今回は「会社のパフォーマンスを向上させるコンペンセーションの設定と目標」について説明していきます。
売上目標を決め、それに沿ったキャパシティの人員計画をした後に、利益目標から逆算して使えるコストをはじき出し、人件費、マーケティング費用、外注費などに割り振って予算を確定させます。
この段階で考慮しておきたいこととして、社員の報酬の仕組み「コンペンセーション」があります。今回の記事ではそのコンペンセーションと目標設定の具体的な方法についても触れていくことで、どのように会社のパフォーマンスを向上させるのかについて解説していきます。
1.コンペンセーションとは
1-1.コンペンセーションの定義
コンペンセーションとは、社員の報酬の仕組みのことです。compensationの意味は「償い、代償、俸給」です。
よく使われるビジネス用語としてC&Bという言葉があり、Conpensation&Bnefitで、人事の職務領域のうち、報酬と福利厚生に関わる職種のことを指します。
海外の企業ではコンペンセーションとベネフィットの二つは社員に対して発生するコストであり、このコストコントロールを管理していくことは人事の大事な仕事だと考えられています。日本企業においても福利厚生をどう抑えていくかが今後の課題と言われています。
2.コンペンセーションの重要性
組織を動かすために計画は立てますが、実行を担うのは社員です。
営業だけではなく、あらゆる社員の個人目標設定は組織全体のパフォーマンスに大きな影響を与えます。
チーム全体の目標も重要ですが、個人目標が決まっていないと、組織をストレッチさせることができません。ですから個人目標の設定は極めて重要です。
2-1.結果を出している人に対する意思表明
組織では2:6:2の法則と言われるように、優秀な人、普通な人、そうでない人に分かれています。そして上位20%の人材が会社の利益の80%に貢献しているとも言われています。組織が大きくなればなるほどこの2:6:2の影響で、営業力の高い人低い人、即ち売れる人とそうでない人がはっきりしてきます。
その時に、チーム目標しかない場合であれば、売れていない人の分を売れている人がカバーしていることになります。この場合、チームの目標達成度合いで評価されてしまったり、明確な基準がない個人評価をしてしまうと、売れている人は評価で報われずやる気を削ぐことになり場合によっては退職をしてしまいます。
そうならないようにするためにも、結果を出している優秀な層に大して組織として意思表明する必要があります。
2-2.中間層の現状維持の仕事のやり方を防ぐ
先ほどご紹介した2:6:2の法則でいう6割の層の方が該当します。
会社の組織が強いかどうかは、全体の60%を占めるこの普通の層と言われている人材が活躍できるような仕組みになっているかで決まります。
チーム目標しかない場合、そこそこ成果を上げている普通層の人材は本来はもっとストレッチできるとしても無意識に現状維持の考えに留まることになります。リスクをとる必要がないからです。これでは組織はストレッチしませんし、上位20%の優秀層の数が減った時にチームの成果全体が下がってしまいかねません。
2-3.成長意欲を促進させる
人は本能的に、目標が与えられるとそれを達成しようとします。目標があり、現状とのギャップを理解することで、それを埋めようという意識が、もう少し頑張ってみようというやる気を駆り立てるのです。
ですが、個人目標を設定する場合に目標が高ければ高いほど良いというものでもありません。
個人目標を適正と思える水準に設定することが重要です。
例えば、自分の組織が担当している市場環境や顧客からの認知度、ポテンシャルを考慮せずに、たまたま昨年チームの目標値が達成したから踏襲した設定をしてしまえば、この個人目標設定は逆効果です。
あくまでも自分の組織にとっての外的要因と内的要因を見極めて適切な個人評価を設定することが重要です。そうすることで会社全体としてのバッファが少なくなり、リスクも大きくなる場合もありますが、達成できない目標は形骸化し組織に悪影響をもたらします。
