「HubSpotを導入したけれど、結局メルマガ送信と顧客情報の管理にしか使えていない」
「自社の特殊な業務フローに合わせてシステムを拡張したいが、スクラッチ開発はコストも時間もかかりすぎる」
そんな課題を持つ経営者やDX担当者に向けて、本日は一つの「到達点」とも言える事例をご紹介します。飲食店経営の知見を武器に、人材紹介や不動産仲介、学習支援と多角的なプラットフォームを展開する企業様をいかにHubSpotで支援したのか。その裏側を、プロジェクトに関わった対談形式でお届けします。
▼登場人物
田邊:取締役副社長
綱島:コンサルティング部 ゼネラルマネージャー
島村:マーケティング部長
この記事を必ず読むべき人
- アナログ管理の限界を感じている経営者: エクセルやkintone、メールなどに情報が散在し、顧客の動きが見えなくなっている 。
- 「自走」できる組織を作りたいDX責任者: 開発会社に運用を依存せず、社内のマーケターや営業が自分たちで施策を回せる体制(内製化)を構築したい 。
- 高度な会員サイト・マッチングサイトを検討中の事業部長: 決済やチャット、学習コンテンツ提供など、複雑な機能を備えたプラットフォームを、CRMと一体化した形で実現したい 。
- HubSpotが単なるツールではなく、ビジネスモデルそのものを支えるインフラになり得ることが理解できる 。
- 既存システム(kintone等)を全廃するのではなく、「いいとこ取り」をする現実的なDXの進め方がわかる 。
- 会員サイト構築における**「開発コストを抑えつつ拡張性を保つ」ための具体的な設計思考**が身につく 。
HubSpotを「ビジネスプラットフォーム」へ昇華させた11ヶ月の軌跡
――プロジェクトの始まり:アナログからの脱却と「内製化」への決意
島村: 今回の事例は、飲食店向けの多角的な支援を行っている企業様でしたね。まず、プロジェクト開始時の状況を教えてください。
田邊: はい。元々はアウトバウンド(電話営業等)が主体の組織でしたが、中長期的な成長を見据えて「インバウンドマーケティング」への転換を急がれていました 。顧客管理にはkintoneを一部活用されていましたが、その他の多くはアナログな運用で、情報の分断が課題でした 。
島村: そこでHubSpotの導入を決めたわけですが、単なるリプレイスではなかった。
田邊: そうです。最大の特徴は、お客様自身が「自分たちで運用できる(内製化)」という意志を強く持っていたことです 。そのため、私たちがシステムを作って終わりではなく、並行してマーケティングのレクチャーを行い、お客様が「自走」できる状態を目指す伴走型の支援を行いました 。
――高度なカスタマイズ:HubSpotで「チャット」と「決済」を実現する
島村: 今回、技術的に非常に珍しい「チャット機能」の実装がありました。綱島さん、これにはどのような意図があったのでしょうか。
綱島: 人材紹介やプラットフォームビジネスでは、ユーザー(求職者)と企業が直接やり取りできる場が必要です。競合他社のプラットフォームには標準搭載されていることが多いですが、HubSpotの標準機能だけではこれを実現できません 。
島村: そこで「外付け」の開発を行ったと。
綱島: はい。HubSpotの画面内に独自のアイフレームを埋め込み、HubSpotのCRMデータ(顧客情報)と連動した「専用チャット画面」を構築しました 。これにより、ユーザーは使い慣れたUIで連絡ができ、運営側はすべてのログをHubSpot上で一元管理できるようになりました 。
島村: さらに「ラーニングサイト(学習サイト)」も構築されましたよね。
綱島: 求職者向けの教育コンテンツを有料・無料で提供するサイトです。ここではStripeという決済サービスを連携させ、HubSpot上で「誰が、どのコンテンツを購入したか」が自動で紐づくようにしました 。運用の工夫として、1回ずつの課金ではなく「ポイント制」を導入したのも大きなポイントです。これにより、バックエンドの処理を簡略化し、将来的なコンテンツ追加にも柔軟に対応できる設計にしました 。
――DXを成功させる「現実的な設計」:kintoneとの共存

島村: すべてをHubSpotに移行するのではなく、kintoneも一部残したそうですね。
田邊: 飲食店向けビジネスという特性上、VISA情報などの非常にセンシティブな個人情報を扱う必要がありました。これらをすべてHubSpotに入れるのではなく、機密性の高い情報はkintoneで、営業活動やマーケティングに活用する情報はHubSpotで、という役割分担を明確にしました 。無理に一つのツールに絞るのではなく、ビジネスの安全性とスピードを両立させる「現実的な判断」でした 。
構築のロードマップとコスト感(モデルケース)
このような高度なプラットフォームを構築する場合、どのようなスケジュールと投資が必要になるのでしょうか。一般的なモデルケースをご紹介します。
プロジェクト全体の流れ(約11ヶ月)
- 要件定義・データ構造設計(1〜2ヶ月): 業務フローを整理し、HubSpotに持たせるデータの箱を設計します。
- 機能要件・ワイヤーフレーム作成(3〜4ヶ月): ユーザーが操作する画面遷移や、必要な機能を確定させます。
- 実装・API連携・デザイン(5〜9ヶ月): HubSpotの設定、外部システム(決済・チャット)とのAPI連携、サイトデザインの実装を並行して行います。
- テスト・修正(10〜11ヶ月): 実際の運用を想定したテストを繰り返し、ローンチへ。
体制と費用感
- 参画メンバー: PM、テックリード、シニアエンジニア、テスターなど、専門性の高いチームが担当します 。
- 参考予算: CRM搭載型の高度な会員サイト・プラットフォーム構築の場合、3,000万円程度〜が目安となります 。
結びに:HubSpotを「魔法の杖」にするために
田邊: 最後に伝えたいのは、HubSpotは導入しただけでは「魔法の杖」にはならないということです。大切なのは「誰に、何を届け、どうビジネスを回したいか」というビジョンです。
今回の企業様のように、「自社で運用するんだ」という強い意志と、それを支える適切なシステム設計が組み合わさったとき、HubSpotは競合他社には真似できない強力な武器になります。
もし、今の顧客管理や会員サイトに限界を感じているなら、一度「HubSpotでどこまでできるのか」を私たちと一緒に描いてみませんか?
