今回は、「二股モデル」「集中と選択」について説明していきます。
採用や組織づくり、企業のブランドなど数年先を見据えて、どのような道筋を通るかを描いておくことで成長スピードが格段に変わるはずです。会社の特徴と見比べて、片方に特化するのか、それとも二股をして進めていくかは、要検討する必要があります。
これを踏まえて自社の戦略を検討しましょう!
ネット社会の普及により、企業の新規事業への着手ハードルが下がる中、自社と企業規模の違う会社と取引や協業をする機会が増えてきているという方もいるのではないでしょうか。
それと同時に、SMBとエンタープライズがお互いへとアプローチする手法を模索している方もいるのではないでしょうか?
そこで本記事では以下についてまとめてみました。
・SMBとエンタープライズの戦略的な5つの違い
・両者に均等に投資する考え方「二股モデル」とは?
・事業規模に応じた戦略的なアプローチのコツ
特定のターゲット層との取引を成功させるためにどうすればよいのか悩んでいる方は、ぜひ最後までお読みください。
なお、戦略コンサルティング会社「H&K」は、SMBからエンタープライズまで幅広い事業戦略支援をしているので、お気軽にご相談ください。
SMBとエンタープライズの概要
多くの企業はその企業規模によりSMB(中小企業)とエンタープライズ(大企業)に分類されます。
まずは、両者の概要と近年よく聞かれるようになった理由について簡単に説明します。
SMBとは
SMB(Small to Medium Business)とは、中小企業を意味するビジネス用語です。明確な定義はありませんが、SMBは従業員が数名から数百名程度の会社を指すことが一般的です。
日本においてはSMBは国内企業の99.7%を占めていることから、SMBへのアプローチがtoB事業において重要なウエイトを占めると言えるでしょう。
エンタープライズとは
SMBと対照的に使われるエンタープライズというのは、大企業を指すビジネス用語です。
意思決定フローが複数部門にまたがり課題も複雑なエンタープライズでは、じっくりと時間をかけてアプローチしていく必要があります。また、自社の収益の安定化や爆発的な利益向上を狙える点が特徴的です。
SMBとエンタープライズは、セットで使われたり比較されたりすることが多い言葉です。しっかりと覚えておきましょう。
近年これらの言葉がよく聞かれる理由
SMBとエンタープライズは、アメリカなどの英語圏で中小企業と大企業を指す言葉として使われています。
ネット社会の普及により、企業が他者と多角的に交わる機会が格段に増えると同時に、外資系企業や海外のプロジェクトへグローバルに参入する企業も多くなっています。そういった背景の中で、日本語である「中小企業」・「大企業」という言葉の代わりに、よりグローバルな用語であるSMBやエンタープライズという言葉が発達したと考えられます。
ビジネスの規模やニーズが異なる中小企業と大企業では、それぞれに合わせたアプローチが必要になるため、この2つの大区分は事業戦略や他者取引における重要な要素として注目されているのです。
SMBとエンタープライズの戦略的な違いを5つの視点から比較
SMBとエンタープライズの間で、戦略的にどういった違いがあるのかを比較していきます。
もし、「他社への取引やアプローチでうまくいっていない」などの悩みをお持ちの方は、戦略的な違いの部分に原因があるのかもしれません。
SMB |
エンタープライズ |
|
市場選定や商談発掘 |
市場を絞らず多くの顧客の獲得を狙う |
特定の市場で顧客との深い信頼関係を維持しようとする |
訴求方法 |
課題解決できるプロダクト |
自社の考えに対する共感 |
提供サービス |
低コストでのサポート |
高コストでのサポート |
セールス手法 |
予算の有無を考慮し、クロージング、標準化させる |
共感してもらうことで、予算相応の価値を作り出す |
求める人材 |
規律・オペレーション |
独創性・高い専門性 |
①:市場選定や商談発掘のやり方の違い
SMBを対象とした営業戦略では、市場を絞り込まずに広く網を張って、より多くの顧客を獲得することを目指します。もちろん、自社商材の特性をふまえて業界や業種をある程度絞り込むことはありますが、幅広いリードを対象にアプローチしていくことが一般的です。
一方、エンタープライズでは、市場を深く理解し、ニーズに合わせたカスタマイズされたソリューションを提供することが重要です。顧客との信頼関係を築きながら、長期的なパートナーシップを構築することを目指します。
②:事業における訴求方法
SMB市場は、課題に対して解決できるプロダクトの訴求という特徴があります。そのため、価格競争が激しく、コスト効率の良さが求められます。
エンタープライズ市場は、課題に対して自社の考えの共感を訴求するという特徴があります。そのため、顧客とのパートナーシップを築くためには、高度な専門知識やカスタマイズされたソリューションの提供が不可欠です。
③:提供するサービスの違い
