今ビジネスで注目されている「パフォーマンスマネジメント」は、メンバー一人一人にフィードバックを行うということが大きな特徴です。そのフィードバックには数字と指標が関係しています。
そこで今回は、「パフォーマンスマネジメント」における「指標の見方」について解説していきます。「指標の見方」を理解することで、そういう指標になった要因を推測することができたり、その営業の強みと弱みを知ることができます。そして企業のパフォーマンスを上げることができます。
このブログのライティング者

安藤 弘樹(Koki Ando)
株式会社H&K 代表取締役
株式会社H&K 代表取締役CEO
20代前半から事業を展開し、バイアウト。その後、30年続くイベント会社で最年少でセールス・マーケの責任者。広告代理店で取締役CMOを経験。H&Kを創業。
@KOK1ANDO Youtube
1.パフォーマンスマネジメント指標における指標のポイント
1-1. 指標を見るときは、絶対値ではなくトレンドを重視する
指標を見るときに着目しなければいけないポイントは2つあります
- ・絶対値ではなくトレンドを重視すること
- ・単一ではなく複数の指標を見ること
まず1つ目の「絶対値ではなくトレンドを重視する」について解説します。例えば、第1営業部は受注率30%、第2営業部は受注率20%という数字を見て、第2営業部の方に問題があると考えると思います。しかし、担当するテリトリーが違うと、市場の成熟度、顧客、競合などの環境が変わります。
受注率30%の第1営業部は、既存顧客を多く抱えているが、第2営業部は新規専門のチームのため既存顧客が少ない。第1営業部の取り扱うサービスは、市場シェア上位を既に獲得しているが、第2営業部の取り扱うサービスは、新規性の高いサービスで市場シェアがまだ獲得できていない。などがあげられます。
また、外部要因だけではなく、内部要因もあります。第1営業部の営業は、確度が上がるまで商談を作成しない傾向にあり、第2営業部の営業は、少しでも可能性を感じると、どんどん商談を作成していたとすれば、単に分母の基準が違うだけということもあり得ます。
組織を率いるリーダーの考え方が違えば、組織の作り方も変わってくるため、数字に対する感覚も変わってきます。そのため、数字を比較する場合は同じ条件で比較しなければ、意味がありません。指標を見る時は目の前の数字ばかりではなく、内情を考慮し、トレンドを見ることを意識した方が良いです。
例えば、営業第2部に受注率が昨年まではコンスタントに30%だったものが、今年20%に落ちたとしたら何か新たな課題が発生した可能性が高いです。
- ・顧客のサービスニーズが自社のサービスレベルより上流を求めていくトレンドになった
- ・強い新業種の新規参入があった
- ・サービス提供レベルの低下による顧客離れといった外的要因
- ・組織改変に伴い受注率の高かった人材の退職や休職が引き起こす組織レベルの低下といった内的要因
逆に去年からずっと20%前後であれば、新たな課題というよりもそもそもの構造的な問題があるのか、もしくは、そもそも第1営業部と比べて基準自体に違いがあるのかと言った観点から分析していく必要があります。
1-2. 指標を見るときは、単一ではなく複数の指標を見る
次に2つ目の「単一ではなく複数の指標を見る」について解説します。簡単にいうと、あらゆる指標は「件数」と「金額」を2つ並べて分析した方が良いということです。
①受注率の指標を見る
「受注率」がそのわかりやすい例ですが、件数ベースでの受注率ですが、件数ベースでの受注率30%の営業が2人、20%の営業が1人いたとします。これだけでは誰が優秀か、どんな特徴を持っているかわかりません。ここに金額ベース受注率も加えてみると大きな差があることがわかるでしょう。
表1 各営業の件数別の受注率、金額の受注率
受注率(件数) |
受注率(金額) |
|
営業A |
30% |
18% |
営業B |
30% |
35% |
営業C |
20% |
40% |
上の表をご覧ください。この表からわかる情報をまとめると、営業Aは金額の高い商談を失注している傾向があり、低価格で、提案要素の低い商談での受注に偏っている可能性があります。そのため、営業Aは高度な提案力や価値訴求、周りを巻き込む力などに課題があると考えられます。
逆に、営業Cは大きな商談を受注しているが、受注件数となると失注しているものが多いので、取れそうな商談に集中するあまり、他をきちんとフォローできていない可能性があります。この場合は、テリトリーを絞って、大型案件に集中してもらうというマネジメントも考えられます。この中で、営業Bは非常にバランスが取れていると考えられます。
もちろんこれは想像であり、理由はまったく違うことも考えられますが、単一指標ではなく複数の指標を組み合わせることで、何が起きているか想像しやすくなり、マネジメントとして何に対応するべきかの的が絞りやすくなることはわかると思います。
②受注率と新規比率の指標を見る
別の例を紹介します。以下の表をご覧ください。
表2 各企業の受注率と新規の比率の比較
担当営業 |
昨期売上金額(円) |
全商談金額総計(円) |
受注率 |
新規の比率 |
営業A |
150,000,000 |
375,000,000 |
40% |
45% |
営業B |
120,000,000 |
400,000,000 |
30% |
65% |
営業C |
100,000,000 |
285,000,000 |
35% |
60% |
営業D |
95,000,000 |
146,000,000 |
65% |
15% |
営業E |
36,000,000 |
72,000,000 |
50% |
80% |
営業A、B、C、D、Eの5人がいます。昨年の売上実績が1億円に達しているのはA,B.Cの3名ですが、受注率だけ見ると、営業Dと営業Eが高いレベルにあります。また、受注率だけではなく、新規顧客からの契約と既存顧客からの契約の比率に大きな差があることもわかります。ここから次の点を考慮するべきです。
- ・営業のテリトリーアサインにばらつきが大きいのではないか
- ・営業Dはほとんどの売上を既存顧客からあげており、今期も同じ期待をするのは難しいのか
- ・営業Dの既存顧客からの受注は、他の営業でも確保できるのか
- ・営業Dの新規に限った受注率は何%なのか
- ・営業Eにより広いテリトリーを与えて商談件数を増やすと、大きく業績が向上するのか。テリトリーに問題がないとすれば、案件発掘のスキルに課題があるのか。他の営業と比べて商談作成の基準は同じなのか
一つの指標だけではなく、複数の指標を見ていくことで、その営業の強い点はどこなのか、どのようにしてさらに伸ばしていくことができるのか、反対に、弱い点はなんなのか、どのように改善していくことができるのかを検討することができます。
2. まとめ
以上、「パフォーマンスマネジメント」における「指標の見方」について解説してきました。この記事が少しでも参考になっていただければ幸いです。
最後に覚えておきたい要点についてまとめます。
・指標を見るときは、「絶対値ではなくトレンドを重視する」、「単一ではなく複数の指標を見る」ということに着目する必要があります。
・指標を見るときは、目の前の数字ばかりではなく、内情を考慮した方がよいです。
・複数の指標を見ることで、その営業の強い点と弱い点を知ることができます。
株式会社H&Kでは、集客やマーケティングの相談を受け付けております。気軽にお問い合わせください。