今回は「新規ユーザーの体験を増幅させるラーンフロー」について解説していきます。
突然ですが、皆さんは「ラーンフロー」という言葉をご存知でしょうか?
NUX(新規ユーザー体験) にはフリクションも数多く潜んでいますが、チャンスも豊富に眠っています。はじめてプロダクトを利用する時、ユーザーは最も真剣にそれを理解しようとするからです。「ラーンフロー」を知ることで、その新規ユーザー体験の中のチャンスをものにすることができるようになります。
この記事では、ユーザーがプロダクトに向けている意識を十分に活用するために編み出された「ラーンフロー」について詳しく解説していきます。

1.ラーンフローとは

1-1.ラーンフローの定義
ラーンフローは、ツイッターのグロース担当責任者であるジョシュ・エルマンが編み出した造語で、ユーザー登録する間にプロダクトの価値と使い方まで伝わるNUX(新規ユーザー体験)を指します。
このNUXデザインは初回限定で高まっているユーザーの関心と辛抱強さを利用して、訪問が終わるまでに活性化する可能性を高めます。
1-2.ラーンフローのメリット
ツイッターがラーンフローで目指したのは、訪問者が新規アカウントを作成して、さらに最初からプロダクトの全体像を把握することです。以下にその手順を示しました。
1.タイムラインの仕組みを説明して興味に合うカテゴリーや有名人のアカウントをフォローするように勧め、プロフィールを完成させるように促す
2.ユーザーはこのラーンフローを終えるころには登録を済ませて自分のプロフィールを持ち、ニュースフィードを読むようになる
これらの手順を踏むことで、
・サービスの利用 ・アハモーメントの体験 ・ストアバリューの創出 |
までがたった一回の訪問で実現することができます。
ツイッターは人々の習慣にない全く新しいサービスを打ち出したために他人をフォローする価値とプロダクトの使い方を教える必要があったことは明らかです。
反対にあえて説明をしなくてもいいプロダクトもあります。インターネットの通販サイトは「早く買い物をしたい」というようなユーザーも多いので、手取り足取り教えるのは余計なお世話にもなりかねないでしょう。
2.ラーンフロー構築の課題
前章ではラーンフローの言葉の意味とそのメリットについて説明しました。しかし多くのメリットを得ることができるラーンフローはそう簡単には構築することができません。この章ではラーンフローの問題点nと実際にどのように構築するのかについて解説していきます。
2-1.ラーンフローの問題点
ラーンフローの問題点はラーンフローの構築が難しいことです。
説明なしでもおおよその使い方は伝わります。しかし問題なのは、ユーザー情報を少し集めればその人に合った特徴を前面に出してプロダクトの価値を伝えやすいというような場合です。このような時はどうすればよいのでしょうか。次の項目で具体例をだして説明していきます。
2-2.ラーンフロー構築の判断の具体例:pinterest(ピンタレスト)
先ほどのラーンフローを構築するかの問題点について、pinterest(ピンタレスト)の例をみてみます。ツイッターがツイートとは何かをユーザーに教えたように、ピンタレストでは「ピン」という概念を説明する必要がありました。そこでDXチームは新規ユーザーの教育に力を入れて、以下の3画面で構成しました。
・モバイルアプリのラーンフローはピンされたコンテンツの探し方 ・自分のピンの追加手順 ・ボードの作成方法 |
このラーンフローが完了したユーザーには人気コンテンツを配信してあとは自由に使わせるようにしました。これは堅実なNUXでありましたが、チームは改善のために実験を続けました。
すると、ピンタレスト全体で見れば人気のコンテンツもすべてのユーザーに関連性が高いわけではないということがわかりました。
最初に1画面だけ表示して興味のあるトピックを5つ選ばせてそのジャンルのコンテンツを配信してピンの保存のやり方を練習させるようにしたところ、活性化率は20%も上昇したといいます。
次の章では、ラーンフローを得るために必要なアクションを解説していきます。
3.ラーンフローを得るアクション①:アンケート
先ほどはラーンフローの問題点として構築が難しいと述べました。この章では、これから企業がラーンフローを実践するうえで必要なアクションを説明していきます。まずは「アンケート」について解説していきます。
3-1.アンケートを行うメリット
新規ユーザーを迎える際にちょっとしたアンケートを取ると効果的だと言われています。アンケートで得られるメリットは以下の点があります。
