現代のビジネス環境では、顧客サービスの質と効率が競争のカギを握っています。コールセンターは企業と顧客との重要な接点であり、その業務の最適化のためにはCRMの導入が不可欠です。しかし、「CRMの機能がよくわからない」といった悩みや、「すでに取り入れているCTIだけでは不十分なのか」といった疑問を持たれている方も少なくないと思います。この記事では、コールセンターにおけるCRMの役割とメリット、CTIとの連携について解説します。
1.CRMとは?
CRMとは「顧客関係管理」(Customer Relationship Management)の略称であり、顧客に対して最適なサービスを提供するために必要な情報や顧客データを管理するためのシステムです。コールセンターにおいても、CRMを導入することで顧客からの問い合わせやクレームに的確に対応し、より高い顧客満足度を実現することができます。また、コールセンターで広く用いられているCTIと連携させることもでき、連携させることでより効率的に業務を行うことが可能です。
CRMについてより詳細に知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。
【記事】CRMとは?その意味からメリット・選び方まで詳しく解説!
2.CRMとCTIの違い
コールセンターの業務効率化には欠かせないCRMとCTI。しかし、両者の違いがそもそもよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか?ここでは、よく混同されがちなCRMとCTIの違いについて詳しく説明します。
2-1.定義
・CRM(顧客関係管理):CRMは顧客情報を収集、管理、分析し、組織が顧客との関係を強化するためのシステムであり、カスタマーエクスペリエンスを向上させるための戦略的なアプローチです。主な焦点は顧客管理の最適化です。
・CTI(コンピューター電話統合):CTIは電話システムとコンピューターシステムを統合する技術およびプロセスであり、コンピューター技術を使用して電話通信を管理します。主な焦点は通信の効率化です。
2-2.目的
・CRM:CRMの主な目的は、顧客との関係を深化させ、個別の顧客に合ったサービスや製品提供を可能にし、顧客満足度を高めることです。また、顧客情報の一元管理による業務の効率化も目的としています。
・CTI:CTIは効率的な通信、着信の自動割り当て、情報の取得などにより、通信システムの合理化を実現することを目的としています。
2-3.機能
・CRM:CRMは顧客データの管理、リード管理、分析、マーケティング支援など、顧客関係を向上させるための多くの機能を有しています。
・CTI:CTIは電話関連の機能を統合し、コールセンターの自動化、通話の録音、着信の自動割り当てなどを可能にします。
要するに、CRMは顧客関係を改善し、最適化するための戦略とツールであり、CTIは電話通信の効率化とコンピューターシステムとの統合を可能にする技術プロセスです。どちらも組織が効果的な顧客対応を行うために重要な要素です。
3.コールセンターにCRMを導入するメリットとは?
では、コールセンターにCRMを導入するメリットとは何なのでしょうか?コールセンターで広く用いられているCTIだけでは不十分なのでしょうか?ここでは、そんな皆様の疑問にお答えするため、コールセンターにおけるCRM導入のメリットについてご紹介します。
コールセンターにCRMを導入するメリットは以下の5つです。
3-1.顧客情報の一元管理
CRMは顧客情報を一元的に管理し、利用可能なデータにアクセスしやすくします。コールセンター担当者は顧客の履歴や要望に迅速にアクセスでき、よりパーソナライズされたサービスを提供できます。その結果として顧客満足度の向上につながります。
3-2.効果的な問題解決
CRMは過去の顧客連絡履歴を追跡し、問題解決をスムーズに行えるようにサポートします。これにより、同じ問題が繰り返し発生することを減少させることができ、業務の効率化につながります。
3-3.効率的なコミュニケーション
CRMは電話、メール、ソーシャルメディアなど、複数のチャネルを統合することができます。様々なチャネルを持つコールセンターにおいて、顧客が好むコンタクト方法を提供できることは大きなメリットです。
3-4.分析と改善
CRMは業務データを収集し、分析ツールを提供します。これにより、コールセンターのパフォーマンスを評価しプロセスの改善を行うことができます。
3-5.CTIとの連携
CRMはCTIと連携させることが可能です。CRMとCTIを連携させることで、それぞれを単独で使用するよりも、より効率的に業務を行うことができます。CRMとCTIを連携させてできることについては、次の章で詳しく解説していきます。
4.CRMとCTIの連携でできること
CRMとCTIの連携でできることは、主に以下の3つがあげられます。
- ・顧客情報の自動ポップアップ
・着信の自動割り当て
・電話履歴の自動共有
ここでは、それぞれの項目についてより具体的に説明していきます。
4-1.顧客情報の自動ポップアップ
CTIとCRMを統合すると、着信時に顧客情報が自動的に担当者の画面に表示されます。これにより、担当者は顧客の最新情報や購買履歴などをリアルタイムに把握でき、よりパーソナライズされたサービスを顧客に提供できます。
4-2.着信の自動割り当て
