今やネットショッピングは当たり前の時代。これからECを始める企業も多いことでしょう。ですが、初めてECサイトを制作するにも、どこから手を付ければ良いのか分からない、というのはよくあります。
本記事では、ECサイトをはじめて制作する方向けに、ECサイトの制作手順や費用相場などを徹底解説します。
ECサイトについての基礎知識を知りたい方はこちらのブログをご確認ください。
1.ビジネスサイズで異なる3つのECサイト制作方法
ECサイト制作といってもビジネスサイズによって制作方法は異なります。ここでは、主に個人事業主として運営するスモールサイズ、ECサイトからの年商1億円未満の法人が運営する想定のミドルサイズ、ECサイトからの年商1億円以上の法人が運営する想定のエンタープライズサイズの3つに分けて、それぞれの制作方法について解説します。
ビジネス規模 |
制作方法 |
制作期間目安 |
初期費用 |
月額費用 |
スモール |
無料ASP |
数日 |
0円 |
0円 |
ミドル |
有料ASP |
1ヶ月程度 |
数千円~10万円未満 |
数千円~5万円程度 |
エンタープライズ |
パッケージ or クラウドEC |
3ヶ月~6ヶ月 |
数十万円~ ※規模による |
10万円~ ※規模による |
※初期費用は外注する場合の費用は含みません
※月額費用は決済手数料は含みません
1.1.スモールビジネスのECサイト制作
個人事業主や数名規模でEC事業を始めるなら最初は無料ASPで始めるのが良いでしょう。無料ASPと聞くと不安に感じる方も多いかも知れませんが、ShopifyやBASEに代表されるようなサービスが出てきて基本的な機能は全て実装されているので心配はいりません。
むしろトランザクション(購入やアクセス)数が少ない状態であることが前提なので、急なアクセス増などのトラブルでサイトが落ちることはあるかも知れません。
感覚的にはFacebook公式アカウントを開設する感覚でECサイトを制作することができます。商品写真があって、商品登録ができる状態なら誰でも簡単に始めることができるでしょう。
ただし、デメリットもあります。無料ASPは独自ドメインを取得することができません。(オプションで有料取得することができるサービスはあります)
従ってビジネスサイズが大きくなって、有料ASPやパッケージ、クラウドECなどに移行していくにあたってドメインを引き継ぐことができないので、SEOの側面からもデメリットが生じてしまいますので、その点は注意しましょう。将来的にECを拡大させる計画があるなら最初から有償オプションで独自ドメインを取得しておくことをお勧めします。
1.2.ミドルビジネスのECサイト制作
ECサイトからの年商1億円未満程度の法人がECサイトを制作するなら、有料ASPを利用することをお勧めします。例えば大手企業であったり多店舗展開して店舗売上が相当程度ある企業が初めてECサイトを制作する場合には、最初から有料ASPを利用するのが良いでしょう。
ECサイトで売上をそれなりに獲得するには、Webマーケティングのノウハウが必要です。実店舗の運営ノウハウとは異なるノウハウなので、初めてECビジネスを始めるなら、最初は安価な有料ASPでECサイトを制作し、Webマーケティングのノウハウを積み上げながら、ある程度の売上規模になるまで有料ASPで運営しておくことをお勧めします。機能的な不足はもちろんありませんし、ある程度のトランザクションにも耐えうるサービスで、トランザクション規模に応じて月額プランがいくつか用意されている有料ASPも多いので、運営しながらプランアップしていくのが現実的です。
ただし、安価な有料ASPとなると機能的な面でのカスタマイズや外部連携にある程度制限があるので、その点だけは注意しましょう。
1.3.エンタープライズビジネスのECサイト制作
ECサイトからの年商1億円以上の法人がECサイトを制作するなら、パッケージ(オンプレミス)かクラウドECでECサイトを制作することをお勧めします。
以前は大規模ECとなると、ほとんどの場合がパッケージでしたが、現在は大手ECパッケージベンダーもクラウドECを提供し始めており、パッケージと遜色ないサービスです。
クラウドECであっても機能的なカスタマイズが可能なサービスもありますし、外部連携の自由度も相当高くなりますので、ビジネスの幅が広がり、運営も効率的になります。
あくまで目安ですが、注文数が1日あたり100件を超える規模であればパッケージかクラウドECを検討するのが良いと思います。
2.ECサイト制作期間の目安
続いてECサイトの制作期間の目安についてご紹介します。サイト規模とビジネス規模は比例するので、ビジネス規模が大きくなれば、それだけサイト規模も大きくなり制作期間も長くなる傾向にはありますので、ビジネス規模別にサイト制作期間の目安について解説するのが良いでしょう。
