Update.2022.09.26

顧客を獲得し、維持させるまでの戦略とは?フックモデルでプロダクト利用を習慣化

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本稿では、顧客維持の初期・中期ステージに焦点を当てて解説していきます。これからユーザーを獲得目指す人や獲得し始めた方にとってはうってつけの内容です。本稿をもとにして、高いレベルでの顧客維持を実現していきましょう。

なお、顧客維持を高める3つのステージについて知らない方は、まずはこちらの記事をご覧ください。

Contents

     

    このブログのライティング者

    スライド1

    安藤 弘樹(Koki Ando)
    株式会社H&K 代表取締役
    株式会社H&K 代表取締役CEO
    20代前半から事業を展開し、バイアウト。その後、30年続くイベント会社で最年少でセールス・マーケの責任者。広告代理店で取締役CMOを経験。H&Kを創業。
    @KOK1ANDO Youtube

    【テンプレ】マーケ分析資料

    1.  顧客維持の初期ステージ

    顧客維持 初期ステージ イラスト

    まずは、初期ステージについてです。ここは活性化の延長なので、ここでの維持率改善は、活性化の改善策と本質的には同じです。具体的には、

    ●新規ユーザー体験を最適化すること
    ●プロダクトのコアバリューを早く体験させること

    この2点が最重要の戦略となります。

    新規ユーザー体験の最適化に向けては、新規ユーザー体験を「一度しかないプロダクトとの出会い」として扱うことが重要です。むしろそれが「ひとつのプロダクト」として考えた方が良いでしょう。この体験の提供によって、ユーザーにプロダクトの価値と魅力を伝えるのです。

    一方、プロダクトのコアバリューを早く体験させるには、シングルサインオンという機能の取り入れや、ファネルをひっくり返す方法があります。

    シングルサインオンとは、ユーザーがすでに持っているフェイスブックやGoogleなどのアカウントで登録できる機能です。登録プロセスのフリクション(障害)を減らす画期的な方法です。

    ファネルをひっくり返すとは、登録する前にプロダクトの利点を体験してもらうことです。ファネルの重要部分を逆の順番にすることで、シングルサインオンと同様にフリクションを抑えているのです。

     

    2. 顧客維持の中期ステージ 

    次に、中期ステージについてです。このステージではプロダクトの利用を習慣化させて、ユーザーのコミットメントを確立することが主な目的になります。

    利用の頻度はプロダクトによって毎日、毎週、あるいは一般的には習慣と呼べないほど間が空くなど、様々であることは分かるでしょう。ただ、同じカテゴリーの中で競合ではなくて自社のプロダクトが選ばれれば、それは習慣化と言ってよいと考えられます。

     2.1 習慣化のプロセス “フックモデル”

    習慣化のカギは、プロダクトやサービスを使うと「継続的な報酬」が得られるという刷り込みを与えることです。顧客行動研究者のニール・イヤールは著書「ハマるしかけ」で人気プロダクトによる具体例を解説し、そのプロセスを「フックモデル」と名付けました。

    フックモデル 図解(出典:Hacking Growth グロースハック完全読本 / 日経BP)

    フックモデルは、グロースハックの世界ではエンゲージメントループとよばれます。

    これは、①トリガー、②アクション、③リワード、④インベストメントの4つのステップから成ります。

    ステップ 内容
    ①トリガー プロダクトを使うきっかけです。
    メール通知やポップアップといった外からのきっかけである外的トリガーと、ユーザー自身の思考がきっかけとなる内的トリガーがありますが、まずは外的トリガーで行動を促します。
    ②アクション リワードを期待してユーザーがとる行動です。
    コンテンツの閲覧、投稿、購入が該当します。
    ③リワード ユーザがとった行動の結果得られるものです。予測不能なものほど良いと言われています。
    ④インベストメント リワードに満足したユーザーが、プロダクトに対して行う投資のことです。
    金銭的なものに限定されません。トリガーに繋がる行動全般と考えると良いでしょう。
    DXチームはこのループを回すための適切な回数、手段、タイミングを特定して習慣のさらなる強化を目指していきます。