着信の自動割り当てはCTIの機能として既に存在しますが、CTIとCRMを統合すると、着信がより適切なスタッフに割り当てられるようになります。例えば、過去に何度かやり取りをしている顧客からの着信であれば、その顧客を以前担当したスタッフや、よりその相談内容に対する知識を持ったスタッフへと着信が割り当てられます。これにより、連続性のあるサポートが可能となり、顧客満足度を向上させます。また、着信の適切な自動割り当ては対応するスタッフの負担も軽減させるため、離職率の低下にも効果があります。
4-3.通話内容の共有
CTIとCRMを統合すると、顧客との通話内容が自動的にCRMに保存、共有されます。これにより、顧客の過去の記録を参照しやすくなるのはもちろん、トラブルの防止にも役立ちます。また、熟練スタッフの通話内容を新人スタッフ用の教材として利用するといった使い方も考えられます。
5.CRMとCTIの具体例紹介
ここまで、CRMとCTIについて説明してきましたが、一般的な定義や機能を説明するだけでは実際に運用するイメージがわきづらいと思います。そこで、この章では実際に当社が導入支援を行っているツールをCRMとCTIの具体例としてご紹介いたします。
5-1.HubSpot(CRM)
HubSpotはインバウンドマーケティングのプラットフォームであり、CRM(顧客管理システム)を中核として、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスなどを支援する様々な機能を有しています。HubSpotでは電話やメール、チャットなどを通じて顧客情報を自動的に収集し、一元的に管理することができます。また、チーム内でそれらの情報を共有し、顧客からの問い合わせに対して迅速に対応できるような体制を整えることができます。
コールセンターでの利用を考える時は、データベース上の顧客に直接電話をかけることができるコール機能もおすすめです。この機能を利用すると、通話内容をすべてCRMに録音することが可能になります。これまでは先方が話す内容をメモする必要がありましたが、コール機能を利用すれば話により集中できますし、漏れや記入ミスの心配もなくなります。このように、HubspotにはCRMを中心として業務に役立つ様々な機能備わっています。
HubSpotについて、より詳細に知りたいという方は以下の記事をご参照ください。
5-2.MiiTel(CTI)
MiiTelは、音声解析AI搭載型のクラウドIP電話です。主な機能として、
・IP電話
・キーワードの自動認識機能
・通話内容の文字起こし機能
・架電、受電数の個別記録機能
・通話のスコアリング機能
などがあり、インサイドセールスやコールセンターでの業務に特化したツールです。キーワードの自動認識機能では、特定のキーワードを検知でき、NGワードを言っていないかを簡単に確認できます。また、通話内容の録音だけでなく文字起こしもできるため、通話内容の確認にかかる時間を短縮することができます。MiiTel自体はCRMを搭載していませんが、HubSpotのようなCRMとの連携も可能であり、連携させることでより効率的に業務を行うことができます。
6.CRM導入前に知っておきたい3つの注意点
ご紹介したように、CRMの導入には多くのメリットがありますが、導入に際して注意すべき点も存在します。明確な計画や目標を立てずにCRMを導入してしまうと、期待した効果を感じられないまま導入が失敗に終わってしまうという事も起こりえます。ここでは、CRM導入前に知っておきたい3つの注意点について詳しく解説していきます。
6-1.コスト
CRMの導入には当然費用が掛かります。CRMの導入にかかる費用には、ソフトウェアのライセンス費用、カスタマイズや統合にかかる費用、トレーニング及びサポートにかかる費用などがあります。
6-2.時間とリソース
CRMの導入には時間とリソースが必要です。データの移行やトレーニング、新しいプロセスの実装などが含まれます。これにより、CRMの導入から、その効果を感じられるようになるまでにしばらく時間がかかる場合もあります。
6-3.業務プロセスの変更
新しいCRMシステムの導入は、業務プロセスの変更を伴います。スタッフは新しいツールやプロセスに適応する必要があり、これが抵抗や混乱を引き起こすことがあります。
以上の3点は、CRM導入を検討する際に考慮すべきポイントです。CRM導入を成功させるためには、計画、リソースの適切な割り当て、トレーニング、セキュリティ対策などが必要です。組織のニーズと予算に合わせて、自社に合ったCRMを選ぶことが重要になります。
7.コールセンターに導入するCRMを選ぶ際に重視すべきポイント
では、コールセンターに導入するCRMを選ぶ際、どのようなポイントを重視すべきなのでしょうか?ここではコールセンターに導入するCRMを選ぶ際に重視すべき10個のポイントについて解説します。
7-1.顧客データの管理機能
CRMの最も重要な機能です。顧客データの管理と一元化がスムーズに行えることを確認しましょう。
7-2.拡張性
コールセンターの規模が変化する可能性があるため、CRMはある程度の拡張性があるものがふさわしいです。新しいスタッフの追加や機能の拡張が容易であることを確認しましょう。
7-3.複数チャネルへの適応
コールセンターは電話だけでなく、メール、チャット、ソーシャルメディアなど、多くのコミュニケーションチャネルを用います。これらのチャネルを統合することができ、顧客との一貫性のあるコミュニケーションが実現できるCRMであるかを確認しましょう
