今回は「ファネルレポートを用いたユーザー活性化の三つのステップ」について解説していきます。
ユーザー活性化はデジタルコンテンツを扱ううえで重要な要素の一つになっています。そのユーザー活性化を成功させる手法として「ファネルレポート」の作成があります。
今回の記事では「ファネルレポート」の作成を行う3つのステップについて、具体的なアプリ開発の事例に触れながら詳しく解説していきます。
1.ユーザーの活性化とは

1-1.ユーザー活性化の現状
ユーザーのうち潜在顧客を惹きつけることができたとします。次のステップとしては実際にプロダクトを使ってもらうことになります。このステップを「活性化」といいます。
実際にはこの活性化がうまくいっている企業は少なく、Webサイトへのトラフィックは98%が活性化につながっておらず、ほとんどのモバイルアプリは3日以内に最大80%のユーザーを失っています。
1-2.ユーザー活性化の解決策
上記のような状況を改善するには、新規ユーザーが感動体験という名のアハモーメントにたどり着く確率を高めることが重要です。この活性化にも完璧な正解はありません。プロダクトに合わせた取り組みとデータ分析に基づいたアイディア生成が求められます。
次の章からは、効果の大きい活性化の実験を見極めるために必要な3つのステップを詳しく説明していきます。
2.ユーザ―活性化のステップ①:ユーザーの行動段階の把握
2-1.アハモーメントを実感するためには必要なこと
まずはユーザーの行動を把握することから始まります。
アハモーメントそのものはプロダクトのマストハブ化の際に特定してあるという前提で、中間地点をマッピングしていきます。アハモーメントはちょっとした空き時間にずばやく買い物が出来ることを実感したときに訪れます。
-
-
2-2.考えられるユーザーの行動を書き出す
-
新規ユーザーがアハ体験をするのに必要な行動を書き出します。ここではユーザーがアプリから開始した行動を書き出してみました。
1.アプリをダウンロードする 2.欲しい商品を見つける 3.カートに追加する 4.氏名や住所、支払い情報を記入してアカウント作成をする 5.購入手続きをとる、 6.注文通りに宅配が完了される |
この一連の行動の中にユーザーが興味をなくしたり不満を持ったりして、購入せずにアプリを閉じてしまう要因がいくつもあると考えられます。この阻害要因に対しては先入観を持たず、確実なデータ分析とそれに基づく聞き取り調査が必要になります。そのデータ分析に必要なのが「ファネルレポート」の作成です。
3.ユーザー活性化のステップ②:ファネルレポートの作成
-
3-1.ファネルレポートとは
-
ファネルレポートとは、訪問者がカスタマージャーニーの各段階に進んだ割合を示すツールです。
アハモーメントへの道のりが見えたら次のステップは各段階のコンバージョン率を計算していきます。全訪問者の何%が一連のそれぞれの行動をとっているのか調べます。コンバージョン率を測定するにはファネルレポートが役に立ちます。
3-2.ファネルレポートを用いたコンバージョン率の計算
ファネルレポートを用いることでコンバージョン率を計算することができます。
コンバージョン率を算出すべき行動段階はプロダクトによって異なります。行動段階のコンバージョン率の計算に加えて、プロダクトに流入したルートやチャネルごとに訪問者を追跡するのも重要です。チャネルによる活性化率の差から大きな発見につながり、優先順位の低かった獲得チャネルを実験しなおすことになるかもしれません。
これらのデータがそろったら、以下のユーザーごとに比較します。
・アクティブユーザー ・活性化後に利用しなくなったユーザー ・一度も活性化せずに直帰したユーザー |
各チャネルの問題点を全体的に把握して、新規ユーザーの活性化率向上に活かすことができます。
4.ユーザー活性化のステップ③:ファネルレポートによる分析
4-1.ファネルレポートによるユーザー行動項目の特定
作成されたファネルレポートからユーザーの行動を詳しく分析していきます。
具体例としてユーザーがアプリを通して商品を買う行動について見ていきます。ファネルレポートの作成によって以下の項目が導き出されました。
・アプリのダウンロード ・アプリの起動 ・商品の検索 ・ショッピングカートの追加 ・アカウント作成 ・購入のコンバージョン率を算出 |
特別な行動段階として初回購入時の値引きをはじめとした販売促進を実施したときの活性化率も追跡しました。開発と実験が予定されていたショッピングリスト機能はすでに完成し、実装されていたとします。ショッピングリストに商品が追加される割合とリスト上の商品が購入される割合も算出しておきましょう。このファネルレポートは「測定指標」と「追跡方法」がきちんと決まっているとやりやすくなります。