2.1.スモールビジネスのECサイト制作期間の目安
まずはスモールビジネスのサイト制作期間についてご紹介します。結論から申し上げるとスモールビジネスのECサイト制作期間は数日程度です。なお、カード決済の口座開設等の手続きを除きますので、その点はご了承ください。
今はShopifyやBASEなどのサービスを利用することで、商品登録ができれば直ぐにでもECサイトを制作することが可能となっています。また、ECモールにショップを構えるのも数時間で構築することが可能です。商品情報だけは独自に登録しないといけないので、商品写真は特に気を使って撮影することをお勧めします。商品写真しだいで売上は全然変わるので、そこは予算をかけてでも良い写真を掲載するようにしましょう。
2.2.ミドルビジネスのECサイト制作期間の目安
ミドルビジネスのECサイトの制作期間は1ヶ月程度となります。ミドルビジネスですと有料のASPを使用することをお勧めしていますが、有料ASPとなるとECサイトのデザインも、ある程度の自由度があるので、デザイン性が問われることになります。
また、ミドルサイズとなるとWebマーケティングのノウハウも集客に影響します。よって、SEO対策を始めとするWebマーケティングの施策を意識しながらECサイトを制作することが重要になります。自社の商品に合わせて対策キーワードを設定し、対策キーワードに合致した商品紹介文や、場合によっては、商品ブログなどのオウンドメディアとの組み合わせも意識するのが良いでしょう。直接、商品紹介ページにランディングさせることもありますし、オウンドメディアの記事から商品紹介ページに遷移させる方法もあります。
また、サイトデザインのリソースがないのであれば、外注することも視野に入れた方が良いでしょう。ミドルサイズのECサイト制作であれば、外注しても100万円~200万円程度で制作することが可能です。制作期間についても1ヶ月程度で可能となります。
2.3.エンタープライズビジネスのECサイト制作期間の目安
エンタープライズビジネスのECサイトの制作期間は3ヶ月~6ヶ月を目安にしてください。この規模になるとビジネスサイズに開きが大きくでるので、あくまで目安ではありますが、どの程度のECサイト規模になるかによって大きく制作期間は変わってきます。
また、カード決済だけではなく、会計システムなどの外部システムと、どの程度連携させるかによって制作期間は変わってきます。エンタープライズ規模のECサイトとなれば売上計上や売掛金の消込などで会計システムと連携したり、在庫管理システムと連携させ、店舗在庫とEC在庫との棲み分けをしながら在庫管理することもあります。従ってECサイトの制作のみならず、外部システムとの連携開発も必要になることがあるので、その点でも制作期間が長くなることを想定しておいた方が良いでしょう。
制作リソースに関してもシステム要件が関係してくるので、デザインだけではなく、データベースの設計開発やAPI連携といったシステムエンジニアのリソースも必要になります。
また、パッケージソフト(オンプレミスタイプ)でECサイトを制作するのであれば、サーバーやネットワークといったインフラエンジニアのリソースも必要となりますので、制作プロジェクトの範囲も大きくなります。クラウドECで制作するケースでも、AWSといったIaasを利用することが多いので、インフラエンジニアは欠かせないでしょう。
3.ECサイト制作手順(ミドルorエンタープライズ)
スモールビジネスのECサイト制作は、デザインやインフラといった技術的な要素は仕様である程度決まっており、制作期間も数日なので、技術者でなくとも手軽にECサイトを制作することが可能ですが、ミドルビジネスやエンタープライズビジネスの規模になるとECサイト制作の自由度が増す一方で、デザインやインフラの技術が必要でしょう。
従って、ECサイト制作手順に関してもシステム開発と同様のプロセスが求められるので、本章では、各プロセスに沿ってECサイト制作に必要な手順を解説します。
3.1.要件定義
まずは要件定義を行います。ECサイト制作における要件定義は、ECサイトの目的を決め、どの程度のビジネス規模を想定し、それを達成するためのトランザクション数(例えば1日あたりの購入件数など)を設定し、それに見合うシステム規模を定義します。
例えば、Webサーバーにはどの程度の容量が必要なのか、DBサーバーの容量がどの程度必要となるのか、といったビジネス要件からシステム要件に落とし込む必要がありますので、エンジニアと協議しながら要件定義をするのが良いでしょう。
最初の要件定義を間違えると後工程に大きく影響し、場合によってはプロジェクトを最初からやり直すといった事態にもなりかねません。ECサイト制作における要件定義は、場合によっては1ヶ月程度を掛けても丁寧に慎重に行うことをお勧めします。
3.2.設計
