はじめに
労務管理は、企業において重要な役割を果たす要素です。従業員の労働時間や賃金の計算、休暇や休業の管理、法的要件の遵守など、多岐にわたる業務が含まれます。労務管理の適切な実施は、労働力の効率的な活用や労働環境の改善に繋がり、組織の成長と成功に欠かせません。
本記事では、労務管理の基礎知識について詳しく解説します。まずは、労務管理の範囲とその重要性についてご説明し、さらに、業務内容と業務効率化の方法についても探っていきます。労務管理の基本的な要素を理解し、組織内での円滑な人事労務業務の運営に役立てていただけることでしょう。
それでは、労務管理の基礎について深堀りしていきましょう。
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1.労務管理とは?
労務管理とは、企業や組織において従業員の労働に関わる様々な要素を管理・運営する業務のことを指します。具体的には、従業員の勤怠管理、賃金計算、休暇や休業の管理、法的要件の遵守などが含まれます。
労務管理は、従業員と企業の間の労働関係を円滑に運営し、組織の効率性や生産性を向上させるために重要な役割を果たします。適切な労務管理は、従業員のモチベーション向上や働きやすい環境の提供につながり、組織全体の成長や成功に欠かせません。
労務管理の具体的な業務内容は企業や業種によって異なりますが、基本的には勤怠管理、給与計算、労働条件の遵守、労働時間管理、労働トラブルの解決などが含まれます。これらの業務を適切に実施するためには、法務知識やコミュニケーション能力、データの扱いに慣れたスキルが必要とされます。
労務管理は労働環境の変化や法的な規制の変更にも敏感に対応する必要があります。労務管理の効率化や業務改善に取り組むことで、組織の生産性向上や従業員満足度の向上につながることが期待されます。
2.労務管理を行う目的
労務管理を行う目的は、主に以下の4つになります。
①労働力の適切な配置と活用
従業員のスキルや能力を最大限に活かし、組織の業務目標達成に向けた労働力の適切な配置を行います。人材の適切な配置により、生産性や効率性の向上を図ります。
②法的要件の遵守
労働基準法や労働契約法などの労働関連の法的要件を遵守することにより、企業が法的リスクを回避します。最低賃金、労働時間の制限、休暇制度など、労働条件に関する法的要件を適切に遵守します。
③労働環境の改善
従業員の働きやすい環境を整え、モチベーションの向上や労働意欲の維持に寄与します。健康・安全な労働環境の提供や、労働条件の見直しによる改善を行います。
④従業員のモチベーション向上
適切な報酬体系や福利厚生制度の整備により、従業員のモチベーション向上を図ります。
公正な評価や報奨制度の運用により、従業員の成果を認め、働きやすい環境を提供します。
労務管理の目的は、組織内の労働力を最適化し、従業員との良好な労働関係を築くことです。適切な労務管理により、組織の生産性向上や従業員の満足度の向上、法的リスクの回避などを実現することが期待されます。
3.労務管理に必要なスキル
労務管理には以下のようなスキルが必要です。
①コミュニケーション能力
・従業員との円滑なコミュニケーションを図るため、明確かつ適切なコミュニケーション能力が求められます。
・説明力や傾聴力を備え、従業員とのコミュニケーションを円滑に行えることが重要です。
②法務知識
・労働法や労働契約法などの法的要件を理解し、労務管理を適切に行うために法務知識が必要です。
・労働条件や労働時間に関する法的要件を正確に把握し、法的リスクを回避することが重要です。
③数字やデータの扱いに慣れていること
・労働時間の集計や給与計算、勤怠データの分析など、労務管理には数値やデータの扱いが欠かせません。
・数字に対する正確性やデータ分析のスキルが求められます。
④プライバシーと機密情報の保護意識
・労務管理では従業員の個人情報や企業の機密情報に接することがあります。そのため、情報の適切な管理や保護意識が求められます。プライバシーポリシーの遵守や情報セキュリティの対策を徹底する必要があります。
労務管理には以上のスキルが必要ですが、これらのスキルは継続的な学習と経験を通じて磨かれていきます。労務管理の業務に求められる視点と合わせて、スキルの向上に努めることで労務管理業務をより効果的に遂行することができます。
4.労務管理の仕事内容・具体的な業務
労務管理の仕事は主に、以下のような業務になります。
①勤怠管理
・従業員の出勤・退勤時間の記録と集計
・休暇や休業の管理(有給休暇、特別休暇、代休など)
・遅刻や早退の管理と対応
②給与計算
