アナログの時代からデジタルの時代への移行が異常な速さで進み、消費行動の選択肢も増えるなか、顧客情報を適切に管理する重要性が認知されてきました。
しかしながら、インターネットやデジタル機器の登場で企業側は扱う顧客のデータが多様化しており、十分な管理が行き届いていない企業も少なくないようです。そんななか、特に注目を集めているのがCRMです。
CRMについて深く知り、各企業に合ったCRMを選定して適切に運用することで顧客情報を最大限に活用することができます。顧客情報の活用は業務の効率化やサービスの向上に発展し、結果的に売り上げが伸びることにつながります。
CRMはマーケティングの基本であり、知らないと確実に損な概念ですが、浸透しているとは言い難いです。そもそもCRMが何か知らない、知っていてもどう活用すればいいかわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事ではCRMについての解説と、CRMのメリット・デメリット、CRM導入の際の注意点、CRMを選ぶポイントなどについて詳しく分かりやすく紹介します。
★この記事はこんな方におすすめです
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- CRMについて知りたい方
- CRMの導入を迷っている方
- 自社に合ったCRMをお探しの方
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以下が目次になります。項目クリックでお求めになる記事へ。
1.CRMとは
ここでは、そもそもCRMとは何であるかを分かりやすく説明していきます。
CRMは Customer Relationship Management(カスタマー リレーションシップ マネジメント) の頭文字を取った略語で、日本語では「顧客関係管理」と呼ばれることが多いです。
CRMはビジネスマネジメントの手法の一種で、日本語訳の通り、企業と顧客の関係性を管理し、顧客のニーズを知った上で対応することで売上の向上につなげようとする取り組みです。
関係性には、顧客の購入履歴や連絡先はもちろん、自社に寄せられた意見や要望、コミュニケーションの内容など多くの情報が含まれます。価値観が多様化し、ニーズの変化が頻繁に起こる現在、顧客が増えるほどこれらの情報は膨大な数になります。
競合他社が多くいるなかで新規の顧客を獲得し、既存の顧客を逃さないためにも適切な情報の管理が必要になりますが、人間の脳で全てを処理するにはさすがに無理があります。そこで、CRMを体現するためのソフトウェアが生まれました。
自社に合ったソフトウェアを用いることで、顧客情報を分析後、可視化することが可能になります。この分析結果をもとにして、ムダを省いて効率的でありながらも顧客中心のサービスを展開できる戦略を打ち出すことができます。
また、CRMによっては自動でメールを生成したり、イベントの集客の際に見込みのある顧客の層をリスト化してくれる昨日を持つものもあります。詳しくは、7.CRM選定のポイントで解説します。
類似した手法(MA、SFA)
CRMと似たビジネス手法にMAやSFAといったものもあります。
MAは Marketing Automation、SFAは Sales Force Automation の略であり、効率的な業務を促し、ムダを省いたうえで利益の最大化を目指すという点においては共通しています。しかし、これら3つの手法は目的が異なることを忘れてはいけません。
MAはマーケティングの最適化を目的としています。つまり、売上が期待できるターゲット層へ働きかけ、商談まで持ち込むことをサポートしようという手法です。メッセージを決まったターゲット層に最適なタイミングで送るところまでは自動ですが、メッセージの内容などは人に委ねられている点もポイントです。
SFAはCRMと特に似ていると言われることがあります。その理由としては、顧客のデータベースを管理しているという点で部分的に特徴が重なっているからだと考えられます。しかし、SFAはあくまで企業の営業活動に特化している手法です。営業先の商談進捗状況やコミュニケーションの内容を記録することで組織内で情報が共有され、営業の効率化を図ることができます。
CRMは、上記したように顧客との関係性を軸としてデータを管理している基幹システムです。顧客との関係性を基盤にして、MAやSFAなど他ツールへの派生をサポートするのがCRMです。
では、CRMには実際にどのようなメリットがあり、逆にデメリットもあるのでしょうか?
