システム開発の流れと全工程を図解|手法ごとの違いや役割も解説
システム開発は、ビジネス課題を解決するための重要なIT投資ですが、その進め方や工程に関する知識がなければプロジェクトを成功に導くことは困難です。
本記事では、システム開発の企画から運用に至るまでの一連のフローを、各工程の役割と合わせて分かりやすく説明します。
開発手法ごとの違いや成功のポイントも解説するため、システム開発の全体像を網羅的に理解できます。
【図解】システム開発の全体像|企画から運用・保守までの10ステップ
システム開発の全体的なフローは、一般的に企画から始まり、要件定義、設計、開発、テストを経てリリース、運用・保守へと至る10のステップで構成されます。
この一連の流れは、家を建てるプロセスに例えられ、どのようなシステムを作るかを決め、設計図を作り、実際に組み立て、問題がないかを確認してから使い始めるというやり方です。
各工程を順に進めることで、品質の高いシステムを計画的に構築できます。
この記事では、この10ステップの具体的な内容を解説します。
システム開発の各工程(フェーズ)で実施する内容
システム開発における各工程(フェーズ)は、それぞれ明確な目的と役割を持っています。
企画から運用・保守までの各段階で具体的に何をするのかを理解することは、プロジェクトの円滑な進行に不可欠です。
これから、ソフトウェア開発の10のステップそれぞれで実施する具体的な作業内容と、そこで作成される成果物について詳しく見ていきます。
【工程1】企画:システムで解決したい課題と目標を設定する
企画は、システム開発の最初に行う最も上流の工程です。
この段階では、企業が抱える経営課題や業務上の問題点を洗い出し、「なぜシステムが必要なのか」「システムを導入して何を達成したいのか」といった目的と目標を明確に設定します。
市場調査や競合分析を行い、開発するシステムの方向性やコンセプトを決定。
システム化によって得られる効果や投資対効果(ROI)を算出し、予算や開発期間の大枠を固めて経営層の承認を得ることが主な目的です。
【工程2】要件定義:システムに必要な機能や性能を具体化する
要件定義は、企画で定めた目標を実現するために、システムに実装すべき機能や満たすべき性能を具体的に洗い出して定義する工程です。
発注者(ユーザー)の要求をヒアリングし、「どのような機能が必要か」をまとめる機能要件と、「処理速度やセキュリティはどのレベルか」といった非機能要件を明確にします。
ここで定義した内容は「要件定義書」というドキュメントにまとめられ、以降のすべての工程の基礎となるため、プロジェクトの成否を左右する非常に重要なフェーズです。
【工程3】基本設計(外部設計):ユーザーから見える画面や操作方法を決める
基本設計は、要件定義書をもとに、システムの基本的な仕様を決定する工程です。
主にユーザーの視点から見た設計を行い、画面のレイアウトやデザイン、操作方法、帳票の出力形式など、ユーザーが直接触れる部分を具体化します。
この工程は外部設計とも呼ばれ、ユーザーと開発者が完成後のシステムのイメージを共有するために重要です。
作成される基本設計書は、システムの全体像を把握するためのもので、発注者との合意形成の基盤となります。
【工程4】詳細設計(内部設計):開発者向けに内部の動作や構造を設計する
詳細設計は、基本設計で定めた機能をどのように実現するか、開発者向けにシステムの内部構造や動作を細かく設計する工程です。
内部設計とも呼ばれ、プログラムのモジュール構成やデータ構造、処理フロー、データベースの設計など、プログラミングに必要な技術的な仕様を具体的に決定します。
この工程で作成される「詳細設計書」は、開発者が迷いなくプログラミング作業を進めるための直接的な指示書(設計図)としての役割を果たします。
【工程5】開発(実装・コーディング):設計書をもとにプログラミングを行う
開発は、詳細設計書に基づいて、実際にプログラミング言語を用いてソースコードを作成していく工程で、実装やコーディングとも呼ばれます。
プログラマーやエンジニアが、必要な開発環境やツール、設備を用いて、システムの各機能を一つひとつ作り上げていきます。
大規模な開発では、複数の開発者が分担して作業を進めるのが一般的です。
設計書の内容を正確にコードに落とし込み、意図した通りに動作するプログラムを構築することがこのフェーズの目的です。
【工程6】単体テスト:機能単位でプログラムが正しく動くか検証する
