価格の設定のためには、まず価格の上限と下限を決めることが重要です。しかし、実際に価格を設定するには、多くの要素に注意をしながら最適な価格設定をしなくてはいけません。
そこで今回は、価格の設定に影響を与える3つの要素である「競争環境」、「需給関係」、「売り手と買い手の交渉力」について解説します。これらの要因をきちんと理解することで、より適切で顧客に対して説得力のある価格設定をすることができます。
このブログのライティング者

安藤 弘樹(Koki Ando)
株式会社H&K 代表取締役
株式会社H&K 代表取締役CEO
20代前半から事業を展開し、バイアウト。その後、30年続くイベント会社で最年少でセールス・マーケの責任者。広告代理店で取締役CMOを経験。H&Kを創業。
@KOK1ANDO Youtube
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1. 価格設定の競争環境
1-1. 競争環境に左右されない価格設定
価格の決定に影響を与える1つ目の要素は「競争環境」です。例えば、塩や電気などのように差別化しにくい製品は「競争環境」に大きく影響を受けません。そのため、差別化しにくい製品の場合は、「市場価格」が基準となります。市場価格を上回る価格だと売り上げが落ち、市場価格を下回る価格だと売り上げが上がるという仕組みになっています。
競争環境に左右されない価格設定をするには、以下の4つを考えて製品を差別化することが大切です。
- ・機能
- ・デザイン
- ・ブランドイメージ
- ・サービス
その結果、ターゲットにしている顧客が自社ブランドを他のブランドより確実に好むようになると、その程度に応じて競合より高い価格を設定することができます。
1-2. 価格設定のプライスリーダーとは?
また業界が少数の売り手で支配する、いわば寡占化の状態になると、プライスリーダーが存在しやすくなります。プライスリーダーとは「業界全体の価格構造に大きく影響を与える業界リーダー」のことで、最も大きなキャリアを持ち、強力な流通チャネルを持っているという特徴があります。
そんなプライスリーダーの価格戦略は、価格で対抗しないことです。シェアを維持するために価格を下げて利益を維持するよりも、多少のシェアは譲っても価格を維持したほうが得策だと考えます。
ここまでをまとめると、業界内の各企業の価格は、他社の価格戦略の影響を大きく受けます。そのため、現在と将来の両方の競争環境を踏まえて考える必要があります。
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2. 価格設定を決める要因の需給関係
価格の決定に影響を与える2つ目の要素は「需給関係」です。しかし多くの場合、需給関係は「需要供給曲線」で決まります。以下のグラフをご覧ください。
図1 需要供給曲線
そんな中、独占的な製品を持つ売り手は、供給量をコントロールして価格を維持することが可能ですが、この方法は消費者の反感を買いやすく、将来競合が出てきたときに自社の弱みになる可能性があります。そのため、マーケティング担当者は、以下のことを総合的に判断して価格設定をする能力が必要とされます。
- ・商品の取引の状態
- ・顧客との長期的関係
- ・自社のブランド力
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3. 売り手と買い手の交渉力
3-1. 売り手と買い手の相互依存度
価格の決定に影響を与える3つ目の要素は「売り手と買い手の交渉力」です。顧客との交渉力は、先程説明した「需給関係」や「製品の差別化」も大きく関わります。ここではそれら以外の顧客との交渉力に関係する、2つの要素について説明します。1つ目は「売り手と買い手の相互依存度」です。大きく2つの場合に分けることができます。
①売り手が買い手に依存している場合
例えば、「買い手の購入額や量が、売り手側の売上高と出荷量の大部分を占めていて、かつ、買い手は他の購入先も選べる場合」です。このような場合だと、買い手の方が強気の価格交渉ができます。
②買い手が売り手に依存している場合
例えば、「売り手が独占的な先端技術を持っていたり、特許により独占生産を行っている場合」です。このような場合だと、売り手の方が強気の価格交渉ができます。
買い手からすると、この売り手から購入するしか方法がないため、少し売り手に有利な価格でも、承諾するしかないですが、それに対して、売り手は無理でも他の買い手に売ろうという余裕があるため、強気の価格交渉ができます。
3-2. スイッチングコスト
2つ目は「スイッチングコスト」です。「スイッチングコスト」とは、「買い手あるいは売り手が取引相手を変更するときに発生するコスト」のことで、お互いの関係が、長期間かつ、業務上重要になるにつれて上昇します。
例えば、一度ある会社にマーケティングコンサルを依頼したとすると、今後企業の営業成績が落ちてきて、もう一度お願いしたいとなったときは、多少価格が高くてもこの会社にお願いする場合が多いです。なぜなら、一度お願いしているので、余計な説明も要りなくなりますし、成果が実際に出たという過去の実績もあるため、全体的なコストで考えることができるためです。
仮にいくら価格が安いマーケティングコンサル会社があったとしても、その場合は一から会社の説明が必要で、効果があるという保証もないため、お願いをしにくい傾向にあります。このような表面上の価格以外のところも踏まえて考えるのが「スイッチングコスト」です。
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4. まとめ
以上、価格の決定に影響を与える3つの要素である「競争環境」、「需給関係」、「売り手と買い手の交渉力」について解説しました。この記事が少しでも参考になっていただければ幸いです。
最後に覚えておきたい要点についてまとめます。
・価格設定は「現在と将来の両方の競争環境」を踏まえて考えなければいけません。
・マーケティング担当者が必要とされる能力は、「商品の取引の状態」と「顧客との長期的関係」と「自社のブランド力」を総合的に判断して価格設定をする能力です。
・「スイッチングコスト」を考えるときのポイントは、「表面上の価格以外のところも踏まえて考えること」です。
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