今回は、「二股モデル」「集中と選択」について説明していきます。
採用や組織づくり、企業のブランドなど数年先を見据えて、どのような道筋を通るかを描いておくことで成長スピードが格段に変わるはずです。会社の特徴と見比べて、片方に特化するのか、それとも二股をして進めていくかは、要検討する必要があります。
これを踏まえて自社の戦略を検討しましょう!
1.「二股モデル」と「集中と選択」
異なる市場セグメントに均等に投資する戦略を「Bifurcation(二股)」モデルと呼びます。
市場の投資戦略の成功の法則として一般的には「選択と集中」が言われています。限らられたリソースを最も勝てる確率の高い分野に集中させることで市場攻略の確率を最大化する考えです。
例えばIT業界でも、まずは大企業や中堅企業のエンタープライズ市場で実績を残し、次に中小企業のSMB市場を攻略します。または、その逆の順番で市場を押さえていく会社が多いです。経営のセオリーから考えれば、まずは特定の市場に集中すべきだと考える人が多いのでしょう。
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2.二股から「集中と選択」するリスク
「リソースの集中」という観点からは、確かに絞り込む方が正解ですが、1つのセグメントに集中して地固めをしてから、次のセグメントを獲得することにはリスクもあります。
具体的には以下の4つリスクが考えられます。
2-1.参入障壁の変化
1つ目は、競合がいる以上参入障壁が変化する点です。
どのセグメントにも競合がいるため、先手を打たなければ市場シェアをとられてしまいます。1つの市場を固めて次に行こうと思った時には、もう参入できるチャンスがなくなっている可能性があります。自社の成長に市場も競合も待ってはくれません。
2-2.ブランドイメージの固定化
2つ目は、市場でのブランドイメージの固定化です。
中堅、大手企業のエンタープライズ市場で実績を残し、導入事例を公開したとしてSMB市場の中小企業が事例を見たらどう思うでしょうか?「あの製品は大企業向けで自社には向いていない」と思われてしまうことがあります。
逆にSMB市場に特化して事例を公開していると、大企業からすれば「あの製品は中小企業向けで、自社の企業には合わない」と思われてしまうことがあります。
次の市場に向かおうとする場合は、自社サービスのリブランディングも必要になってくるのです。
2-3.社内の考え方の固定化
3つ目は、社内の考え方の固定化です。
最初にエンタープライズ市場で実績を残した場合、その市場を担当しているチームはエースチームとして必然的に組織の中心となり、あとからSMB市場を担当する人たちは新規開拓の亜流チーム扱いになりやすくなってしまいます。既に結果が出ていて収益基盤の上がっている組織からすれば、新たに市場開拓をする組織は成功するかどうかもわからない収益基盤のない組織に見えます。うまくいくかどうかもわからない新市場開拓に自分たちが築き上げた収益基盤を使っていることは中々理解を得難いものです。よって、結果的に社内で亀裂が生じてしまうこともあります。
2-4.採用
4つ目は、採用です。特に即戦力の採用が厳しくなります。
もし、エンタープライズ市場で高いシェアを獲得できた場合、新たな市場開拓の求人は採用希望者からすると安定的とは見られません。そういったチャレンジングな環境を好む方もいるのですが、市場シェアが確保できていない事業にわざわざリスクを冒して転職をするよりも、市場シェアが確保できている事業で自身のスキルで活躍できる見込みがある事業に転職と考えるのが一般的です。
そのため、うまく経験者を採用することができないことが考えられます。即戦力ではなく育成枠の採用を行う場合は、育成のランプタイムに時間を要するので立ち上がりが遅れたり、エンゲージメントの管理に注力する必要があるといった部分が懸念になります。そのため、アウトソーシングを導入して対応することもあります。
以上が1つのセグメントに集中して地固めをしてから、次のセグメントを獲得することにはリスクになります。
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3.SMB市場とエンタープライズ市場の違い
次にSMB市場とエンタープライズ市場の違いについて詳しく説明していきます。
ちなみに、SMB市場とは「中堅・中小企業」の意味で、エンタープライズ市場は、大企業や政府機関などの比較的規模の大きな法人を指します。
SMB市場とエンタープライズ市場の違いとして、
で考えることができます。
3-1.市場攻略のメリット
SMB市場は顧客数が多いことから取引件数が多いため収益のポートフォリオが安定したビジネス基盤になるという特徴があり、エンタープライズ市場は顧客数は少ないですが大きな顧客を狙うという特徴があります。
3-2.市場の選定と商談発掘
SMB市場は業種や業界は問わずに、なるべく広く網を張るという特徴があり、エンタープライズ市場は業種、業界、規模などをあらかじめ決めて網を張るという特徴があります。
3-3.メッセージング
SMB市場は課題に対して解決できるプロダクトの訴求という特徴があり、エンタープライズ市場は課題に対して自社の考えの共感を訴求するという特徴があります。これはソートリーダーシップというアプローチ手法になります。
3-4.セールス
SMB市場は案件数、予算の有無を確認、クロージング、標準化という特徴があり、エンタープライズ市場は金額や価値、無い予算を顧客に価値訴求をして共同で作り出す、他企業とのコラボレーション、顧客に合わせて個別のカスタマイズという特徴があります。
3-5.サービス
SMB市場は顧客数が多いため、リモート活用による効率化、オンライントレーニング、コミュニティなど無料のリソースの提供という1件あたりへの低コストでのサポートという特徴があり、エンタープライズ市場は接触頻度を高めて、関係深化、オンサイト個別トレーニング、個別サポートという高コストでのサポートという特徴があります。
3-6.人材の面
SMB市場は規律・オペレーションに重きを置かれる傾向があり、エンタープライズ市場は独創性・コンサルテーション能力に重きを置かれる傾向があります。エンタープライズ市場とSMB市場では、オペレーションから人材のスキルに至るまで大きく異なります。
ですからエンタープライズで活躍していた人材だからといってSMB市場で活躍できる保証はありませんし、その逆もまたなのです。
4.まとめ
以上、「二股モデル」「集中と選択」について詳しく解説していきました。この記事を少しでも参考にして頂ければ幸いです。
最後に覚えておきたい要点についてまとめます。
・異なる市場セグメントに均等に投資する戦略を「Bifurcation(二股)」モデルと呼ぶ
・一方の市場で活躍していた人材だからといって、もう一方の市場でも活躍できるという保証はない
これを踏まえて自社の戦略を検討しましょう!
こういったマーケティング戦略に関して解決したい問題などございましたらお気軽にお問い合わせください。