7-4.カスタマイズ性
コールセンター独自のニーズに合わせて、CRMをカスタマイズできるかどうかが重要となります。また、サードパーティのアプリケーションや、CTIとの連携が可能であることも確認しましょう。
7-5.分析とレポーティング機能
データ分析とレポーティングツール機能は、コールセンターのパフォーマンスをモニタリングし、改善策を導き出すのに役立ちます。
7-6. 使いやすさ
スタッフがCRMを使いやすく、迅速に学べることが重要です。直感的なインターフェースとトレーニング資材が提供されているか確認しましょう。
7-7.セキュリティ
顧客データのセキュリティは非常に重要です。CRMプロバイダーがデータ漏洩を防ぐための適切なセキュリティ対策を提供しているかを確認しましょう。
7-8.カスタマーサポート
CRMプロバイダーが適切なカスタマーサポートを提供し、問題解決に対応する能力があることを確認しましょう。
7-9.コスト
CRMの導入、ライセンス、保守、トレーニングなどのコストを検討し、予算内で収められるか確認しましょう。
7-10.評判とレビュー
CRMプロバイダーの評判や顧客レビューを調査し、他の企業がどのように評価しているかを確認しましょう。
これらの要点を考慮しながらCRMを選択することで、効率的な顧客サポートプロセスを実現し、顧客満足度を向上させることができます。
8.CRM導入のステップ
最後に、実際にCRMを導入する際のステップについて説明します。CRM導入のステップは大きく分けて以下の10個に分かれます。
- ・目標の設定
- ・要件の収集
- ・適切なCRMプロバイダーの選択
- ・データの整理と修正
- ・カスタマイズと設定
- ・他システムとの統合
- ・セキュリティの確保
- ・トレーニングと教育
- ・モニタリングと改善
- ・拡張
それぞれについて、順番に説明していきます。
8-1.目標の設定
CRMを導入することによって何を達成したいのかを導入前に明確にしましょう。効率向上、顧客満足度の向上、コスト削減などの目標を設定します。
8-2.要件の収集
ビジネスのニーズを理解し、CRMシステムに求める要件を収集します。
8-3.適切なCRMプロバイダーの選択
収集した要件に合致したCRMプロバイダーを選択しましょう。自社の業務内容に合ったカスタマイズができるかや、他システムとの統合ができるかについても確認しましょう。
8-4.データの整理と修正
既存のデータを整理し、重複やエラーを修正します。データの品質が高いほど、CRMの有効性が向上します。
8-5.カスタマイズと設定
選んだCRMプラットフォームをビジネスに合わせてカスタマイズし、必要な機能を設定します。カスタマイズの例としては、カスタムフィールドやレポートの作成、ワークフローの設計、各種テンプレートの設計などがあり、ビジネスのニーズに応じた設計が可能です。
8-6.他システムとの統合
他の業務システムとの統合を検討します。例えば、メールマーケティングツール、Eコマースプラットフォーム、CTIなどとの連携をすることで、データの一元化と業務の効率化が達成できます。
8-7.セキュリティの確保
顧客データのセキュリティを確保するため、適切なアクセス制御、暗号化、バックアップ戦略を導入します。
8-8.トレーニングと教育
スタッフに適切なトレーニングと教育を提供し、新しいCRMシステムを活用できるようにサポートします。
8-9.モニタリングと改善
CRM導入後も定期的にパフォーマンスをモニタリングし、プロセスの改善を継続的に行います。
8-10.拡張
ビジネスが成長するにつれて、CRMシステムを拡張させる計画を立てます。新たな顧客、機能、およびスタッフをサポートできるようにします。
9.H&Kの扱った事例紹介
最後に、CRM導入についてより具体的なイメージを持っていただくために、当社がCRM導入をご支援した、株式会社シーユーシー様の事例についてご紹介します。
医療関連の事業会社である株式会社シーユーシーは、当時、新型コロナウイルスのワクチン接種会場の運営支援を行うプロジェクトを進めていました。そんな中、過去案件情報の管理や、会場で勤務する医療職の方の労務情報を別々に整理していたため、オペレーション全体を明確に可視化し、管理することができていないという問題を抱えていました。そこで、当社はCRMソフトウェアであるHubspotを顧客管理システムとして構築し、顧客情報の一元管理を図りました。これにより、必要な情報の共有・維持管理をより簡易的にできるようになり、業務の効率化に成功しました。
この事例についてより詳細が知りたい方は、以下のリンクから確認ができます。ご相談のきっかけや、パートナー選定軸、プロジェクトの進め方についても記載してありますので、是非ご参照ください。
【DX支援事例】医療系CRMデータベースの整備と、オペレーションDXの実現
10.まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。本記事ではコールセンターにおけるCRMの役割と、CTIと連携するメリット、実際に導入するまでの流れについて解説しました。コールセンターへのCRMの導入は、効率性、顧客満足度、ビジネス成果の向上につながります。当社H&KではCRMの導入支援を行っております。CRMを導入するか迷っている担当者様は是非、当社H&Kまでご相談ください。