・興味関心や困りごとを尋ねられると、ユーザーは回答している間にコミットメントを高め、プロダクトに個人的つながりを感じるようになる ・企業が顧客に寄り添ってできるだけいいサービスを提供しようとしていることも伝わる ・新規ユーザーの興味に合うコンテンツをNUXの一部としてカスタマイズすることができる |
3-2.アンケートを行うための注意点
しかし、現在ではデータを収集されることに気味悪さを感じるような人々も増えているため、カスタマイズが常に歓迎されるとは限りません。この戦術がうまくいくのはニーズや要望に沿ってプロダクトをカスタマイズできる利点が明らかな場合のみです。
ポイントとして、ユーザーを質問攻めにしないことがあります。質問は5つまでにして4択以下の選択式にするように勧められています。このアンケートもまた、実験を繰り返すことで効果がより明確になっていきます。
4.ラーンフローを得るアクション②:ゲーミフィケーション
ラーンフローを得るアクションはアンケートの他にゲーミフィケーションがあります。この章ではそのゲーミフィケーションについて詳しく解説していきます。
4-1.ゲーミフィケーションとは
ゲーミフィケーションとは、サービスやアプリ等にゲーム要素を取り入れることで、ユーザーの活性化やロイヤリティーの強化を図ることを意味します。
ゲーミフィケーションの本質として、特定の行動をとる見返りとして一部の顧客しか得られない特典などを与えることにあります。
4-2.ゲーミフィケーションを取り入れた具体例:Adobe(アドビ)
アドビは画像加工ソフト「フォトショップ」の活性化を図るために、無料トライアルに「レベルアップ」というシステムを導入しました。
これは退屈なチュートリアルをやりがいのある「ミッション」に変えるもので、ユーザーは課題に取り組みながらフォトショップの利点と使い方を学べるのです。ミッションをクリアすると特典が与えられ、さまざまな条件を達成するとレベルアップするという仕掛けもありました。ゲーミフィケーションを利用したこの無料トライアルから購入に至るユーザー数は4倍にも増えました。
4-3.ゲーミフィケーションのメリット・デメリット
ゲーミフィケーションのメリットとして、ユーザーは楽しみながら課題を解いてさらに報酬まで得ることができるという点があります。このメリットをうまく使えば強力な活性化ツールになります。
逆にゲーミフィケーションのデメリットとして、報酬に価値がない、あるいはコアバリューの関連性が薄ければ、ただ変に思われるかユーザーを露骨に操ろうとしている印象を持たれてしまうという点があります。
4-4.ゲーミフィケーションで意識すべきポイント
ゲーミフィケーションとはあらゆる企業につかえる戦術をパッケージ化したものではなく、企業ごとに選択が必要なツールのまとまりです。
ゲーミフィケーションを取り入れる際に意識すべきポイントとして、以下の要素があります。
・有意義な報酬をあたえること ・酬の獲得、贈呈方式に変化をつけて驚きと喜びを生み出すこと ・インスタント・グラティフィケーション(瞬間的満足感)を加えること |
この報酬については前面に押し出しすぎると学習本来の報酬であるスキル獲得がかすんでしまう恐れがあるので、ゲーム性がユーザー体験の中心にならないように配慮する必要があります。リンクトインはそのため、ゲーム性を隠し味として使っています。
4-5.ゲーミフィケーションで設定するべき「報酬」
ゲーム性を明示しているのはクレジットカード会社や飲食店で採用されているロイヤリティプログラムです。
ゲーミフィケーションの第一人者であるゲイブ・ジカーマンはゲーム化された状況では、以下の報酬が効果的だと説いています。
・地位 ・機会 ・権力 ・品物 |
アメリカン・エキスプレスのメンバーシップ・リワードなど、クレジットカード会社のプロクラムは以下のアクションのように4種類の要素すべてを活用しています。
1.利用金額を増えればランクが上がる(地位) 2.特別イベントや旅行に参加する機会) 3.財力を示す(権力) 4.ポイント交換を商品に交換できる(品物) |
このようなゲーミフィケーションの報酬設定は「スターバックス・リワード・プログラム」でも同様の仕組みが作られており、ゲーミフィケーションを実現させる一つとして利用されています。
5.最後に
今回は「新規ユーザの活性化させる最先端の考え、ラーンフロー」について解説していきました。
これらの知見を活かすことで新規ユーザー体験のチャンスを手にすることができ、マーケティング戦略の成功に大きく近づけることができます。この記事で書かれたことを一つでも参考にしてみて、新規ユーザー体験の中のチャンスをものしてみてください。