     2.2 フックモデルを具体例をもとに考える

    2.2.1 ジム

    この習慣形成の仕組みには、ジムに入会するときの心理を考えてみるとイメージしやすいと思います。

    ステップ 内容
    ①トリガー 身体を鍛えようと決めた後しばらくは、ジムに行く気持ちを起こすために外的トリガーが必要なことが多いです。
    友達と行くことを決めたり、入会金半額などのキャンペーン開催をを知ったりすることで、第一歩のアクションが促されます。
    ②アクション 安価な料金でジムに行き、身体を鍛えます。
    ③リワード ジムに行って何らかのリワード、例えば体調がよくなったり筋肉がついたりします。
    ④インベストメント 通常料金を払ってジムへ通います。
    ➡リワードが得られるという内的トリガーによってジムに通うようになります

    朝食を食べながらフェイスブックをチェックする、レシピをクックパッドで調べる、といった行動も基本的にはプロセスは同じです。

    行動そのものが内的トリガーになり、それ以上の働きかけが必要なくなるのです。

    2.2.2 アマゾンプライム

    顧客維持率のお手本とも言えるアマゾンプライムでは、習慣形成の仕組みが上手く使われています。多くのアナリストは送料無料の負担が重すぎて長くはもたないと考えていましたが、その予想が外れることはこのフックモデルに当てはめて考えると簡単にわかるのです。

     リワードに関して言えば、以下の例が挙げられます。

    〇直接的な報酬

     ・対象商品を買うたびに無料配送によるお得感
     ・お急ぎ便による瞬間的満足 

    〇間接的な報酬

     ・プライム会員を投資した正しさの確認

    実際にこの注文システムの責任者であるビジャイ・ラビンドランによると「会費はその金銭を得るためではなく、他で買わないように顧客の意識を変えることが狙いだった」と述べています。アマゾンプライムの習慣系勢力は予想以上のものでした。

     2.3 DXチームの活用法

    フックモデルは、どんなプロダクトでもマネできるものではありません。DXチームは自社のコアバリューに基づいてエンゲージメントループを設計し、測定・観察・最適化していく必要があります。

    プロダクトの利用を習慣化する方法を見つけるにはデータと実験により、顧客に最も価値のある報酬をもたらすトリガーを明らかにするのが良いでしょう。

    ほとんどのプロダクトの当てはまる法則があるとすれば、報酬と感じる価値を高めることが中期ステージにおける顧客維持率を高めることに繋がるということです。

    この際、コホート分析によって

    1.  1.熱心なユーザー層を特定して
       2.どの機能が良く使われているのか
       3.報酬が高く維持率の押し上げに繋がる機能はどれか

    を調べるのが良いでしょう。

    例:動画配信サービス

    1. 1. 視聴時間によってユーザーを分けることが考えられます。コホート分析によってシリーズを一気に何話も見ているユーザー層が見つかったとします。
      2. これは「ビンジウォッチング(一気見)」とよばれる視聴習慣で、
      3. これを促して新たな報酬を生み出すことを検討できると考えられます。
      ちなみに、ネットフリックスではオリジナル作品を1話ずつではなく全話一挙配信しています。

    今は休眠ユーザーでも、より魅力的な報酬を受け取れば利用率が高まりそうなユーザーも見つけておくことも重要です。

     

    3. 最後に

    習慣化は報酬(リワード)の提供のみで成り立つのではなく、プロセス(エンゲージメントループ)によって実現可能であることが理解できたと思います。

    報酬と言うと、給料や賞与といった金銭を思い浮かべると思いますが、ジムの例では報酬が金銭ではないことに気がついたでしょうか。

    何が言いたいかというと、習慣形成における顧客の報酬は金銭やお得感だけではなく、「体験」も報酬になりえるということです。「体験」による報酬についてはこちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

     

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    安藤 弘樹(Koki Ando)
    株式会社H&K 代表取締役 CEO
    20代前半から事業を展開し、バイアウト。
    その後、30年続くイベント会社で最年少でセールス・マーケの責任者。
    広告代理店で取締役CMOを経験。H&Kを創業。