリスクとしては、間違ったペルソナ像を設定してしまう可能性があるという点です。実際にはいないような人物設定をしていたり、自身の都合の良いようなペルソナ像に陥ってしまう場合が該当します。これはペルソナ分析における情報が不足していることや情報が偏っていたりする場合に、ペルソナを多角的に検討できていないために起こります。どのような情報を集め、それらにどう関係性をひいて最終的なペルソナ像へと持っていくのかというプロセスをしっかりと認知するようにしましょう。
3-3.ペルソナにこだわりすぎてアイデアの可能性が萎む
三つ目のリスクはペルソナを意識しすぎてしまうという点です。ペルソナを的確に設定することで効果的にターゲットを絞り込むことができるのは効果的ではありますが、そのペルソナを意識しすぎるがあまり、商品やサービスに対する発想やアイデアが陳腐で変哲のないものになってしまう可能性もあります。まだ見たことのないもの、そのような商品やサービスや市場が隠れて潜在しているという未知なる可能性を忘れずに、あくまでもペルソナという想定は方向性であると認識し、柔軟にマーケティングを進めていきましょう。
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4.ペルソナ分析の方法手順
それでは、具体的なペルソナ分析の方法手順について説明していきます。
4-1.自社の現状を把握し、強みを分析して炙り出す
まずは、ペルソナに絞り込む前のターゲット層を特定するところから始まります。自社の消費やサービスの特徴や市場における立ち位置をしっかりと認知した上で、想定顧客としてのターゲットユーザーを絞り込みます。
自社にしかない個性や強みというものを分析する時には3C分析が有効です。Company(会社)、Competitor(競合)、Costumer(市場や顧客)の三位一体の視点によって自社の立ち位置や強みを明確にするためのフレームワークです。
分析結果による自社の強み、そして商品やサービスの特性、それらの定性的な情報のみならず、会員データだったり、簡単なアンケートなどによって定量的なアプローチも交えながらターゲット層を定めていくのがより有効的な手段と言えるでしょう。
4-2.ペルソナ設定に向けての情報収集を行う
ターゲット層を絞ったのちに、ペルソナを詳細に絞っていくための情報収集を行います。情報収集の方法としては大まかに対面、非対面という二つの分類が可能です。
対面的なデータ収集方法としてはアンケート、インタビューという方法があり、情報収集にコストや手間はかかるものの情報の精度は高いことが特徴となっています。自社の商品やサービスの利用者であれば、購入動機や気に入っている点、使用頻度、不満など、自社商品を具体的に思い浮かべながら回答してもらえるため情報としての質は高まります。今後利用したい商品や場面などに関しても、生の声を聞き出せる可能性があり、非常に重要な情報源です。また商品を販売する営業担当もしくは店頭の販売員へのヒアリングによって現場での顧客とのやりとりの中に重要な情報が眠っているかもしれません。
アンケートに関しては自社で行うことも可能ですが、市場調査の専門調査会社も多数あるので、それを活用するのも一つの手です。その場合には調査方法や調査地域、調査対象への得意不得意を見極めてターゲット層に適した調査ができるのかきちんと確かめましょう。
非対面的なデータ収集方法としては、統計データやアクセス解析といったインターネットで集める方法です。総務省統計局や大手企業が公開している各種調査が情報の信頼性が高いと言えます。またアクセス解析に関しては、オウンドメディアがあれば自社サイトを訪問するユーザーの行動特性を知ることができますし、Googleアナリティクスによる分析によって自社サイト内のユーザーの行動を詳細に分析できるためぜひ利用しましょう。
4-3.集めた情報を分析し、ペルソナを分類、詳細設定を行う
次に、ターゲットに関して収集した情報をペルソナの詳細設定に落とし込んでいきます。設定項目例は以下になります。
【ペルソナの主な設定項目】
■基本的情報
・氏名、性別、誕生日、年齢、血液型
・居住地、家族構成、学歴
■社会的情報
・勤務先の業界・業種
・企業規模
・役職、年収
・職種、職歴
■ライフスタイル
・性格、悩みごと、人間関係、価値観
・1日の生活パターン、休日の過ごし方、趣味
・よく見るサイト・SNS
・食生活
以上は例ですが、商品やサービスに応じて随時必要な項目は設定していきましょう。さらにはペルソナの要素を設定するだけでなく、そのようなキャラクターを持った主人公としてペルソナを仮定し、その商品やサービスにどのように出会って購入に至り、さらに商品やサービスをどのように利用していくのかというイメージを物語として描けるくらい解像度を高く持っておくとよりペルソナ設定の効果が高まります。
これはカスタマージャーニーとも言われ、ペルソナと商品・サービスとの関係においてペルソナの感情・思考・行動を時系列で見える化したもので、企業と顧客の接点に対してどう働きかけるか、どうタッチポイントを設計し最適化するかというものを考えるためのフレームワークとなります。
「物語」というのは小説、映画、一本のCMまであらゆるところに存在する非常に効率的で波及伝搬的な情報伝達パッケージであり、マーケティングにおいても非常に重要な考え方です。
個人、その多様性という意識が強まっている現代では、一人一人の人生という物語という文脈に対してどう商品やサービスが働きかけて共に紡がれていくかまでを考えていかなければ人々に受け入れてもらえるものにはなりづらいでしょう。
5.ペルソナ分析において注意すべきチェックポイント
最後にペルソナ分析において注意すべきポイントについて述べます。
5-1.根拠のあるリアルな人物像かどうか
思い込みや先入観が強く反映された人物像になってしまっている、設定した人物像をリアルにイメージできないというのも注意したいポイントです。「こういう人って確かにいるよね」と共感・共有できない人物像は妥当性に欠けますし、勝手なイメージや理想に近づけたような人物像では十分なリアリティを持てないため、しっかりと収集した情報を定性的にも定量的にも最大限に活用して客観的な理由に基づいた人物像を設定することが重要です。
5-2.イメージ認識が共有できる人物設定かどうか
二つ目としては、担当者、関係者全員にイメージしやすいような人物設定ができているかを確認しましょう。
いくら詳細なペルソナを設定しても、マーケティングにかかわる関係者が共通のイメージをもてなければ、ペルソナ分析が十分に成功したとはいえません。ペルソナ設定の目的は、さも共通の知人が実在するように、ターゲットの具体的人物像を正確に共有することです。
5-3.一度設定したペルソナ情報を再編集しているか
一度設定したペルソナを再考しているか、これも重要な観点です。
世の中の状況、つまりは消費活動の土台となる社会環境は常に不予測に流動的に変化していることを念頭に置き、これからはユーザーの消費活動も大いに変化していくことが予想されます。
そのため、「ペルソナ」という一種の仮説は常に状況とともに磨いていかなければなりません。顧客やユーザー、社会の動向にくまなく目を配り、柔軟にペルソナ人物像を更新し、再編集し続けましょう。
まとめ.
いかがでしたか。マーケティングにおける「ペルソナ」という概念の導入という簡単な歴史の紹介に始まり、ペルソナ分析のメリット、手順、注意点などについて具体的にイメージできたかと思います。
ペルソナ分析自体の歴史はある程度長いため、ペルソナ分析という手法は古いのでは?と疑問に持たれる方もいらっしゃるかと思います。とはいえ、商品やサービスはそれを利用される方がいて初めて成立することを考えると、しっかりと顧客を見立てるペルソナ分析という手法は時代が変われど普遍的な方法であるということができると思います。
皆さんもぜひペルソナ分析をしっかりと方法として身につけて効果的なマーケティング戦略を打ち立てていきましょう。
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