要件定義ができましたら、具体的なシステム設計に入ります。ミドルサイズで有料ASPを利用する場合は、有料ASPの仕様によってある程度の機能要件が決まっているケースもあるので、設計範囲は限定的となりますが、エンタープライズサイズでECサイトを制作する場合は、パッケージ(オンプレミス)やクラウドECを利用することが多いので、機能面も豊富で各機能をどう使うかによって設計内容が全く異なります。要件定義に沿った設計も各社でマチマチとなります。スクラッチで開発する程ではないにしても、ECサイトの設計によって大きく完成形が異なるので、要件定義と同様に慎重に設計することをお勧めします。
また、ECサイトの設計は技術要素が多分に含まれますので、エンジニアとコミュニケーションを蜜にとって、想定しているビジネスとシステム設計内容が食い違うことがないよう、プロジェクトマネージメントをしっかりとやれる体制を組む必要があります。
ECサイトの制作における設計要素は、「コンテンツ設計」「サイト構造設計」「ナビゲーション設計」「画面設計」「デザイン制作」「システム・データベース設計」という6つの設計要素があります。これらの設計を担当するエンジニアの人たちと決めていくので、要件定義した内容に沿って統一感を持って設計していくことを心掛けましょう。
3.3.開発
ECサイトの設計までできたら、開発の工程になります。有料ASPであればデザイン制作が主な作業内容となりますが、パッケージやクラウドECであれば、様々な要素が開発範囲となるので、開発規模も相当程度になります。Webデザイナー、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、インフラエンジニアといった専門家がチームとなって開発作業に入るので、プロジェクトマネジメントも複雑で膨大になります。
また、Webマーケティングの要素も重要になるので、SEO対策を始めとする様々な施策を考慮した開発が必要となります。集客方法をどうするのか、お試し商品から本購入へどう繋げるのか、定期購入への引き上げをどうするのか、継続率やリピーターを増やすためのCRMをどうするのか、といったWebマーケティングの施策を考慮しながら開発していく必要がありますので、関係者との調整範囲も広くなります。
3.4.システムテスト
ECサイトの開発が完了したら、直ぐにリリースするのではなく、システムテストは十分にしておきましょう。設計段階でテスト設計をしておくのがベストではありますが、システムテストの段階でテスト項目やテスト方法についても網羅的に色んなケースを想定してテスト設計をした上でシステムテストをすることをお勧めします。
モンキーテストと呼ばれるような、ユーザー視点で色々と操作してテストする方法もありますが、それだけだとテスト不足になる可能性もありますので、まずは網羅的にテスト内容を決めたうえで、具体的なテスト項目とテスト方法に落とし込んでシステムテストをする必要があります。
特にパッケージやクラウドECであれば、ECサイトのシステム容量が想定しているビジネス規模に耐えうるのかも重要なテスト項目となります。ECサイトへのアクセス数や1日当たりの購入数といったトランザクション規模にも耐えうるシステムになっているのか、多角的に検証する必要があるでしょう。
3.5.外部連携テスト
エンタープライズビジネスであれば外部連携テストも重要なテスト項目となります。カード決済は勿論のこと、売上計上や売掛金の消込といった会計システムとの連携や在庫管理の最適化のために在庫管理システムとの連携なども外部連携テストの範囲となりますので、テスト範囲が大きく広がるでしょう。
ECサイト上で発生しているデータと外部連携システムで発生するデータとに食い違いがでてくるとビジネス管理そのものが破綻してしまいます。売上や在庫に計上間違いがないよう外部連携テストは様々なケースを想定してテストする必要があります。
4.おすすめの物流アウトソーシング、物流代行会社
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5.まとめ(ECサイトは制作完了がスタート)
これまでECサイトの制作に関する必要な事項を解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
しかし、ECサイトのビジネスは制作完了がビジネスのスタートです。ECサイトのメンテナンスをしながらWebマーケティングの施策に合わせてサイト改修をしたり、商品紹介文を修正したり、細かい作業が運用業務として発生します。
H&KではECサイト制作だけではなく、サイトリリース後の集約やCRMを意識したWebマーケティング戦略を考慮したECサイト制作を支援します。ぜひ、これを機にECサイトの制作をお考えの方は、お問い合わせいただければ幸いです。
デジタルマーケティングに関するご相談があればお気軽にお問い合わせください。