SMB市場は企業数が多いために顧客数も多いです。リモート活用による効率化、オンライントレーニング、コミュニティなど無料のリソースの提供という1件あたりへの低コストでのサポートという特徴があります。
エンタープライズ市場は接触頻度を高めて、関係深化、オンサイト個別トレーニング、個別サポートという高コストでのサポートという特徴があります。
④:セールス手法の違い
SMB市場のセールス手法は案件数、予算の有無を確認、クロージング、標準化という特徴があります。このプロセスにおいて、効率的なマーケティング戦略の展開や、製品やサービスの簡潔な説明が求められるでしょう。
エンタープライズ市場は金額や価値、無い予算を顧客に価値訴求をして共同で作り出すという特徴があります。したがって、他企業とのコラボレーション、顧客に合わせて個別のカスタマイズといった観点も重要になります。
⑤:求める人材の違い
SMB市場は規律・オペレーションに重きを置かれる傾向があり、エンタープライズ市場は独創性・コンサルテーション能力に重きを置かれる傾向があります。
エンタープライズ市場とSMB市場では、オペレーションから人材のスキルに至るまで大きく異なります。つまり、エンタープライズで活躍していた人材だからといってSMB市場で活躍できる保証はない、ということになります。
SMBとエンタープライズの両者への営業戦略「二股モデル」とは?
「二股」と聞くと一見してネガティブなイメージを持つ方も多いかもしれませんが、ビジネスにおける二股モデルはもう少しポジティブなニュアンスになります。
二股モデルとは、異なる市場セグメントに対して均等に投資(取引)をしていく営業戦略を指します。
今回の内容に即して、ここでは大区分であるSMBとエンタープライズの違いを対象としましょう。
SMBとエンタープライズの両方に注力する二股モデルの営業戦略は、企業成長において重要な意味をもちます。二股モデルを成功させることで、確実に顧客や市場シェアを増やし、利益を継続的に向上させることにつながるからです。
二股モデルが重要な3つの理由
それでは、二股モデルが重要である3つの理由について述べていきます。
・市場シェアを拡大し、リードを増やすため
・固定化されたブランドイメージから脱却するため
・企業利益を最大化するため
①:市場シェアを拡大し、リードを増やすため
二股モデルの営業戦略には、市場シェアを拡大できるという大きなメリットがあります。
SMB、もしくはエンタープライズのどちらかに市場に絞ってしまうと、他の市場に参入する際の障壁が高くなります。各セグメントでは有効な戦略が異なり、ノウハウがなければ成約を獲得することは難しいためです。また、既存企業に市場シェアを独占されてしまえば、後発企業が入り込む隙はなくなるでしょう。
いざというときにそれぞれの市場を行き来するのは、決して簡単なことではありません。早い段階で二股モデルを取り入れていれば、スムーズな市場シェアの拡大を狙えます。
②:固定化されたブランドイメージから脱却するため
ブランドイメージの固定化を防げるのも、二股モデルのメリットです。
エンタープライズに絞ってビジネス展開すると、「あの製品は大企業向けだから」と、ブランドイメージが固定化されてしまいます。そのような場合、いくら中小企業向けのプランを用意していたとしても、顧客に敬遠されて機会損失につながってしまう可能性があるのです。
SMBとエンタープライズの両方の顧客を抱えていれば、どちらの市場でも新規顧客を獲得しやすくなります。
③:企業利益を最大化するため
二股モデルは、企業利益の最大化に貢献してくれます。
比較的低単価の顧客をより多く獲得するSMB戦略では、認知・顧客数の拡大と、それによるリスク分散が狙えます。一方でエンタープライズ戦略は、顧客単価が高いため利益向上につなげやすいうえに、解約率が低いことで収益が安定する点がメリットです。
各営業戦略には、異なったメリットとデメリットがあります。二股モデルで両方に取り組めば、リスクを抑えつつ利益の最大化を目指せるようになるのです。
SMBとエンタープライズの両者に対する戦略のコツ
ここからは、SMBとエンタープライズの二股モデルを成功に導く方法をご紹介いたします。
以下のようなポイントを意識する必要があります。
業務プロセスを仕組み化する
二股モデルを戦略に取り入れる際は、案件数が多くなることが予想されます。それに伴い、進捗管理や受注プロセスが複雑化することは防げません。
各営業担当者が情報を個別管理することも可能ですが、案件数が増えればミスが生じる可能性が高まりますし、業務の属人化にもつながります。それを防ぐためにも、業務プロセスの仕組化が欠かせないのです。
二股モデルを成功に導くためにも、営業サポートツールや顧客管理ツールを積極的に活用しましょう。ツールを使えば情報を一元管理できるようになり、リソースを抑えながら効率よくアプローチする仕組みを構築できます。
・成功する業務プロセス改善とは?概要から実際の施策まで徹底解説!