具体的なメリット・デメリットを次で解説していきます。
2.CRMを導入するメリット
CRMを導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。一般的にCRMのメリットとして知られているのは以下の3点です。
・顧客情報の一元管理化
・ニーズの把握と顧客育成
・最適なアプローチの確立
メリットその1:顧客の一元管理化
RMを導入することで、顧客に関係する情報をクラウド上などに1か所に集めることができます。リアルタイムで一元的に管理することで連携が取りやすくなり、生産性と効率性が上がります。
担当者が業務の内容をわざわざ帰社して報告をしなくても、営業先で進捗状況をオンライン上に打ち込むだけでよくなります。帰社するムダな時間を省き、そのまま次の訪問先に向かうことが可能になるので1日の生産性が向上することは間違いないです。
また、顧客の情報は常にクラウド上にあるので、担当者が不在の際や突然の担当者変更にも迅速で適切な対応ができ、部署の垣根を越えた連携も可能になります。複数の部署、スタッフで情報を共有することで、わざわざ会議を開いて情報を共有し合うというムダを省くことができ、各々の業務に充てる時間を増やすことができます。
CRMのユニークな部分として、顧客との関係性を管理しており、関係性の中には担当者と顧客のコミュニケーションの内容も含まれると上記しました。部署内に大きな売上をあげている社員がいるとして、その社員が顧客とどのようなコミュニケーションを取ったのかという記録を残すことにより、他の社員が有効でありそうな部分を抽出して自分の業務で用いることができます。このように相互扶助的なサポートができるのもCRMならではの良い点だといえます。
メリットその2:ニーズの把握と顧客育成
生産性と効率性の向上だけでなく、一元的に情報を管理することによって顧客のニーズを把握し、満足度の向上にむけて対策を講じることができます。
短いスパンで顧客のニーズや価値観が変化する現在、顧客が求めていることを正確に理解することがとても大切になってきています。CRMを用いれば顧客のリアルタイム情報が可視化され、ニーズを正しく把握することができ、顧客の需要を満たせるように前もって対策を練ることができます。
ここで、「顧客育成」の説明をする前に顧客の分類について述べておきます。
顧客は
・新規顧客
・既存顧客
に分類できます。
新規顧客は見込み顧客とも呼ばれ、自社のサービス・製品のユーザーになる見込みがある層を指します。それに対して既存顧客は既に自社のサービス・製品を使っている層を指します。既存顧客は、満足度を高め続けることで優良顧客へと成長する可能性があります。優良顧客は自社の売上に大きく貢献してくれる層を指します。
ニーズに対する適切なアクションができれば、自然と顧客の満足度は上がります。使うCRMによっては、マーケティング機能を用いることで、購買意欲の高そうな層に的を絞ったアプローチのサポートを受けることもできます。マーケティングのフェーズとしても重要な既存顧客の満足度向上と維持はCRMが助長するでしょう。
ニーズを適切に把握していれば、新規顧客の獲得にもつながることは言うまでもないでしょう。
メリットその3:最適なアプローチの確立
ビジネスは全てが一度きりの世界ではありません。ニーズに対する戦略も、顧客の育成も各企業ごとに最適な方法があるはずです。CRMに一元的に蓄積された顧客の情報を活用することで、ケースごとの最適なアプローチ方法を確立することが可能になります。
よく言われているのが、CRMの情報を使うことでPDCAサイクル(Plan, Do, Check, Action) の実行が容易になり、顧客に対する戦略の改善を図ることができるということです。顧客のニーズに対して、効果的な戦略を計画 (Plan)し、実際に行動に移し (Do)、その効果を評価し (Check)、改善を図る (Action) という一連の作業を繰り返し行うことで各顧客、各ケースごとに適切なアプローチを確立することができます。PDCAサイクルについて深く知りたい方は以下のサイトを参照してください。
PDCAサイクルによって打ち出された最適解を用い、適宜修正を加え続けることで満足度の向上につながり、メリットその2で記した優良顧客の育成が加速することとなります。培ったメソッドを応用させれば、新規顧客獲得の最適なアプローチも確立できるかもしれません。
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3. CRMを導入するデメリット
業務の効率化だけでなく、売上に直結するようなメリットを持つCRMですが、もちろんデメリットも存在します。CRMの代表的なデメリットは以下の3点です。
・コストがかかる
・データの蓄積に時間がかかる
・効果が現れるのに時間がかかる
デメリットその1:コストがかかる