・従業員の労働時間や勤務条件に基づいた給与計算
・残業手当や各種手当の計算
・税金や社会保険の控除計算
③労働条件の遵守
・労働基準法や労働契約に基づく法的要件の遵守
・最低賃金の適用や残業時間の制限などの管理
・労働時間や休憩時間の適切な管理
④労働時間管理
・勤務表やタイムカードの管理
・時短勤務やフレックスタイム制度の運用
・労働時間の集計と労働時間外手当の計算
⑤労働トラブルの解決
・労働条件や給与に関するトラブルへの対応
・労働組合との交渉や労使紛争の調整
・労働者の労働環境改善の提案と実施
⑥休暇・休業管理
・有給休暇や特別休暇などの休暇制度の管理
・休業理由の確認と休業手当の支給管理
⑦労働関連の法的対応
・労働契約の作成や解雇手続きの管理
・労働関連の法改正への対応とルールの変更
⑧労働環境の改善
・労働環境の調査や改善策の提案
・労働条件や福利厚生制度の見直し
⑨データ管理とレポート作成
・労働関連のデータの管理と分析
・労務指標や報告書の作成と提出
これらの業務を労務管理部門や人事部門が担当し、従業員との円滑なコミュニケーションや適切な情報管理を行います。労務管理の目的は、従業員の労働条件を適切に管理し、労働環境の改善や労働力の効率的な活用に貢献することです。
4.1 法定三帳簿とは?
法定三帳簿(ほうていさんちょうぼ)とは、労働基準法に基づき、企業が法的に管理・保管しなければならない三つの帳簿のことを指します。これらの帳簿は、労働者の労働時間や賃金に関する情報を記録するために使用されます。
◆出勤簿(しゅっきんぼ)
・出勤簿は、従業員の出勤と退勤の記録を含む帳簿です。
・各従業員の出勤・退勤時間や休憩時間、勤務日数などが記録されます。
・労働時間の計算や勤怠管理の基礎となる重要な帳簿です。
◆就業規則(しゅうぎょうきそく)
・就業規則は、企業の労働条件やルールを明確に定める規則書です。
・労働時間、休暇制度、賃金計算方法、労働条件の変更手続きなどが記載されます。
・従業員と企業との労働契約や労働関係の基盤となる重要な帳簿です。
◆賃金台帳(ちんぎんだいちょう)
・賃金台帳は、従業員の給与・賃金に関する情報を記録する帳簿です。
・個々の従業員ごとに支給される賃金や手当、控除などが詳細に記載されます。
・給与計算や給与明細の作成、労働関連の法的要件への適合に不可欠な帳簿です。
これらの法定三帳簿は、企業が労働基準法の要件を遵守し、労働時間や賃金に関する情報を正確に管理するために必要です。従業員の労働条件や賃金に関するトラブルや紛争を防ぐためにも、法定三帳簿の適切な管理と保管が求められます。
5.労務管理の現状の問題
労務管理の現状には以下のような問題が存在しています。
①手作業による煩雑な業務
・手動での勤怠管理や給与計算など、繁雑な作業が多く、エラーや遅延が発生しやすい。
・帳票の作成やデータの入力に時間と労力がかかるため、労務担当者の負担が大きい。
②規制・法改正への対応の困難さ
・労働法や社会保険制度の変更や追加に迅速に対応する必要があり、情報収集と適用の確認が困難。
・規制順守や法的リスク管理に対する負担が増大している。
③データの非効率な管理と分析
・労務関連のデータが分散しており、データの把握や分析が困難。
・労働時間や休暇の情報を総合的に分析し、労働力の最適配置や労働環境の改善策を検討するのに課題がある。
④コミュニケーションの不足と情報共有の課題
・労務管理の業務が複数の部門や拠点に分散しており、コミュニケーションや情報共有が不十分。
・従業員への情報提供や問い合わせへの対応が迅速に行われない場合がある。
⑤労務コストの増加
・労務管理業務の手間や負担が大きいため、労務部門の人員や予算の増加が必要になる場合がある。
・煩雑な業務によるエラーやトラブルが発生し、それに伴うコストが増加することがある。
⑥労働者エンゲージメントの向上
・労働者のモチベーションや満足度を高めるために、労務管理においてエンゲージメントの向上に取り組む必要がある。
・コミュニケーションの活性化や報酬制度の改善など、労働者の意欲を引き出す取り組みが重要となっている。
⑦データセキュリティとプライバシー保護
・労務管理において取り扱う個人情報や給与データなどのセキュリティとプライバシー保護が重要視されている。
・個人情報漏洩や不正アクセスなどのリスクに対処するための適切な対策が求められている。
これらの課題への対応には、労務管理部門や人事部門が経営戦略と連携し、適切なシステム・ツールの活用、効果的な情報共有やコミュニケーションの強化、法的な規制やトレンドの把握と対応などが必要となります。
5.1 労務管理を効率化させるには?