→https://www.handk-inc.co.jp/blog/business-process-improvement
商材の特性を理解する
商材の特性を理解したうえで営業戦略を立てることも、非常に重要です。
例えば、利益率が高く、1社につき1つしか売れない商材は、短期間で成約を狙えるSMBに適しています。商材にもよりますが、じっくりと時間をかけてエンタープライズにアプローチしても、売れる商品が1つであれば営業生産性は低いといえるためです。
反対に、アカウント数・ユーザー数などに応じて売上がアップする商材の場合は、エンタープライズを狙って営業したほうが多くの利益を得られる可能性があります。
このように、商材によって向いている企業規模は異なります。二股モデルでどちらにも取り組みつつ、より注力すべきなのはどちらかなのかを見極められると、さらなる企業成長を目指せるでしょう。
・商品企画はマーケティングの仕事なのか?商品開発プロセスを徹底解説!
→https://www.handk-inc.co.jp/blog/productmarketing
顧客理解を深める
顧客理解を深めると、二股モデルで得られる利益を最大化できます。
SMBとエンタープライズにおける営業戦略の違いは先述したとおりですが、これはあくまで「このような傾向がある」という一般論でしかありません。すべての企業が同じニーズを抱えているわけではないため、定石にとらわれすぎることは避けましょう。
市場の状況や顧客が抱えている課題、商材によって、適した営業手法や提案内容は異なります。顧客理解を深め、アプローチや提案内容を個別にカスタマイズすることが重要です。
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複数のマーケティングチャネルを持つ
二股モデルの成功においては、チャネルを多く持つことが大切です。
先述したとおり、SMBとエンタープライズでは向いている営業手法が異なります。SMBはインバウンド、エンタープライズはアウトバウンドが向いているため、チャネルがどちらかに偏ってしまうと、十分な集客効果が得られません。
コンテンツ運用やイベント開催、テレアポ、企業訪問などといったさまざまなチャネルを横断的に活用して、顧客との接点を増やすことが必要になります。
ただし、一概にマーケティングチャネルを増やせば必ず集客効果が伸びるとは限りません。
企業によって最適なマーケティングチャネルは異なるので、その選定には慎重さも必要になってくるでしょう。
・「とりあえずチャネル増やそう」はダメ?チャネル戦略を徹底解説
→https://www.handk-inc.co.jp/blog/channel-strategy
ABMを実践する
二股モデルを成功させるためには、ABM(Account-Based Marketing)を施策として採用することも重要です。ABMとは、特定の重要顧客やセグメントに焦点を当てたマーケティング戦略のことで、異なる市場に対して異なるマーケティング施策を取る、という考え方です。
ABMは、顧客志向のアプローチを可能にし、限られたリソースを最大限に活用して投資対効果を高めます。また、顧客を細かくセグメント化して適切なマーケティング戦略を展開し、個々の顧客との関係構築を強化することで、市場の変化にも迅速に対応できるようになるでしょう。
・利益を最大化するABMとは?5分でメリットやデメリット・導入の流れを徹底解説!
→https://www.handk-inc.co.jp/blog/abm
まとめ
SMBとエンタープライズの特徴と違い、そして両者に均等に投資していく二股モデルについて解説しました。
いかがだったでしょうか?
リードを獲得するプロセスやABMの実践といった成功のコツについても紹介してきましたが、これらの手法にはノウハウやコツが必要です。
マーケティング・戦略コンサルティングを行っているH&Kでは、SMBやエンタープライズ
の違いに配慮した丁寧な事業戦略のご提案をさせていただいております。
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