顧客との関係性を管理するツールとして絶大な効果を持つCRMですが、無料で提供されているものは数少なく、あったとしても機能やデータの容量に限界があります。
アプリケーションの体系には様々な種類がありますが、
・機能が多い
・処理速度が速い
・データの容量が大きい
といった要素を持っているほどCRMのコストは高くなります。近年では比較的安価で、導入の難易度も高くないクラウド型が人気です。自社にとってどの要素が必要であるかを見極めて選択することが重要になってきます。
デメリットその2:他ツールとの組み合わせにはスキルと時間が必要
CRMは顧客との関係性をもとにした基幹システムであるので、MAやSFAなど他ツールと組み合わせて更なる効果を発揮するには一定のスキルが必要になります。
また、顧客の正確な分析のためにはある程度の時間が必要になります。分析の方法や戦略の立案も試行錯誤を繰り返すものである以上、この時間は必然的に避けられないものです。
失敗と成功を繰り返す中で、目的の設定を怠らず、CRMを使い続ける体制を整えることが重要になってきます。効果が最大限に発揮できるかどうかは、CRMを扱う方の手腕が問われる部分ともいえるでしょう。
目先の大変さよりも、中長期的なメリットを享受するためにもこのデメリットは受け入れるしかないようです。
4. CRM導入前に注意すること
いざCRMを導入することを決めたとしても、上手く活用できずに売上を伸ばすことができないと、ただの宝の持ち腐れになってしまいます。
ここでは、導入する前に確認すべきことを失敗例と合わせて紹介していきます。失敗例から学べるポイントをおさえることがCRM導入の第一歩となります。
失敗例その1:明確な目標がないまま導入
最終的な目標が「売上を上げる」というのはあまりにも抽象的すぎます。
なんの目標も持たずにCRMが流行っているからという理由だけで導入してしまうのはあまりにリスクが高いです。ムダな情報の取得に時間を取られることにもつながってしまうため、顧客に対してどのような価値を提供するのか、どの部分を優先的に進めるのかという目標を決めることは導入前に必ず確認しましょう。
目的をクリアにさせることで、途中のプロセスや運用期間などの詳細はもちろん、自社にあったCRMのシステムを逆算することが可能になります。
失敗例その2:CRMを扱う能力を持った人材がいない
せっかく高性能のCRMを導入したとしても、それを適切に扱える人材がいないとCRMは真の効果を発揮できません。CRMの運用に必要なスキルを持ち合わせた人材がいることで、初めて「鬼に金棒」状態になることができます。
もちろん、CRMの種類によっては全くの初心者が扱えるように設定がされているものもあります。しかし、万が一にもデータの過不足や誤った運用方法によって正確な分析ができないという状況を未然に防ぐために、データに強い人材を確保しておくことは大変重要です。
社内に確保することが理想的ではありますが、社外に委託する形でCRMを運用することも視野に入れておきましょう。無理に自社で完結させようとしてリスクを上げることは、なるべく避けましょう。
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5. CRM導入後に意識すること
導入前の注意点をおさえ、導入は成功したとしても、引き続き注意しながら運用する必要があります。なかなかのコストと労力をかけて導入したのに、途中で投げ出すような状況になるのは大変もったいないです。そのような状況を避けるために2つの点に注意しましょう。
注意点その1:運用率の維持
一度始めたことを長い間継続することはなかなかに難しいことです。しかし、CRMはその性質上、時間をかけて運用する必要があります。
効果が導入後すぐに顕著に現れるわけではないので、意義を見出すことができず、運用の放棄を考えてしまうかもしれません。他にも、操作の難易度やCRMを用いた業務の目的やプロセスが確立していないことは運用率の低下を招く要因となります。
4.導入前に注意すべきことで記した注意点を再度確認することはもちろんですが、CRM業務のフローを確立するなどして対策することはできます。常に最新で正確なデータを集積し、CRMの高い運用率を維持することで中長期的なメリットを存分に享受できるようになります。
注意点その2:指標の設定と効果の測定
何度も記していますが、CRMは顧客との関係性を扱う代物です。なので、導入してもコストと効果の相関関係を測定することが難しく、CRMが本当に役に立っているのかが明らかになりにくいかもしれません。
しかし、企業の営業成績の良し悪しが「売上」や「純利益」などの指標で評価されるように、CRMも何かしらの指標を設けることで効果の評価が可能になります。
企業が設定した目標によって、どの程度目標を達成できたかを測る指標は異なってきます。
売上の向上を目標とした場合は、顧客数の変化や1顧客あたりの売上を指標とするのが良いでしょう。業務の効率化を目標とした場合は、残業時間の減少度などを指標とするのが良いでしょう。