4-2.ファネルレポートを分析して得たもの
ファネルレポートが完成するとこのチームは興味深いことに気が付きました。
・商品をカートに入れたままクレジットカード情報を入力せずに離脱するユーザーが多いこと
・多くの商品を検索するユーザーは多くないが、ダウンロード後の1週間にアプリをよく使うユーザーは初回訪問の時に多数の商品を閲覧していること
・ショッピングリストに商品をいれるユーザーの大半は購入に至ることが多く、リピート顧客になる割合が高まること
という3点です。
これらの分析結果から、チェックアウト体験が障壁となっていることがわかります。そこで決済フォームを変更して入力を簡略化・迅速化するといった方法が考えられます。新規ユーザーの商品検索が少ないことに対しては、より多くの商品を探すよう促す実験が検討されました。
5.ファネルレポート分析後のアンケート方法と注意点
5-1.ユーザーの不満を避けながら聞き取り調査を行う
はじめる前にデータ収集のステップがもうひとつあります。それが聞き取り調査です。オフィスを出て、ユーザー行動の理由を探っていきます。
ここでユーザー調査の注意点としてユーザーの不満を避ける必要があるという点が挙げられます。Webサイトの閲覧中やアプリで買い物をしているときに不意にアンケートが表示され、作業が中断された経験はないでしょうか?
ユーザーの不満を回避しつつ有用な回答を得るには内容の簡潔さに加えてタイミングも重要です。
アンケート依頼に適したタイミングは二つあります。
・ユーザーが迷っていると思われるとき ・アカウント作成や商品購入といった離脱者の多い行動段階をユーザーがクリアしたとき |
上記のような場面になる例として二つの状況が考えられます。
・アカウントの滞在時間が長い ・特定の画面で離脱が多い |
この二つのタイミングはユーザーが次の行動段階に進んだあるいは進まなかった理由を知る重要な機会になります。質問数はできれば1問、多くても2問にするとよいでしょう。
回答形式は選択式と自由記述のどちらでも構いませんが、自由回答の方がありのままの悩みを聞き出しやすいという利点があります。
5-2.ユーザーに対するアンケートの質問内容を変える
ユーザーが購入を完了しないのは決済フォームが複雑だからと仮説を立てたとします。しかしアンケートを取ってみたところ、以下のことが問題だとわかりました。
・送料がかかるかどうかわからないこと ・値引き用コードを忘れてしまうこと |
このような具体的な情報は定量データからはなかなか知ることができません。ユーザーの連絡先が分かっている場合はメールなどで直接訪ねることを試みます。
訪問しただけで連絡先の残らないユーザーに関しては、離脱者に多い行動パターンを示したときにアンケートを表示させます。離脱直前には意外と多くの回答が集めることができます。アンケートは短いほうが回答率が上がるので次のような設問を設けてみましょう。
・注文を確定する前に確認したいことがありますか? ・今は買わない理由をおしえていただけますか? ・登録しようか迷っていますか?その理由は? ・どんな情報があれば今すぐ登録しようと思いますか? |
5-3.離脱しないユーザーに焦点をあててアンケートを行う
離脱する理由について役立つ情報を持っているのは「離脱しなかった」ユーザーであることが多くあります。
アプリを開いたのに購入しない理由を探るには、注文を確定した直後のユーザーにアンケートすると良いでしょう。同じ障壁につきあたった可能性があり、またそれを乗り越えた理由についても洞察を与えてくれるからです。
離脱ポイントによって質問文はかわるので、次のような例を参考にすると良いでしょう。
・このページで知りたかったことは? ・探している情報はどのページに合ったか ・今回このサイト/アプリでしたかったことは? ・今日購入に踏み切った理由は? ・現在の画面からできたらいいと思うことは? ・注文手続きで直すべきと感じるところは? |
こうしてユーザーからの意見が集まってようやく実験のアイディアを評価する材料が揃います。
6.最後に
今回は「ファネルレポートを用いたユーザー活性化の三つのステップ」について説明しました。
ここまで読んでいるとファネルレポートを作成すれば顧客やユーザーが勝手に活性化してくれて商品も購入してくれるようになると思われそうですが、ユーザーはすぐには活性化しません。
まず活性化してくれそうなユーザーに認知を広げ、次のステップでまた継続してもらえるようなマーケティングを行い...と地道な作業が必要になります。
だからこそ、ファネルレポートの作成を行ってユーザー活性化させることはより重要になってくるのです。