単体テストは、開発工程で作成されたプログラムを、関数やメソッドといった機能の最小単位(モジュール)で検証する最初のテスト工程です。
個々のモジュールが設計書通りに正しく動作するか、意図しないエラーが発生しないかなどを確認します。
この段階で個々の部品の品質を担保することで、後の工程での手戻りを防ぎ、開発全体の効率を高めます。
バグや不具合は、できるだけ早い段階で発見し修正することが重要です。
【工程7】結合テスト:複数の機能を連携させて不具合がないか確認する
結合テストは、単体テストを完了した複数のモジュールを組み合わせて、それらが連携した際に正しく動作するかを検証する工程です。
モジュール間のデータの受け渡しやインターフェースに問題がないか、連携によって予期せぬ不具合が発生しないかなどを重点的に確認します。
例えば、入力画面で登録したデータが、正しくデータベースに保存され、一覧画面で表示されるかといった一連の流れをテストします。
これにより、システムとして機能が連携した際の品質を保証します。
【工程8】システムテスト(総合テスト):システム全体が要件通りに動作するかチェックする
システムテストは、開発したシステム全体を本番環境に近い状態で動かし、要件定義で定められた機能や性能をすべて満たしているか総合的に検証する工程です。
機能が仕様通りに動作することに加え、大量のデータやアクセス負荷に対する性能、セキュリティ、操作性などをユーザー視点でチェックします。
このテストに合格することで、システムがリリース可能な品質であることを証明します。
総合テストとも呼ばれます。
【工程9】リリース:完成したシステムを本番環境へ導入する
リリースは、すべてのテスト工程をクリアした完成済みのシステムを、ユーザーが実際に利用できる本番環境へ展開(デプロイ)する作業です。
具体的には、プログラムやデータを本番サーバーへ配置し、各種設定を行います。
旧システムからの移行の場合は、データ移行作業もこのタイミングで実施します。
リリース後は、システムが正常に稼働しているかを監視し、問題が発生した際にすぐ対応できる体制を整えておくことが求められます。
【工程10】運用・保守:システムの安定稼働を支え、改善を続ける
システムはリリースして終わりではなく、その後の運用・保守が不可欠です。
運用とは、システムが停止することなく安定して稼働するように、サーバーの監視やデータのバックアップなど日常的な管理を行う業務を指します。
一方、保守とはシステムに障害が発生した際の修正、OSのアップデート対応、法改正に伴う機能改修、ユーザーからの要望に基づく機能追加などを行う業務です。
ビジネス環境の変化に合わせてシステムを最適化し続けることで、その価値を維持・向上させます。
代表的なシステム開発手法ごとの特徴
システム開発の進め方には、いくつかの代表的な開発手法が存在します。
プロジェクトの規模や性質、仕様変更の頻度などに応じて最適な方法を選択することが成功の鍵です。
ここでは、古くから採用されている「ウォーターフォール開発」と、近年主流となっている「アジャイル開発」の2つの特徴と、それぞれがどのようなプロジェクトに向いているかを解説します。
ウォーターフォール開発:計画通りに工程を一つずつ進める手法
ウォーターフォール開発は、企画、要件定義、設計、開発、テストといった各工程を、上流から下流へ水が流れるように順番に進めていく古典的な開発手法です。
一つの工程を完全に完了させてから次の工程に進むため、後戻りは原則として想定していません。
最初にプロジェクト全体の計画を詳細に立てるため、進捗管理がしやすく、品質を確保しやすいのがメリットです。
大規模な基幹システム開発など、要件が明確で仕様変更の可能性が低いプロジェクトに適しています。
アジャイル開発:短いサイクルで開発とテストを繰り返す手法
アジャイル開発は、システム全体を機能単位の小さなまとまりに分割し、「計画→設計→開発→テスト」というサイクルを短期間で繰り返し行いながら、並行して開発を進める手法です。
仕様変更や追加要望に柔軟かつ迅速に対応できるのが最大の特徴で、顧客のフィードバックを受けながら優先度の高い機能からリリースしていきます。
市場の変化が速いWebサービスや新規事業のシステム開発など、ビジネス要求が変化しやすいプロジェクトに適しています。
システム開発プロジェクトを成功に導く3つのポイント
システム開発のプロセスや手法を理解していても、プロジェクトが必ず成功するとは限りません。
