今回は「経営に必要な人員計画とキャパシティを用いた具体的な計画方法」について説明していきます。
皆さんは「人員計画」という言葉を聞いて具体的に何をするか明確に答えられるでしょうか?。この「人員計画」を明確に決定しない場合、今後の事業展開に大きな支障をきたす恐れもあります。
この記事では、人員計画を行うメリットと具体的な人員計画方法について説明していきます。またその中で必要な「キャパシティ」の考え方にも触れていきます。
この記事を最後まで読んで是非参考にしてみてください。
このブログのライティング者

安藤 弘樹(Koki Ando)
株式会社H&K 代表取締役
株式会社H&K 代表取締役CEO
20代前半から事業を展開し、バイアウト。その後、30年続くイベント会社で最年少でセールス・マーケの責任者。広告代理店で取締役CMOを経験。H&Kを創業。
@KOK1ANDO Youtube
1.人員計画とは
冒頭では人員計画を明確に設定しないと事業展開に大きな支障をきたすと書きました。とは言っても人員計画がどういうものであるかを具体的に知っていないと何故事業展開に悪影響なのかも理解することはできません。
この章では、そもそも人員計画とはなにか、その定義や目的、人員計画を行うメリットについて説明していきます。
1-1.人員計画の定義
人員計画とは、会社に必要な人材を確定させるための大きな計画のことを指します。
人員計画を作成しないと会社の経営計画を遂行するときに必ず必要な計画になります。事業計画はもちろん、何十年後といった将来の会社設計をするにも必要になります。
1-2.人員計画の目的
人員計画の1番の目的は、人にかかるコストを詳細に検討・見直すことです。
そこで人員配置を予め行うことで、配置する人に合わせたプロジェクトに配置したり、そのプロジェクトに人員予算がいくらかかるのかを見積もることが可能になります。
つまり、これらを実行することが会社経営や人事に必要不可欠な要素となるのです。
1-3.人員計画のメリット
人員計画の1番のメリットは、経営計画を円滑に行うことができるようになる点です。
長期的な経営計画には、それに必要な人員を確保することがとても重要になります。予め人員計画をしておけば、人手が足りずに経営計画が滞ることが少なくなります。
2.人員計画に必要な「キャパシティ」とは?
前章では、人員計画に関する具体的な情報を書きました。しかし、これだけでは正確な人員計画を設定することはできません。最適な人員計画を設定するには、「キャパシティ」について理解する必要があります。この章では、その「キャパシティ」の定義と、人員計画とどう関係するのかについて説明していきます。
2-1. 質か量
キャパシティ(capacity)とは容量、収容能力、物事を受け入れる能力のことを指します。
また、ビジネスにおいては、個人の仕事量やスキルの指標で使われることが多いです。
以下の使用例があります。
・会場の定員数
・医師が一日に診ることができる患者の数
・工場が一日に製造することができる生産量
・個人がある時間内でできる仕事量等...
2-2.キャパシティと売上の関係性
売上目標の未達成の大きな原因の一つに、キャパシティ不足が挙げられます。
営業一人当たり年間1億円の販売が見込める商材であったとしても、営業が10人しかいないのに20億円の売上目標を立てるのは無謀で非現実的です。だからと言って、単価アップなどの生産性の向上ばかり考えても成長できません。競合他社が物量作戦をしたら太刀打ちできないからです。
製品やサービスがECサイト経由で売られていくのではない限り、販売量はセールスキャパシティと連動します。BtoBの直販であれば営業の数、代理店経由であれば代理店の営業人数、消費財なら店舗数というようなものが、セールスキャパシティに該当します。
増やせば比例して売上が上がるわけではありませんが、目標売上に対してそもそも現実的なセールスキャパシティを持っているかを考慮しなくてはなりません。
3.人員のキャパシティを考慮した具体的な人員計画の設定
これまで、「人員計画」と「キャパシティ」について解説しました。この章ではいよいよ具体的な人員計画の設定について説明します。その中で重要な要素として「目標達成率」と「ランプタイム」の設定があります。この2つの要素について、詳しく解説するとともに具体例を紹介します。
3-1.キャパシティを考慮した「目標達成率」の設定
例えば、営業1人あたりの売上目標を月額1000万円(年間1億2000万円)とします。営業が5人いる場合、全体で年間6億円の売上に相当するキャパシティを持っていることになります。しかし、実際に全員が売上目標を達成することは稀です。
だからといって全員が売り上げを楽に達成できる目標を設定するということは、組織全体で見るとパフォーマンスを最大化するストレッチの目標になっていないとも言えます。
最適な目標設定としては、組織全体の達成率が80%くらいの水準が良いです。こうすることで、営業が無謀な目標と思わず、達成させようという意欲を持てる範囲ではないかと考えられます。
6億円のキャパシティを持っているとしたら、売上目標は5億円くらいにすれば良いと結論付けられるわけです。
3-2.「ランプタイム」の設定