上記のような課題に対する施策としては、労務管理業務を手動のオートメーションからシステムやアプリケーションを用いた自動のオートメーションに変更するというものが挙げられます。具体的な施策としては、以下のようなものが挙げられます。
◉デジタル化と自動化の導入
・労務管理業務のデジタル化と自動化により、手作業や繁雑な業務の削減を図る。
・勤怠管理システムや給与計算システム、労務管理ツールなどの導入により、業務の効率化と精度の向上を実現する。
◉労務管理システムの活用
・統合的な労務管理システムの導入により、データの一元管理や業務プロセスの効率化を実現する。
・勤怠管理、給与計算、労働契約管理、労働法令遵守などの機能を統合し、労務管理業務全体を効果的に管理する。
◉データ分析と予測の活用
・労務関連のデータを分析し、労働力の最適配置や労働環境の改善策を見つけ出す。
・人事データや勤怠データの分析により、生産性向上や人材戦略の立案に役立てる。
これらの取り組みにより、労務管理の現状の問題に対処しながら、労働力の効率的な活用、労働環境の改善、従業員の満足度向上など、労務管理の品質向上と組織の成果を促進することが期待されます。また、労務管理の現状の問題に対処するためには、労務管理部門や経営陣、従業員との緊密な連携や協力が不可欠です。定期的な情報共有や意見交換の場を設けることで、問題解決や改善策の検討が円滑に進められます。
労務管理の現状の問題は多岐にわたりますが、適切な対策と取り組みを行うことで、組織の効率性と従業員の満足度の向上が期待できます。労務管理の改善には時間と努力が必要ですが、組織の成果と従業員の幸福感を高めるために、積極的に取り組む価値があります。
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6.労務管理システム導入のメリット
ここからは、労務管理システム導入のメリットをより具体的に解説します。システム導入前に比べて、システム導入後では、以下のようなメリットを享受できます。
◉業務効率化と生産性向上
労務管理システムにより、勤怠管理や給与計算、労働契約管理などの業務を自動化・統合化することで、業務効率が向上します。
手作業にかかる時間やミスのリスクを削減し、従業員と管理者の時間を節約できます。
◉データの正確性と一元管理
労務管理システムには、正確なデータの収集・管理機能があります。従業員の勤怠情報や給与データなどを一元管理することで、情報の一貫性と信頼性が向上します。
報告書の作成やデータの抽出が容易になり、正確な情報に基づいた意思決定が可能となります。
◉法的コンプライアンスの強化データ分析と予測の活用
労務管理システムは、労働法や労働規則の遵守に役立ちます。法的要件を組み込んだルールやチェック機能により、規制順守の確認と違反のリスクを低減できます。
就業規則の改定や法改正に柔軟に対応し、適切な労働条件の提供を確保できます。
◉分析と予測のサポート
労務管理システムは、データの分析や予測をサポートします。勤怠データや人事データの分析により、労働力の最適化や人材戦略の立案が可能です。
適切な人員配置やスケジュール管理により、生産性の向上やコスト削減につなげることができます。
◉従業員エクスペリエンスの向上
労務管理システムには、従業員自身が自身の情報を確認・更新できるセルフサービス機能があります。これにより、従業員のエクスペリエンスが向上し、自己管理が促進されます。
休暇申請や勤怠履歴の閲覧などが簡便に行え、従業員の利便性と満足度を高めることができます。
◉データセキュリティとリスク管理
労務管理システムは、データのセキュリティを確保するための機能を備えています。従業員の個人情報や給与データなどの機密情報を保護し、不正アクセスや情報漏洩のリスクを低減します。
アクセス制御やデータバックアップなどのセキュリティ対策を実施し、組織のリスク管理に貢献します。
◉組織全体の労務管理の充実
労務管理システムの導入により、組織全体の労務管理が一元化されます。人事部門や管理者がシステムを共有し、情報や業務の連携が促進されます。
チーム間のコミュニケーションやタスクの共有が円滑に行われ、組織の労務管理機能が強化されます。