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3.理想的なコンペンセーションと目標設定の流れ
3-1.理想的な目標設定を行う
高すぎる目標だと上半期を終えた時点で、「もう今から頑張っても年間目標の達成は無理だ」と諦める人が出たり、「周りも達成していないからできなくて当たり前」という空気ができてしまいます。
ともすると、高すぎる目標達成のため、ひとりがむしゃらに動くようなことをすれば、他部署と温度感が開き、目標達成のための協力依頼が無茶振りと捉えられ組織全体の関係性が悪くなり孤立化してしまいます。
理想的な目標は「Challenging but achievable(チャレンジだが、達成不可能ではない)」と表現されるように、絶妙なストレッチゴールを設定すると組織全体のパフォーマンスに大きなインパクトを与えます。
3-2.コンフォートゾーンの設定
コンフォートゾーンとは、自分の現状の能力で解決でき状況や環境に一切不安を覚えない心地良い空間です。安全地帯とも呼べます。個々人がコンフォートゾーンに留まる、コンサバな目標設定では、個人の成長は見込めません。
ラーニングゾーンと呼ばれる自分の能力を超える心地悪い空間において、心地良い状況に変えるために能力を鍛えることで人は成長します。気をつけるのは、ラーニングゾーンを大きく超えて到底無理な要求をされ、精神的にも肉体的にもストレスがかかるパニックゾーンという危険地帯に至るような目標設定をしてはいけません。
マネジメントは個人の能力を見極めて単一的ではなく個人に合わせた目標を設定する必要があるのです。
3-3.目標設定における定量評価と定性評価のバランス
また、目標設定おいては定量評価と定性評価を組み合わせることが良いです。
定量評価だけでは結果が出ていれば良いという視座になりがちで、チームや部署の手本になるような成長には必ずしもなりません。会社のビジョン、ミッション、バリューに照らし合わせて作成した定性評価を盛り込むことで、より高い視座を身につけてもらう仕掛けにもなります。
このようにマネジメントは目標から逆算することも大事ですが、目標を設定する力の方がはるかに大事です。
3-4.目標設定を定期的に管理する(MBOの導入)
(MBO)目標管理制度を導入することで、社員が自主的に目標を設定すると同時に、業務に取り組んでくれることが可能になります。
ただコンペンセーションの評価にMBOを導入するときは注意が必要です。高い目標を達成するのが目的になるのではなく、MBOを達成して昇給することが目的になる場合があります。この時目標設定が低いと社員自体の大幅なスキルアップが見込めないので、社員ごとの目標設定が適正なのかを判断する必要があります。
3-5.コンペンセーション設定で成功した具体例
適切な目標に対する報酬の設定、つまりコンペンセーションの設定が上手であれば単に売上がストレッチするだけではなく、社員にやってもらいたい行動を促す効果もあります。
例えば、会社が月額課金のSaaSのビジネスを取り入れている場合、営業にはできる限り長期の契約を締結して欲しいものです。半年契約よりも、1年契約。1年契約よりも複数年契約というように長期間の取引を望みます。
これは短期で解約されてしまっては、製品への投資、マーケティング・営業への投資のリターンが回収できないというコスト判断はもちろんのこと、長期の契約になれば契約更新回数が減ったり、支払い条件が有利になったりというオペレーション観点の判断もあります。
したがって、このようなビジネスの場合、営業は原則的に年間契約金額で評価されますが、契約期間や支払い条件という契約内容によって評価の傾斜がかけられています。
そうすることで、目先の短期的な小さな契約だけでなく大きな契約を取りに行けるよう会社が後押ししているのです。
4.最後に
ここで説明したやり方が全て正しいというわけではありません。もちろん、会社の文化や社員が大事にしていることが何かによって状況は変わります。
ですが、どのような目標設定やコンペンセーションの仕組みにするにしろ、適当に決めることだけはしてはいけません。
仕組み一つで社員のパフォーマンスは大きく変わってくるので、工夫することが必要になってきます。