計画通りに高品質なシステムを完成させるためには、特に注意すべきいくつかの重要なポイントがあります。
ここでは、多くのプロジェクトで共通して成功要因となる3つのポイントを具体的に解説します。
要件定義で関係者との認識を徹底的にすり合わせる
プロジェクトの失敗原因として最も多いのが、要件定義の不備です。
この段階で発注者と開発者の間で「何を作るか」についての認識がずれていると、後の工程で仕様変更や手戻りが多発し、予算超過や納期遅延の直接的な原因となります。
これを防ぐためには、専門用語を避け、図やプロトタイプ(試作品)なども活用しながら、関係者全員がシステムの完成イメージを具体的に共有できるまで、徹底的にコミュニケーションを取ることが不可欠です。
進捗状況を可視化し、チーム全体で共有する
プロジェクトの進行中は、誰がどのタスクを担当し、計画に対してどの程度進んでいるのかを常に把握できる状態にしておくことが重要です。
WBS(作業分解構成図)やガントチャート、タスク管理ツールなどを用いて進捗状況を可視化し、定例会議などでチーム全体に共有する仕組みを構築します。
これにより、特定のタスクの遅延や課題を早期に発見し、迅速に対策を講じることが可能になります。
透明性の高いプロジェクト運営が、関係者の信頼関係を築き、円滑な進行を支えます。
各テスト工程の目的を理解し、品質を確保する
システムの品質は、リリース後のビジネスの成否に直結します。
高品質なシステムを担保するためには、単体テスト、結合テスト、システムテストといった各テスト工程を計画通りに実施することが不可欠です。
それぞれのテストには「個々の部品の動作確認」「部品間の連携確認」「システム全体の要件充足度確認」といった異なる目的があります。
これらの目的を正しく理解し、各段階で不具合を確実に検出・修正していくことで、リリース後の重大な障害発生リスクを大幅に低減できます。
システム開発の工程で使われる頻出略語一覧
システム開発の現場では、コミュニケーションの効率化のために、各工程やドキュメントを英語の頭文字をとった略語で呼ぶことが頻繁にあります。
これらの略語を知っておくと、打ち合わせや資料の読解がスムーズになります。
IPA(情報処理推進機構)の資料でも用いられるような、特によく使われる略語を以下にまとめました。
RD(RequirementDefinition):要件定義
BD(BasicDesign):基本設計
DD(DetailDesign):詳細設計
PG(Programming)/CD(Coding):開発・実装
UT(UnitTest):単体テスト
IT(IntegrationTest):結合テスト
ST(SystemTest):システムテスト
システム開発の流れに関するよくある質問
ここでは、システム開発のプロセスに関して、特にお客様から多く寄せられる質問とその回答を紹介します。
開発を検討する上で生じる疑問や不安の解消にお役立てください。
システム開発で最も重要視すべき工程はどれですか?
全ての工程が重要ですが、特にプロジェクトの成否を左右するのは要件定義です。
ここでシステムの目的や必要な機能に関する認識が発注者と開発者で異なると、後の工程で大規模な手戻りが発生し、予算や納期の超過に直結します。
最初のボタンを掛け違えないことが最も大切です。
開発の途中で仕様変更は可能ですか?
仕様変更は可能ですが、採用する開発手法により対応のしやすさが大きく異なります。
ウォーターフォール開発では手戻りの影響が大きいため原則として困難ですが、アジャイル開発は変更を前提とした柔軟な進め方が特徴です。
いずれの場合も、変更には追加の費用や納期調整が発生します。
開発会社へ依頼する際に気をつけるべきことは何ですか?
自社の課題やシステムで実現したい目的を明確に伝えることが重要です。
複数の会社から見積を取り、技術力や実績、コミュニケーションの取りやすさを比較検討しましょう。
発注や委託の決定後も丸投げにせず、開発会社と密に連携を取りながら進める体制を整えることが成功の鍵です。
まとめ
本記事では、システム開発の全体像を把握するために、企画から運用・保守までの一連の流れを10の工程に分けて解説しました。
各工程の役割を理解し、ウォーターフォールやアジャイルといった開発手法の特徴を知ることで、自社のプロジェクトに合った進め方を選択できます。
成功のためには、特に要件定義での認識合わせや進捗の可視化、徹底したテストが重要です。
これらの知識をもとに、計画的で円滑なシステム開発を実現してください。