労務管理システムの導入は、組織の効率化、法的コンプライアンスの強化、従業員の満足度向上など多くのメリットをもたらします。適切なシステムの選定と導入計画の策定が重要ですが、労務管理業務の効率化と品質向上に向けて大きな価値を提供することが期待されます。
7.労務管理システムの導入時の注意点
労務管理システムを導入することで上記のようなメリットを得られる一方で、システム導入時には、以下の注意点に留意することが重要です。
◉ゴールの明確化
労務管理システムを導入する目的とゴールを明確に定義しましょう。具体的な業務課題や必要な機能、期待する効果を明確にすることで、システムの選定や導入計画の方向性が明確になります。
◉プロセスとワークフローの評価
現行の労務管理プロセスとワークフローを評価し、改善点や効率化のポテンシャルを把握しましょう。システム導入に伴い、業務プロセスの再設計やワークフローの最適化が必要になる場合があります。
◉データセキュリティとプライバシー保護
労務管理システムには、従業員の個人情報や給与データなどの機密情報が含まれます。システムのセキュリティ対策やデータプライバシーの保護に十分な注意を払い、適切なセキュリティ措置を講じましょう。
◉ユーザートレーニングと変革管理
労務管理システムの適切な活用には、ユーザーのトレーニングと変革管理が欠かせません。システムの操作方法や利用ポリシーを明確に伝え、従業員の理解と協力を得るためのコミュニケーションとサポートを提供しましょう。
◉持続的な監視と改善
労務管理システムの導入後も、定期的な監視と改善を行いましょう。システムの運用状況や利用者のフィードバックを収集し、問題点や改善案を特定しましょう。システムのパフォーマンスや効果の評価を定期的に行い、必要に応じて調整やアップデートを行うことが重要です。
◉プロジェクト管理とチームの関与
労務管理システムの導入は、プロジェクトとして計画・実施されることが一般的です。プロジェクトマネージャーの指導のもと、関係者が適切に関与し、進捗管理やタスクの割り当て、コミュニケーションを行いましょう。
◉運用とサポート体制の確立
労務管理システムの運用とサポート体制を確立しましょう。ユーザーサポートやシステムのトラブルシューティング、アップデートや保守作業の計画的な実施など、システムの円滑な運用を確保するための体制を整えます。
◉変化管理とコミュニケーション
労務管理システムの導入には組織内での変化が伴います。変化管理プロセスを実施し、関係者への変更の伝達やコミュニケーションを適切に行いましょう。変化に対する理解と支持を得ることで、導入プロセスの成功を促進します。
労務管理システムの導入は組織にとって重要な一大プロジェクトとなります。注意深い計画、適切な選定、継続的な監視と改善を通じて、労務管理業務の効率化と品質向上を実現しましょう。組織のニーズと要件を的確に把握し、適切な対策と管理を行うことが成功の鍵です。
7.労務管理運用事例
労務情報のデータ管理を行う事で、新型コロナウイルスのワクチン接種会場の運営支援を行うプロジェクトの円滑化を支援した事例となります。支援前の課題は。「複数のスプレッドシートで個別に案件情報や雇用・シフト・労務情報を管理していたため、いつ誰がどのような情報を入力、追加したのか社内で明確にシェアできていない。」というものでした。オペレーション全体が明確に可視化できていない当時の状況を改善するため、データを一元管理できるツールを新たにカスタマイズ、導入する事で労務情報のデータを管理し、より効率的な運用を実現いたしました。
9.最後に
労務管理には、法定コンプライアンスや効率化、従業員満足度向上などの目的があります。スキルとしては、コミュニケーション能力や法務知識、データ分析能力が必要です。具体的な業務は、労務データ管理や給与計算、労働契約の管理などが含まれます。法定三帳簿は、法律で定められた文書の作成です。
労務管理には現状の問題が存在し、労務管理システムの導入が効果的な解決策になります。導入メリットには効率化や組織の労務管理機能強化がありますが、注意点もあります。ニーズの明確化やデータセキュリティの確保、トレーニングや変革管理に留意する必要があります。
労務管理は組織の健全な運営に重要です。労務管理システムの導入を検討する際には、基礎知識や注意点を踏まえながら組織のニーズに合った労務管理体制を築きましょう。
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