一般的に、上記した例のような指標はKGI (Key Goal Indicator) と呼ばれ、最終目標の達成具合を計測するために用いられます。具体的なKGI(CV数や月間売上など)を設定することで、CRMの効果が可視化されることになります。
場合によっては、KPI (Key Performance Indicator) という目標達成に至る過程を評価する指標を設定することも、CRMの費用対効果を正確に測定する鍵となります。
6. CRMとMAの活用事例
先ほどまでは、CRMを導入するにあたって知っておいた方がよい点や注意すべき点に焦点を当ててきました。ここからは、実際にCRMを導入して活用している企業の事例を見ていきます。
事例:メールマーケティングの開封率が驚異の58%超え【鵜山リゾート様】
「わくわく出来る旅を、思い出になる旅を。」という経営理念のもと、貸別荘やグランピング施設のレンタル事業など、リゾート開発を展開している鵜山リゾートが既存顧客データの管理と分析を行えるような体制を構築するためにCRMを導入した事例です。
マーケティング目的のメール開封率は一般的に20%程度と言われています。しかし、開封率の高い曜日・時間帯を分析してメールの送信時間を設定し、顧客に応じたキャンペーン内容を実行するためにタイトルと本文を改善したことで平均を大幅に越える58%という数字を叩き出しました。
データを基に既存顧客に働きかけることで、顧客の育成を図る戦略を策定した好例といえます。より詳しく知りたい方は以下のリンクをクリックしてください。
>>>事例の詳細を見る
7.CRM選定のポイント
CRMの導入に際しての注意点を網羅し、巧みに活用することで業績UPに近づくことは理解できたでしょうか。ですが、CRMのアプリケーションは数多く存在しており、自社に敵したものが絞り切れないこともあるでしょう。ここでは最後に、自社に合ったCRMを選び抜くためのポイントをいくつか紹介します。
・機能の充実性
・使いやすさと応用性
・セキュリティ対策とサポートの充実性
ポイントその1:機能が充実しているか
自社の目的を達成するためのニーズを満たす機能がアプリケーションに搭載されているかは大変重要な要素です。
搭載されている主な機能としては、
・顧客情報管理(連絡先、進捗状況、コミュニケーション履歴)
・顧客情報をもとにした分析
・メール配信
・アンケート管理
などがあります。
3.CRM導入のデメリットでも記したように、多機能、高性能であるほどコストが膨らみます。基本的な機能があれば十分である企業もあれば、AIを用いたより高性能の分析を求める場合もあるでしょう。この部分は経営陣に決断が委ねられますが、CRMは中長期的に使い続けるものなので、幅広い機能を搭載した製品を選ぶことをおすすめします。
ポイントその2:使いやすさと応用性
CRMは運用率を高めて活用することで真価が発揮されます。ですので、使いやすさには必ず着目しましょう。
ただ、製品の紹介を読むだけでは実際の使い勝手は分かるはずはありません。機能からいくつかのアプリケーションに絞り込み、無料版を試しに導入してみましょう。使用者の意見も反映して検討することで、理想的なCRMアプリケーションが導き出されるはずです。
また、CRMが単純な機能で完結しているのか、それとも他のアプリケーションと連携が可能であるのかという点にも注意を払いましょう。連携が必要になった際に、新たにツールを導入したり、カスタマイズを迫られるムダが省けるでしょう。
明確な目標を定めれば、将来的にどのような応用・拡張機能が必要であるかも分かるはずです。

ポイントその3:セキュリティと運用サポート
どのシステム、アプリケーションにも共通していえることですが、セキュリティ対策が万全であるかは企業の信頼度にも関わってくる重要な項目です。顧客の情報が密接に関わるCRMにおいて、この部分を雑に扱うと大きなリスクを抱えることになります。
アプリケーションの防御性は十分であるのかは見極めなければいけません。良いCRMアプリケーションを提供しているほど、セキュリティに関する情報開示は行っているはずです。
心配であれば、事前にアプリケーションの提供主に問い合わせをしましょう。
さらにいえば、このような問い合わせや導入後のトラブルへの対応が迅速であるかも大事なポイントです。サポート体制が整っているほど、トラブルを未然に防ぐことができたり、被害を最小限に抑えることが可能になります。
8.おわりに
この記事ではCRMとは何か、CRMのメリット・デメリット、導入時の注意点、導入事例、CRM選定のポイントについて解説しました。
CRMがいかに魅力的な手法であるかお分かりいただけたでしょうか?
CRMの本髄を理解し、確固たる目標の下で適切なCRM運用を行うことが成功への道筋です!ぜひこの記事の内容を役立たせてください!
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