ランプタイムの「Ramp」は「傾斜」という意味で、新しく入った営業が最終的に100%のパフォーマンスを発揮できるようになるまでの期間を指します。
先ほどの例に続いて、翌年に倍増の10億円が年間売上目標として与えられたとします。しかし、営業人員も倍増でいいと考えるのは安易で危険です。なぜなら、採用した人員が期待しているパフォーマンスをあげるには時間がかかるという点を全く考慮していないためです。
ここで、ランプタイムを用いて設定します。この会社に営業として入社した後の教育期間などを加味して、新人社員が一人前のパフォーマンスを出すのに半年かかるとします。最初の2ヶ月はゼロ、3ヶ月で25%、4ヶ月目50%、5ヶ月目75%、6ヶ月目100%...と計算することができます。
3-3.「キャパシティ」と「ランプタイム」を用いて売上目標を計算
上記の要素を理解したうえで、以下の人員計画における売上目標を計算してみましょう。。
前年度の営業は5人。個人目標は年間1億2000万円で合計6億円。部門平均達成率が80%で5億円の売上だとする。今年度は追加で7人新規採用と大幅増を予定しており、採用予定月は年間を通して隔月のペースで予算に組み込んでる状況。これまでの傾向から最低1人は退職リスクも見ておく必要があり、仮に6月で試算したとする。 また、1名、4月の新年度からマネージャーへの昇進を予定しており、最終的な営業の人数は年末には倍増の10名となる。 |
この状況で、ランプタイム、退職、昇進を考慮してキャパシティを計算してみます。すると、合計のキャパシティ(個人目標を計算したもの)は7億3250万円。これに組織全体の平均達成率の80%をかけると、期待できる売上は5億8600万円となり、前年度から人員は倍増しているのに、売上はわずか20%程度の伸びにとどまってしまうことになります。
このギャップを解消するためには、人材に関して様々な改善案を用意する必要があります。その具体案を以下に挙げました。
・営業人員
・採用時期の前倒し
・ランプタイムの短縮
・部門平均達成率
・社員のリテンション
など、様々なレバーを動かすことを検討する必要があります。
4.総合的な人員計画を用いた人材採用とは
前章では人員計画を設定するうえで重要な要素の「目標達成率」と「キャパシティ」の設定について説明しました。そしてその解決策として、人材に関する設計を見直す必要があると書きました。この章では、その人材問題に関して解決する最適な手法について紹介します。
4-1.キャパシティを考慮した人材採用について
営業のパフォーマンスもコモディティ型の商材であれば、トップパフォーマーとローパフォーマーの差は大きく開かないが、ソリューション型の商材の場合は平均3倍くらいの差が出ることが多いです。別の言い方をすれば、優秀な人を1人採用できれば、そこそこの人を3人採用するのと同じということです。
実際には、優秀な人材はいいパフォーマンスを残して長期間活躍する可能性が高いし、結果が出ない人は退職リスクも高くなります。
社員が退職して、またイチから採用となると、ランプタイムはゼロからカウントし直しです。そのように考えれば、採用が上手な会社とそうでない会社に圧倒的な差がつくことがよくわかると思います。
退職者が多い会社は、やめる人数を上回る採用をしていたとしても、組織としての実際のキャパシティは実質下がっていることもありえます。
4-2.人員計画の最前線「セールスイネーブルメント」とは
最近、注目を浴びている「セールスイネイブルメント(Sales Enablement)」では、ランプタイムが長い営業組織でニーズが高くなるという役割があります。
一般的には、1人当たりのランプタイムを短くできれば、劇的に組織全体のパフォーマンス向上が実現でき、営業のパフォーマンスの平均を上げるのではなく、中央値を上げることが重要と考えられてます。
この理解は間違ってはいませんが、100点の理解ではありません。
もし営業の人数と達成率が山形のグラフのような組織であれば、そもそも平均でも中央値でも大差はありません。セールスイネイブルメントが存在する目的とは、桶型のグラフのような分布になる営業部門を山形に変化させることです。そして後者のグラフの企業は次のような特徴を持っています。
・入社後の立ち上がりに時間がかかる
・商材はソリューション型でコモディティ商材ではない
・ゆえにトップパフォーマーとローパフォーマーの差が出やすい
・営業マネージャーが営業一人ひとりの教育に使える時間が十分ではない
・一部のトップパフォーマーがほとんどの業績を支えているので、継続的な成長にリスクがある
逆に、コモディティ型の商材を扱っている営業組織ではセールスイネイブルメントはそれほどニーズはないでしょう。そのような組織では、注文書の作成などの間接業務を補佐してくれる人を増やした方がはるかに効率が良いです。
5.最後に
カスタマーサクセスやインサイドセールスも同様ですが、世の中で流行っているからというだけで導入する企業もあります。その前に、本当にその役割が必要なのかを考える必要があります。ベストプラクティスが共有されやすくなってきたからこそ、形から入るのではなくて、なぜ必要なのかをしっかりと考えることが求められる時代になっています。
今回書いたことを含め、H&Kでは採用コンサルティングで人事や採用に関するご相談を承っています。是非お気軽にお問い合わせください!